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【SS 12月12日】バッテリーの日

【今日は何の日ショートショート】- バッテリーの日

日本蓄電池工業会(現:電池工業会)が1985年(昭和60年)に「カーバッテリーの日」として制定。1991年(平成3年)に「バッテリーの日」と名称を変更。
野球のピッチャーとキャッチャーの守備番号が1、2で表されるところからバッテリーの日と制定したらしい。ちなみに、11月11日は「電池の日」、11月11日~12月12日は「電池月間」。


【SS】バッテリー依存の世界

 いつからだろうか? 世界から電線という景色が消えたのは。

 それにもかかわらず人類は電気依存の生活の色はますます濃くなっている。もし世界から電気が無くなると人類はたちどころに滅んでしまうだろう。

 太陽光からの発電効率が現在は96%を超え、各家庭での消費電力以上の発電を各家庭で賄えるようになった。加えて、温度差でも発電できるようになり、昼と夜の温度差でも電気を作り出せるようになり、各家庭では24時間電気の供給が可能な時代になっている。さらに裕福な家庭では、屋根裏や床下を通る風を利用したり、床下の地熱を利用したり、人が歩くことで生じる圧力を利用して発電している。世界中で電気は余っているのである。

 人類は完全に化石エネルギーの利用を止めることに成功し、世界中から発電所も消えた。発電所にかかる費用や送電線、鉄塔建設費用などを各家庭や工場での発電設備導入への助成金と変え、世界中が環境にやさしい世界へと変貌した。ここまで来るのに人類は150年の歳月を費やした。

 車は全てが電気自動車となり、ドローン技術と合体しタイヤを無くした。このことは車線を横ではなく上に増やすことを可能にしたのだ。渋滞も無くなった。もちろん、トンネルは従来のものを利用しているのでボトルネックになることもあるのだが、勇気あるドライバーは山肌に沿って迂回することで渋滞を回避しているようだ。もちろん迂回路として設定されている場合のみではあるが。

 これら全ての心臓部とでも言えるのは、蓄電池、つまりバッテリーである。バッテリーは経年劣化する。過去に比べて耐用年数は伸びているが、それでも10年に1回は交換を余儀なくされる。その費用は莫大だ。だが、その費用は世界中の国家予算で作られたバッテリー基金から全額補助されるので個人負担はない。もっとも、通常必要な量の電気以上を求める場合は個人負担となるのだが。ここで、富裕層との差が生じる。仕方ないことである。いつの時代も貧富の差は生まれるものである。

 人々の生活は少しだけ豊かになった。電気代を気にすることなく快適な部屋の温度を年中保つことができるようになり、冷え込んだ時に増加していた死亡事故も減少した。リモートでの仕事は年を取ってからでも快適にできるようになり、ITに関係する仕事で高齢者がどんどん増加し、人手不足の解消にもつながっている。

 素晴らしい世界が実現したと誰もが満足し、平和に生活を営んでいたのだが、いつの時代も「悪」というものははびこるものらしい。全てのバッテリーにはタイマーが設置されており10年利用と同等の劣化が認められたら、バッテリー管理センターに通報が入るようになっている。そして、バッテリー管理センターではバッテリー交換の準備をして各家庭を訪問し工事を請け負う仕組みが確立していたのだ。もちろん工事代金はバッテリー基金に請求されるので、各家庭は何も気にせずに依頼する。

 しかし、この仕掛けられたタイマーは意図的に8年程度で通知されるように設定され、バッテリー管理センターは20%分の追加の儲けを叩き出していたのだ。もちろん、全てのバッテリー管理センターがこんなことをやっているわけではなく一部の地区のみだった。そして、そのバッテリー管理センターの職員は他のセンターより15%程度給与を高く支給されていたため、仕組みを知る社員も口外することはなかった。そして、残りの搾取した分は全て上層部の懐に入ることとなり、その一部が政治資金に流されていた。政治的に保護してもらうためである。

 信頼をベースとする社会の盲点を付き、お金で人の忠誠を買う人種は平和な時代ほど出現しやすいのかも知れない。しかし、悪いことは長続きしないのも世の常である。政治資金として流れたお金で政治家はこともあろうか自分の家に追加のバッテリーを導入し利用できる電気の量を増やしてより快適な生活を手に入れていた。そのことが個人として申請されていないことが判明し、資金の出所が追求され、組織的な犯罪が明るみに出たのだ。

 結果として、バッテリー交換工事代搾取の仕組みを知っていた社員と上層部は解雇され、タイマーも再設定された。特に悪どいと判断された上層部は罰金の支払いとともにバッテリーが整備されていない小屋での一年の奉仕生活を義務付けられた。

 言い忘れたが、罪の重いものは刑務所に入れられるのだが、刑務所にもバッテリーは導入されていない。唯一バッテリーの恩恵を受けられない場所は刑務所だった。そのため、犯罪も減少傾向にあった。

 総じて判断すれば、地球にやさしい快適な住環境がバッテリーによって維持されていると言えるだろう。ただ、バッテリー製造に利用される地球の希少金属はすでに枯渇してしまっている。バッテリーの再生で現状維持は可能だが増加に対応できない。これからの人類の大きな課題である。バッテリーの原料を求めて宇宙開発は進められ始めている。


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