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11月12日 皮膚の日 【SS】衣替え

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 皮膚の日

皮膚科を専門とする臨床医の集まりである日本臨床皮膚科医会(日臨皮)が1989年(平成元年)に制定。

日付は「いい(11)ひ(1)ふ(2)」(いい皮膚)と読む語呂合わせから。皮膚の健康と皮膚疾患についての正しい知識の普及と、皮膚科の専門医療に対する理解を深めるが目的。記念日は2017年(平成29年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】衣替え

 今年は季節の変わり目が不安定だ。みんな衣替えに苦しんでいるように見える。とあるマンションでは、夏物をしまった後にまた引っ張り出してきてみたり、急に寒くなってあったかい下着を出したり、忙しそうにしていた。そんな様子をクローゼットに忍び込んだ宇宙人が不思議そうに眺めていた。

 ここは高層マンションの四十階だ。おいそれと人は入ってこれない。住人も安心しているのだろう。女性の一人暮らしだったが、ベランダ側の窓は施錠されていない。それどころか、開けっぱなしだ。虫すらも飛んでこない高さで安心しきっているのだろう。住人の女性は、もうすぐ四十歳になろうとしている独身女性。外資系企業で働き、それなりにいい生活をしているようだ。季節の変わり目になると、クローゼットの中から次の季節の服を出してソファの上に並べられる。同時に、夏物をクローゼットの奥へと追いやってしまう処理に追い立てられる。だが、今年は夏から冬を行ったり来たりするような天気の変わりに住人の女性は困惑気味だった。

「こんなに毎日あったかくなったり、寒くなったりするんじゃ、たまんんないわね。はっきりしてほしいものだわ、全く。この服たち、どうすれば良いのよ。明日の服だってどうすれば良いかわからないわ」

 その時、クローゼットの奥に隠れていた、身長五十センチ程度の青い宇宙人が部屋の中に飛び出してきた。女性は悲鳴をあげようにも固まってしまって身動きが取れない。それをじっと見守る宇宙人。不思議な構図で時間が数秒流れた。その間合いを嫌ってか、宇宙人は、流暢な日本語で問いかけた。

「驚かせてすまない。私は、この地球という星が存在している星雲の外からやってきた。あなたの家に侵入するのが目的ではない。たまたま、窓が空いていたので、宇宙船から飛び移ったのだ。地球人は、皮膚を隠すために服というものを着ていると学んだから、確かめにやってきた。我々はこの通り、皮膚を変化させて体を保護している。あなた達は服というもので保護しているのか?」

「えっ、っていうか。宇宙人? ウッソでしょ。なんでよりによって私の部屋なわけ。まさか、武器とか持ってないでしょうね。小さいから威圧感はないけど、怖いんだけど」

「失礼な生物だな。せっかく言葉を学んで話しかけているのに。なんだか半分くらいしか理解できない。あなたの言葉は標準なのか」

「ウワー、宇宙人からバカにされたー。さっき皮膚を変化させるって言ったよね。それって、超ベンリじゃん。私にもその能力欲しいなぁ」

「地球人の皮膚は変化しないのか」

「そうね。少なくとも人間は皮膚を変化させられないわ。人間以外の動物では皮膚の色を変化させることができる種もいるけどね。あっ、そうか、あなた、もしかしてカメレオンの進化系じゃない」
「我々は高い知能を有する種だ。カメレオンというのは知らないが、おそらく違うものだろう。我々は、肌が感じる温度に応じて皮膚の形状を変化させて体を守っているのだが、そんなことはできないということか。なんて不便な体なんだ」

「うん。確かに不便ね。でもその分楽しみもあるわよ。だって、毎年流行は変わるでしょ。その度に洋服を変えて楽しめるもの。で、お肌はお肌で手入れはするのよ。私の場合は、入浴の時にするけどね」

「入浴、とは? すまん、学習不足のようだ。教えてくれ」

「えーっとね。程よく温めた水をためて、その中に体をつけたり、洗ったりするところよ。この髪の毛も洗うのよ。あら、あなたには髪の毛がないわね」

「なるほど。人間とはなかなか不便なものだな。毛というものが皮膚以上に役に立つとは思えないが、人間は皮膚が薄そうだからところどころを毛というものでカバーしているのかもしれないな。なかなか、面白い生物だ」

「何をごちゃごちゃ言ってるのよ。あなた達のその皮膚って、剥がして私たちの洋服に作り変えることはできないのかしら」

「な、何。我々の皮膚を剥いで人間の服にしようというのか。それは宣戦布告なのか」

「違うわよ。宣戦布告でも喧嘩売ってるわけでもないわよ。あなた達のような皮膚が私たちの服になったら便利だなと思っただけよ。で、いつまでここにいるの。いいかげん帰ってくれない。着替えもできないじゃない。帰らないんだったら、あなたの皮膚を剥いじゃうわよ」

「いや、それは困る。早々に帰ることにしよう。世話になったお礼にちょっとしたプレゼントを残していくよ。では、お別れだ」

 そういうと宇宙人の皮膚は、赤く変色し防御体制をとった。このまま滞在すると危ないと思ったのだろうか、腕につけている無線機で宇宙船を呼び寄せているようだった。まもなく、窓の外に回転する飛行物体が現れた。そこから白い光線が照射されたと思ったら、小さな宇宙人はその光線に吸い込まれるように宇宙船の中に消えていった。そして、ふと足元を見たら、宇宙人の皮膚で作ったと思われる手袋が落ちていた。宇宙人は、定期的に脱皮するらしく、その時の皮膚を使って作ったものだった。女性は手袋を拾い上げ、繁々と眺めた。

「これが宇宙人の皮膚で作った手袋なら、周りの温度で手袋の色が変わり、私の手を最適な状態で保護してくれるのね。これはいいものをもらったわ」

 女性は早速、宇宙人からの贈り物の手袋をつけてみた。サイズもぴったりでいい感じだった。ブルーの手袋は着け心地も良かった。シャワーを浴びようと思い、手袋を外そうとした瞬間、手袋は女性の皮膚と一体化していることに気づき、全身から血の気が引くのを感じた。

「ぎゃあ、手袋が外れない。私の手がー」

 一夜明けると、女性の体はブルーの皮膚で覆われてしまっていた。これで、衣替えが不要の体になってしまったが、ハロウィンの日以外は人前にも出れそうにもなくなってしまった。不用意に手袋をつけたことを後悔してやまなかった。そして三ヶ月後、女性は脱皮した。


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