3月5日 スチュワーデスの日 【SS】パニックになった機内
【今日は何の日】- スチュワーデスの日
今日は、あえて死語となった言葉を選んでみた。
1931年(昭和6年)のこの日、東京航空輸送社(後に大日本航空に吸収)が実施した日本初のスチュワーデス採用試験の結果が発表されたのを記念して制定された。
当時「エアガール」という呼び名で募集され、2月5日に試験が行われ、140人の応募に対し、合格者は3人だけだった。その3人は東京-下田-清水間の定期旅客路線に新卒として採用されたようだ。
スチュワーデスについて
「スチュワーデス(stewardess)」とは、旅客機に乗り込み接客サービスを行う女性客室乗務員のことで、船舶の司厨員に由来する「スチュワード(steward)」の女性の呼称である。現在では、テレビドラマなどの影響もあり、性差のない語である「キャビンアテンダント」または「CA(シーエー)」と呼ばれることが多い。ただし、「cabin attendant」は和製英語で、英語では「フライトアテンダント(flight attendant)」あるいは集合名詞「キャビンクルー(cabin crew)」と呼ばれる。これに伴い、日本語訳では「客室乗務員」という言葉が正式とされるようになった。
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【SS】パニックになった機内
国内線の飛行機の操縦席に緊張が走った。左側のジェットエンジンが停止してしまったのだ。機長は落ち着いた態度で緊急時のマニュアルを取り出した。片方のエンジン停止の対応手順をゆっくりと参照していた。その時隣の副操縦士が声を上げた。
「機長、右のジェットエンジンも停止しました」
機長は片方のエンジンだけなら何とか目的地まで辿り着けると思っていたが両方とも停止したのであればそれは困難である。急ぎ一番近い空港を探して不時着しなければならない。すでに山口を通過したところだ。このままだと北九州か福岡が近い空港となるが、北九州空港は滑走路の長さが不安、福岡空港は街の中にあるということが不安だった。機長は決断を迫られていた。高度も徐々に下がりはじめ、時間的猶予がない。
その頃異変に気づいた乗客が騒ぎ始めていた。ジェットエンジンの後ろの方の席に座っている乗客だった。スマホ片手に外の景色を撮影していたが、ジェットエンジンの異常に気づいたようだった。途端に大声で叫んだ。
「この飛行機、エンジンが一瞬火を吹いたぞー。墜落するぞー」
慌てた客室乗務員は乗客のところに駆け寄りパニックにならないように行動を開始するとともにアナウンスした。
「お客様へご連絡申し上げます。現在、エンジントラプルが発生している模様です。機体は安全ですから皆様落ち着いて対応をお願いします。たとえエンジンが停止しても墜落することはありません。その際は近くの空港に着陸することになると思いますので、シートベルトを着用して指示をお待ちください。くれぐれもお席から離れないようにお願いいたします」
一旦機内はざわついたが落ち着きを取り戻した。しかし、右側のエンジンも止まり、機長からのアナウンスが入ると再度パニックになりそうな気配となった。
「乗客の皆様、こちらは機長です。これから重要な連絡をいたしますのでシートベルトを着用したままお聞きください。当機は現在エンジントラブルに見舞われています。左右のジェットエンジンが停止してしまいました。しかし、すぐに墜落するものではありません。ご心配なさらないでください。客室乗務員の指示に違って緊急時の対応をお願いします。当機は、宮崎行きでしたが福岡空港に臨時着陸を現在打診しております。確定致しましたらお知らせいたしますのでそのままでお待ちください」
機内はざわついていた。そして乗客の緊張もピークに達しようとしていた時、飛行機はエアポケットに突入し一気に下降しその衝撃に乗客は驚き声をあげていた。エアポケットに入ってしまうと数十メートルを一気に落下してしまうことは多い。慣れていないと感じた以上に騒いでしまうものだ。なんとタイミングが悪い時にエアポケットに入ってしまうものだと客室乗務員も思っていた。そして追い討ちをかけるように酸素マスクも各座席の上から降りてきてしまった。みんな慌ててマスクをつけている。客室乗務員がマイクを取った。
「お客様にお知らせします。当機はエンジントラブルのため、目的地宮崎を変更し福岡空港に着陸することになりました。酸素マスクが降りてきましたが、慌てずに装着してください。エンジンが停止したとしても飛行機は墜落することはありません。ご安心ください」
コクピットの中では機長と副操縦士が緊急対応のオペレーションに追われていた。なんとか福岡空港で受け入れてもらえたが、街中にある空港なので細心の注意が必要だ。福岡空港が見えてきた。機長は機首を更に下げて高度を落とした。ほとんどグライダー状態で滑走路に進入していった。だが前輪が格納庫から出てこない。故障のようだ。悪いことは重なるものだと思いながらも、『なぜ私のフライトの時にこんなことが起こってしまうのだ』と機長は心の中で叫んでいた。
客席では頭を保護する姿勢が促され全員が緊急着陸に備えた前屈みの体制をとっていた。客室乗務員も席に着きシートベルトをして備えている。前輪が出ないまま飛行機は滑走路に接触した。そしてその衝撃が機内に伝わってきた。機体からは滑走路と接触して多くの火花が出て、そのまま減速させながらまっすぐ滑走路の端まで進んでいった。そして飛行機はギリギリまで滑走してようやく停止した。全員が非常用のタラップで脱出し、離れた場所に待機していたバスに乗り込み空港内へと運ばれていった。全員無事だった。
どうやら整備不良の機体だった上に、バードストライクと呼ばれる飛んでいる鳥がエンジンを直撃してしまう事故まで重なっていたようだった。しかし、奇跡的に怪我人を出すこともなく無事に着陸でき、機長もホッと胸を撫で下ろしていたようだ。この後は多くの報道陣の対応に追われることだろう。
了
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