5月6日 アクティブシニアの日 【SS】シニアタウン
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- アクティブシニアの日
大阪府大阪市中央区に本社を置き、理美容機器・化粧品・医療機器などを手がけるタカラベルモント株式会社が制定。
日付は元気なシニア世代をイメージして5月5日の「こどもの日」の翌日の5月6日とした。同社の「美」と「健康」についての多彩な事業を活用して、アクティブにイキイキと生活するシニア世代を増やすことが目的。記念日は2018年(平成30年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
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【SS】シニアタウン
少子高齢化時代突入して人生百年時代と言われ始めています。これまで会社員は六十歳が一般的な定年でした。少し前は六十歳になれば年金も開始されていましたので、定年後に働く人も少なかったかもしれません。それがだんだん長寿時代に突入すると、年金財政は厳しくなり、段階的に六十五歳からの支給へと移行していきました。そしてすでに、移行措置期間も終了し、六十五歳以前から支給が始まる対象者はいなくなりました。一方、会社の定年は段階的に伸び始めてはいますが、まだ六十歳定年の会社が多いのも事実です。現状そんなアンバランスな状態の中でシニアと言われる人たちはもがいているのかもしれません。
さて、現実に目を向けてみましょう。あなたの周りにいるシニアの方々はどんな生活をしていますか。アクティプに何かに打ち込んでいる方は多いのではないでしょうか。反面、病気や怪我に不安を抱いている方も多いことでしょう。年齢を重ねていくにつれ、健康に対する思いも変化していくようです。
病院の待合室を憩いの場とすることなく、これからの高齢化社会のあり方を見直さないと、健康保険の破綻と共に年金制度の破綻は目に見えているのです。子供を育てるための環境づくりに一生懸命な政治家は多く現れ、行政も未来の日本を考慮して手厚い支援を実施し始めました。最も、自治体によってその差があるということに疑問を感じますが、今は過渡期であり子供たちに対する支援を充実させなければならないということを考えると仕方ないことかもしれません。
一方高齢化社会を見据えた場合、目立つのは介護施設や老人ホームの新設です。しかし、健康で元気なシニア層はそれ以上に大勢いて働く意欲も持っているのです。この立派な労働力を利用しないのは損失です。肉体の衰えを経験である程度カバーできるかもしれません。シニア専用の仕事の斡旋などももっと充実させれば、年金原資の目減りも緩やかにできるかもしれないのです。
「よう、正ちゃん。最近はどうだい。調子いいかい」
「ああ、健ちゃんか。そうだなぁ、最近膝が痛くてな。病院通いが日課になったよ」
「それは、いけないな。俺の方は毎日ゴルフ三昧だよ。ほれ、この通り」
健ちゃんは、今年七十になる会社勤めを卒業した後、悠々自適で生活していました。一方、正ちゃんは米屋の経営を父親からバトンタッチされた六十八歳でした。米屋では腰に負担がかかる仕事が多く、その結果膝に来ていたようです。毎年健康診断をきちんと受診していた健ちゃんとは違い、なかなかスケジュールが取りにくい正ちゃんは、健康診断もまともに受診できていません。どうやらこんな構造にも問題は潜んでいるようです。
毎年きちんと健康診断を実施し、病気の発見を早期にできるようになれば医療費負担も軽くなるはずなのです。どうしても個人事業主の場合は仕事の関係から健診の受診率は低くなってしまうのです。そのためシニアになってから調子が悪くなり病院に行くことになって手遅れということも起こってしまうのです。こんな問題や、会社勤務を終えた人に対する仕事の斡旋もなかなかうまくいかないという問題など、手付かずの課題が内在しているのが現状のようです。
シニア層が元気に働き、税金も納めて病院の世話にもならない世界が実現できれば年金問題も解決するのでないかとある地方の行政担当者が考え、活動を始めていました。「六十五歳からの人生に向けて」と銘打って、地元の富豪と手を組み、シニアのための総合施設を計画し作り上げたのです。敷地面積は東京ドーム三個分と同じくらいの広さで、病院、学校、スーパーなどの施設のほか、シニア層が従事するための仕事の施設も数多くつくられていました。シニア層の自律型施設となっています。もちろん、スポーツ施設も整備され、シニアに適したスポーツ設備がつくられていますので人さえ集めることができれば発展すると考えられていました。
施設内は全てインターネットで接続され、すべての場所で情報共有が図られていました。個人情報に関しても施設内では全て共有されているのです。これは個々人の安全を優先させるための逆転の発想でした。万が一どこかで具合が悪くなっても、その人の医療情報や基本情報が参照できるようにということを最優先していたのです。
地方の行政担当者の最後の難関は、六十五歳以上の人たちにこの施設に対する興味を持ってもらい、集まってもらうことでした。ただでさえ、年をとると保守的になってしまい、自ら手を挙げてきてくれる人はなかなかいません。行政担当者は足繁く一軒ずつ訪問し時間をかけて説得し続けました。一生懸命な姿勢に弱いのは何処も同じで、一人二人と賛同者が増え、そのうちに、ゲートボール同好会やカラオケ同好会といったシニアで集まって楽しんでいる人たちも参加しはじめ、施設には隣町などからも集まって賑わうようになっていきました。
人が集まってくるとあとは自然な流れとともに集まった人たちのアイデアで施設の運営方法も改善され、どんどん発展していきます。次第に一つの町として機能するようになり、いつしか「シニアタウン」と呼ばれるようになり、ここの住宅エリアに引っ越してくる人も増えていきました。この施設の中では優先的に仕事を見つけられるので、引っ越してくることが再就職でもあり、健康維持のためのスポーツ施設へのパス取得でもあったのです。
こうしてなんとか出来上がったシニアタウンは、介護施設は異なるシニアが生活できる場所として成長し、週末ともなれば施設の外に住んでいる子供や孫たちが遊びに訪れる観光地さながらの場所に生まれ変わり、お祭りや花火大会なども開催されるようになりどんどん発展していきました。この試みは健康な限り仕事をして社会に貢献する場の提供と健康を維持する場の提供を同時に実現した施設として全国から注目を集めるようになりました。今後のシニア層に対する新たなビジネスモデルの成功事例として、各地に飛び火することでしょう。
了
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