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【SS 12月13日】師走に遺産を考える日

【今日は何の日ショートショート】- 師走に遺産(相続)を考える日

 相続税に関しての専門サイト「税理士のチカラ」を運営するスタックインベストメント株式会社が制定した記念日。日付は「師走」ということで12月、1と3で「遺(1)産(3)」と読む語呂合わせから12月13日としたもの。
 年末に家族で集まり、遺産についての話し合いを促す意味も込められているらしい。話しづらい内容ではあるが、死後に問題を残すようなことにならないようにするためにも家族で話し合っておくことは重要そうだ。


【SS】とある遺産相続の結末

 もうすぐ90歳になろうとしている老人がいた。老人には三人の子供と一人の養子がいた。そろそろ遺産相続で揉めないようにしておかなければと老人は考えていた。しかし、上手い考えがまとまらない。財産としては60坪の家屋と100坪の敷地、別な場所に立っているアパート一棟(12室)とその土地50坪、そして別荘が2棟、株式は大手企業の株を合わせて一万株、そして預貯金は2億円余りに上っていた。連れ合いはすでに亡くなり子供達への分配を公平にしてやりたかったが、不動産をどう分けるか頭を悩ませるところだった。長男を筆頭にすでに嫁に出て行った長女と次女、そして再婚の際に連れ合いが連れてきた男子で養子とはいえ次男に当たる。老人としては四等分したいと考えていた。

 子供たちも薄々勘付いていて、お互いに牽制が始まっていた。長男は「この家と土地は代々引き継いできたのだから文筆するわけにはいかない。僕が引き継ぐしかないと思っているよ。その際に必要となる相続税に関しては株か現金でもらうしかないよな」と事あるごとに弟や妹に話をしていた。

 一方、養子の子は結構遠慮する性格だったため、連れ合いが生前の時、老人に釘を刺していた。「あの子にも多くはいりませんが困らない程度に遺産をあげてくださいね」と。老人は多いに悩んだ。

 そして最終的には、住んでいる家屋と土地を長男に、アパートとその土地を養子の次男に、別荘は長女と次女で一棟ずつ。預貯金と株に関しては四等分にするという遺言書を書き、生きている間に子供達に説明した。すると、養子を除く直系の子供たちは声を荒げて反発した。「なんでこんな養子の子に財産をあげなきゃならないのよ」と。それを聞いた養子の子は「僕はアパートとその土地だけ譲っていただければ他は入りません」と自ら、預貯金や株を放棄してしまった。他の三人は「相続税を払うために結局アパートも売る羽目になるわね」と白い目で見ていた。

 一旦丸く治まったかのような相続の会議だった。そして、年が明け気温が急激に下がった日の朝、老人は息を引き取った。長男は老人が生前に取り決めていた内容で遺産相続を進めようとしていたところ、一人の女性が現れお線香をあげさせてくれと言ってきた。そして自らも老人の養子として戸籍に登録されていることをその場で明かした。後妻の子供だった。そう、養子となっている次男の姉だったのだ。

 この女性は、法律を専攻していた。預貯金と株の資産について弟(養子になった次男)が辞退したことを知り「預貯金と株の4分の1を私はいただきます。それ以外は入りません」とみんなの前で言ってのけた。当然、周りは反発したが、公正証書となった遺書があるわけでもないので、法律上の遺産相続割合が優先されることとなった。もっとも養子の子みたいに辞退した場合は別だ。

 こうして全く面識のなかった女性にまんまと4分の1の現金と株を持っていかれることとなってしまった。この女性は手に入れた遺産を全て投資に回し、短期間のうちに相続税の分を稼ぎ出した。そこで出た余剰分は弟の相続税のために一部を支援するほどだった。
 
 実の子供たちは、現金を手にした嬉しさのためか、普段から欲しいと思っていた宝石やら車に費やしてしまった。そして、納税通知書が届いた時点で全員が後悔していた。しかし、養子の子たちは余裕を見せながら、打ち出の小槌のようなアパートに追加投資し利益率が上がるように工夫していたのである。

 まるでアリとキリギリスのような話だが、子供達のためだと思って決めたとしても、みんなそれぞれ思っていることは違っていたのだった。みんな自分が可愛いのである。人を引き摺り下ろしてでも、自分だけは金銭的に幸せになりたいと思うのだろう。悲しい限りである。

 この後、遺産を引き継いだ子供たちの運命は二つに別れて行った。アパートを相続した養子の次男は堅実にアパートを保守管理し、毎月100万程度の賃貸収入を安定して得られるようになった。そしてその姉は、手にした現金と株を元手に投資を開始し、年間1000万程度の利益を生み出せるようになっていた。一方、老人の血を引いた子供たちは、手に入れたお金で自分たちの欲しいものを購入してしまい、あっという間に手にした遺産は底をついてしまった。そして、口々に「あの養子の子たちが遺産を横取りしたせいだ」と八つ当たりをした。

 遺産相続は思いもよらぬ関係を身内の中に作ってしまう。普段は冷静でも自分のことになると冷静でいられなくなるのが人間のサガなのだ。普段からシミュレーションを欠かさず、自分の生活の身の丈にあったお金の使い方をするようにしたいものである。


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