見出し画像

8月10日 道の日 【SS】見知らぬ道

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 道の日

建設省(現:国土交通省)道路局が1986年(昭和61年)に制定。

1920年(大正9年)のこの日、日本で最初の近代的な道路整備計画(第一次道路改良計画)が決定した。

道路は国民生活に欠くことのできない基本的な社会資本だが、あまりに身近な存在のため、その重要性が見過ごされがちである。この記念日は、道路の意義や重要性について、国民に関心を持ってもらうことを目的とする。


🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次

【SS】見知らぬ道

 世界のどこかで今日も新しい道が作られている。山を突き抜けるトンネルを堀り、川を渡る橋を架け、車が通れるような道を作り、観光地で人が安全に歩けるような小さな道も作る。そうやって今日もどこかで工事が行われていることだろう。

 なぜ人々は新しい道を作るのだろうか。新しく開拓した土地と街をつなぐため、新しく切り開く土地に物資を運ぶため、昔の道が狭くなり拡幅するため、移動時間を短くするために高速道路を作るためなどなど理由は色々あるだろう。全ては人の暮らしを便利にするためにすぎない。

 人の希望を実現する未来のために作られたもの。それが道だ。しかし、そんな重要な道を意図的に破壊するのも人だ。国と国が戦争状態になると、物資輸送を遮断するために道を破壊する。そう、相手国にとって不便になるように破壊行為は繰り返される。結果、両国とも道は破壊され、人の生活は多大な犠牲を強いることになる。そして、修復のための膨大な時間も必要になってしまうのだ。

 人は、生きている限り、道を利用する。それはあたかも、自分自身を未来へと導いてくれる時間という道を歩いているのと同じなのかもしれない。振り返れば歩いて来た道も見えるだろう。そう思うと、行き先というゴールを意識して道を歩くように、人生も自らが描いた未来の自分という目標に向かって歩いているようなものだ。もちろん、具体的な将来の夢など描いていなくても進まざるを得ないのが人生という道だ。であるならば、目標を持って歩んだほうが、楽しくやりがいのある人生を進めるのかもしれない。たとえ失敗や挫折が待っていたとしても。

 高校二年生の親友同士がいた。博貴と広一という二人が学校で将来のことについて話をしている。三年になる前に進路を決めておきたいと思っているようだが、進みたい大学や学部が決まっているわけではないようだ。

「将来は、車のデザインを担当するような人になりたいなぁ」

「それじゃあ、デザインだけじゃなく、自動車工学も勉強したほうがいいんじゃないか、博貴」

「ああ、そうだよな。メカのことを解らずにデザインしても走るために効率いいとは限らないもんな。やっぱり、工学部に進んだほうがいいのかなぁ。でもそれだと、デザインの勉強はあんまりできないよな」

「そういえば、カーデザイナーの専門学校ってのもあるみたいだぞ。これだとデザイン専門に勉強できるみたいだな。博貴は車が好きなんだっけ、デザインが好きなんだっけ」

「えーと、そんなに真剣に考えたことはなかったな。でも、エンジンの音はすきだな。レシプロもディーゼルも。最も、今後のことを考えるとモーターかな。広一は何になりたいんだ」

「俺は、まだよくわかんないけど海外を飛び回る仕事がしたいなぁ。なんかさ、世界を見てみたいっていうかさ。行ったことないし」

「それじゃあ、パイロットとかかな」

「いや、それは無理。高いとこ嫌いだし。どっちかと言えば、商社とかディベロッパーとかエネルギー開発みたいな仕事なのかなぁ。まだ、迷ってんだけどね」

「広一、お前すごいな。僕は漠然と車関連なんだけど、広一は職種じゃなくて世界を回って見てみたいというのが動機なんだな〜。そんなこと考えたこともなかったよ。いずれにしても、僕たちにとっては見知らぬ道だなぁ」

「ああ、そうだな。でもそろそろ自分で調べて進路を決めないといけないよな。俺たちの人生、損しないように」

 なかなかしっかりした高校二年生の会話である。専門学校に進むのか大学に進むのか、大いに悩むことだろう。そうして、いくつかの道を候補に挙げて自分で選択し、見知らぬ道に踏み出していくのだろう。人生はやり直しができないわけではない。何度挑戦してもいいのではないだろうか。一つのことに固執して貫くのか、違う新しい見知らぬ道を見つけてまた初めから歩き出すのか、どちらでもいいのではないだろうか。

 博貴と広一は、時々博貴のおじいちゃんの家に遊びに行く。すでに八十歳になろうとしているが、まだまだ元気なおじいちゃんだ。この日は、おじいちゃんの若かりし頃の話を聞いてみようと博貴が言い出して、二人でおじいちゃんを訪ねて来た。

「おじいちゃん、遊びにきたよ」

「おお、博貴か。よく来たな。おや、友達も一緒か。ははぁ、さては何か悩んでいるな」

「あっ、読まれたか、流石おじいちゃんだ。実はね。将来どんな仕事をしようかなという話を広一としてたんだけど、分かんなくなってさ。おじいちゃんはどうだったのかなぁと思って話を聞きに来たんだ。おじいちゃんは若い頃、何になりたくてどんな進路を選んだのか教えてくれる」

「まぁ、それは構わないが、二人を取り巻いている環境とワシの若い頃の環境とは大きく違うから参考にならんかもしれんぞ」

「それは分かってるから、教えて」

「そうか。おじいちゃんは、若い頃自動車が好きでたまらなかったから、自動車メーカーに勤めたかったんだ。だから、大学にいかずに自動車の専門学校に行ってしまったんだ」

「えっ、大学でもよかったんじゃないの。工学部とか」

「そうなんだが、おじいちゃんの家はそんなに裕福ではなかったからな。専門学校を選択してしまった。しかしな、専門学校も結構金がかかってな。結局一年で辞めてしまったんだ。それで、どうしようもなくて、とりあえず生活しなくちゃならないからITの会社に就職したんだ。あんまり乗り気じゃなく仕方なくだったかな。でもな、それが大当たり。嫌いだと思っていた仕事が意外とおじいちゃんに向いていると解って、仕事がとても面白くなったんだよ。それで何社か移り代わったものの、IT業界で生き抜いて卒業したんだよ。まぁ、回り道と言えばそれまでだが、やってみなければ解らないこともあるしな。お前たちも今迷っているんだったら、選択肢を広げて大学に行ってゆっくりと考えてみるのもいいんじゃないか」

「なるほど〜。経験者の話は重みがあるなぁ。おじいちゃん、すっごい参考になったよ」

 こうして博貴と光一は大学に進学しようと決心した。博貴はITも意識した理系の学部を探し、広一はビジネスで英語を使うことを意識した理系の学部を探すことにした。二人とも生き生きとした目で志望校を絞り始めた。


🙇🏻‍♂️お知らせ
中編以上の小説執筆に注力するため、コメントへのリプライや皆様のnoteへの訪問活動を抑制しています。また、ショートショート以外の投稿も当面の間は抑制しています。申し訳ありません。


🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集  ← 記念日からの創作SSマガジン

↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓


いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉


#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説 #毎日ショートショート

いいなと思ったら応援しよう!

松浦 照葉 (てりは) よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。