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3月31日 経理の日 【SS】欠かせない仕事

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 経理の日

経理・会計ソフトの「弥生会計」で知られ、業務ソフトウェアの開発・販売・サポートを手がける弥生株式会社と、クラウド請求管理サービスを行う株式会社Misocaが2016年(平成28年)に制定。

弥生とMisocaのそれぞれ社名は、事業者の経理業務を効率化し、お客さまの業務を楽にしたいという想いから命名されている。弥生は、旧暦の3月で、中小企業の決算月が3月に集中していることから、中小企業の経理を楽にしたいという想いから命名。Misoca(晦日)は、毎月の最終日で、毎月の請求業務を効率化したいという想いから命名。3月31日は両社の社名が重なる日でもある。


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【SS】欠かせない仕事

「おーい、岬くん。社員の残業時間と出張費のチェック終わったかな」

「あ、部長。お昼までには終わります。もう少し待ってください」

「そうか。月次の締めで経費合計の間違いが最近目立ってきてるので注意深くやってくれよ」

「わかってるんですけど。毎月エクセルベースだし、しかも担当は二人だけなので、正直きついんですけど。せめてシステム化の検討をしてもらえませんか」

「ああ、そうだな。ただ最近は利益率が悪くてシステム投資まで資金を回せないんだよ。かといって派遣を頼むは人事の許可が困難だなぁ」

 これは、ある中規模の独立系システム開発会社の経理部での会話である。この会社は社員数が二百名足らず、営業は十名ほどでほとんどがシステムズ・エンジニアで構成されている。営業が仕事を取ってきてシステムズ・エンジニアがシステム開発をする会社なのだ。利益率は最近八%程度で低迷している。なのでなかなかシステム化まで投資が回らない。経理部メンバーは月末は残業や休日出勤の対応を余儀なくさせられているようだった。

 システム開発会社ではあるものの、残念ながら自社のシステムを開発する余裕はない。賃上げも実現してやりたいという社長の思いは、経理部に皺寄せが来ているようだった。担当の岬社員は主任クラスですが部下は持っていない。同僚と二人で切り盛りさせられているのが日常だ。その同僚との会話が始まった。

「我々の部門は確かに間接部門だけど、なくていい部門じゃないんだよね。会社の資金や人員コストの把握、給与や賞与の計算、決算に至るまで年がら年中忙しすぎるよな。そう思わないか、山本さん」

「そうよね。それに私は時短勤務だから余計に岬さんに負担をかけているわね」

「それは仕方ないことなんだけど、会社としての対応がなさ過ぎなんだよね。エンジニアたちの部門では、人の追加は年中実施しているというのにさ。我々の部門は削られるばかりだよ。結局残ったのは我々だけ。これで僕が辞めちゃったらどうなるんだろ」

「えっ、岬さん、辞めちゃうんですか。それだったら、私一人じゃできないから私も辞めます」

「いやいや、辞めるというのは、冗談だけどさ。それでも何とか会社に動いてもらわないと厳しいよね。有給休暇も満足に取れないし」

「ですよね〜」

 よくありそうな話で盛り上がっていたところに、退職金制度が取締役会で企業型確定拠出年金への移行が決定されたという知らせが入ってきた。これまでの単なる退職金積立ではなく企業型確定拠出年金へ移行すれば、退職金を持ったまま他社からの中途採用も実施しやすくなるし、社員の将来の蓄えも退職金積立以上に期待できるようになるということで社長の一声で採用が決まったそうだ。ただ、移行には経理部門の協力がなければ不可能だった。全く余裕がない状況にもかかわらず、さらに仕事をのせられてしまったのだ。

 最終的には自分たちの退職金のことでもあるのだが、今以上の残業は労基法上困難である。そんなことを訴えたら「できない理由を言わないで、どうすればできるかを考えろ。ただし、増員はできないし、余計な投資に回す余裕もない」と言われた。資金に余裕がないことは経理部にいるのだから誰よりもわかっている。ならば、企業型確定拠出年金に移行する前に増員して、システム化を推進し業務効率を上げるべきではないのかと岬は思っていた。岬はもともとシステムズ・エンジニアだったが相次ぐ徹夜で体を壊してしまい、得意の経理知識を活かすために経理部門に異動していたのだった。しかし、またしても体力的に厳しい対応を迫られそうになってしまった。

 そんな時、開発を実施している部門を担当している役員から、思いがけない提案が出された。

「経理部門は重要な部門であり、蔑ろにしてはならない。我々はお客様の経理部門の効率化もよく提案しているが、足元の自分たちの会社の経理部門に対しては無理ばかり押し付けているのが現状だ。少なくとも今回の企業型確定拠出年金への移行に関しては、開発する社員にとっても知識を吸収するいい機会になるはずだ。各部門から数名支援要員を経理部に送り込んで会社としてスムーズに対応しようじゃないか」

 みんな驚いた。一番驚いたのは経理部長だった。いつも「お前の部門はコストだけ使って利益を産まないのだから多少のキツさは我慢してもらわないと困る」と言い続けられていたからだ。

 この後、社内でも間接業務研修が開催され、会社内の部門同士で張り合うことの無意味さが周知徹底され、協業する雰囲気が醸成されていった。すると不思議なことに、新しい案件も増加傾向となり、一年後には新しい社内システムが導入されることになった。経理部の岬と山本は胸を撫で下ろしながら喜んでいる。

「これでこの時期は決算に注力できるわね」

「ああ、そうだね。それも来年になればもっと効率よくできるようになるかもしれない」

 経理部にも少しだけ明るい兆しが現れてきたようだ。経理処理のように間違えてはならない業務は正確性と効率化は常に求められる。そのためには法律と連動したいいツールの選定も重要な要素として検討しなければならないだろう。社員の頑張りだけに頼る業務から脱却しなければ会社としての成長は期待できない。


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