2月3日 大岡越前の日 【SS】お裁きである
【今日は何の日】- 大岡越前の日
大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)が江戸町奉行(南町奉行)に就任したのが1717年2月3日だった。テレビドラマなどでは「大岡裁き」と呼ばれる名裁判で有名だが、19年間の在任中の裁判は3回だけで、そのうち忠相が執り行ったのは1回だけだったようだ。8代将軍・徳川吉宗の信頼が厚く、「享保の改革」と呼ばれる幕政改革を町奉行として支えたそうだ。
【SS】お裁きである
「あっしゃあ、何にもしてませんぜ。お奉行様、あっしは無実ですよ」
「そうか。お前は無実とな」
ここは、江戸時代の南町奉行所のお白洲の場である。大岡越前守忠相が裁きをしている最中だ。男、源十郎は米問屋に忍び込み百両もの金子を盗んだ疑いで引っ立てられた。しかし、どこからも盗んだ金子が出てこないので、源十郎は開き直り、無実を主張しているのである。
「源十郎よ、お前には病気のおっかさんがいるそうだな」
「へい。おりますが。。。」
「うむ、最近そのおっかさんはどこからか高価な薬である朝鮮人参を煎じて飲んでいると聞いているが、人参を買う金はどうしたのじゃ」
「そ、それは。。。」
「まぁよい。さて、横の米問屋、十兵衛に尋ねる。表では米問屋の商売をしながら裏では悪どい金貸しをしているそうだな」
「そんな、お奉行様。悪どいなんて人聞きの悪いことは言わないでくださいませ。私たちは困っている人に用立ててあげてるだけでございます。それに今回は被害にあった身なんですから」
「そうか。だが、法外な利息をとって金子を都合していると聞いているが、それは偽りか」
「いや、法外と言われましても。タダで貸すわけにもいかず、多少は利息を頂かないと」
「ほう、お前たちの多少とは十日で一割も借金が増えることをいうのか」
「いや、それは商売ですから」
「黙りなさい。お前たちの様な悪どい金貸しがいるから、押し込みなどをしてしまう民が現れると思わないのか。横に座っているお民、お前はこの十兵衛に何をされたのか正直に申してみよ」
「はい、お奉行様。あたしは、源十郎さんと夫婦になる約束をしてました。でも、源十郎さんのおっかさんの具合が悪いから、朝鮮人参を買う金をなんとかして調達したいと言っていたのを聞いていたので、米問屋の十兵衛さんにないないに相談しました。そしたら、いきなり蔵の中に連れて行かれていうことを聞けば十両貸してやると言われ、仕方なく言うことをききました」
「お民、貴様。なんてことを言うんだ。親切で貸してやった金だと言うのに」
「源十郎、このことを知ったお前は夜中に米問屋に忍び込み、百両奪って逃げたのだな。そして、十両をお民に渡し借金を返すように言った。だが、十兵衛は金を借りたら利息をつけて返すのは当たり前だといってお民の体を弄んだのだな。それで返そうと思っていた残りのお金を悔しさのあまり隠してしまったのであろう。おっかさんが話してくれたぞ」
「お奉行様。そこまでお見通しじゃ隠し事もできません。あっしが百両盗みました。そしておっしゃられる通り、十両をお民に託し、残りの九十両は米問屋の裏口の扉の近くに埋めてあります。金がなくなれば若旦那を困らせられると思いやした。申し訳ありません」
「うむ、よく本当のことを話した。だがいかなる理由があろうとも盗みは良くない。侵した罪の償いはやってもらうぞ。養生所での手伝いを半年間命じる。さて、米問屋十兵衛、お前の罪は明白である。ここにいるお民の弱みにつけ込み、弄んだ罪は重い。お民にに対し慰謝料として百両払ってあげなさい。それ以外は、おって沙汰するまで牢内でしっかりと反省するように」
米問屋の十兵衛は、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をしたまま、お白洲から連れ出された。百両取られた被害者だと思ってお白洲に来ていたのに、まさか自分が裁かれるとは思ってもいなかったのである。
「そしてお民、今回の件ではお前がいちばんの被害者だ。しかし、人を見誤り金を借りに行ったということにも反省すべき点はあるぞ。過去を変えることはできないがこれからも源十郎と暮らしていきたいと思うのなら、源十郎が帰ってくる家を準備して待っておれ」
粋な大岡裁きが下された。弱気を助け悪者を裁く大岡越前。全てのことを調べあげた上でお白洲を開き、真の罪人を裁き町の平和の維持に貢献したと言うことだ。
了
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