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4月6日 城の日 【SS】見えない城

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-城の日

兵庫県姫路市の観光課が1990年(平成2年)に制定。

日付は「し(4)ろ(6)」(城)と読む語呂合わせから。姫路城を中心とした市の復興が目的で、この日を挟んで一週間は、姫路城周辺の文化・観光施設の無料開放、観桜会などが開かれる。
また、愛知県名古屋市のシンボルでもある名古屋城でも2002年(平成14年)に同じ語呂合わせで4月6日を「城の日」としている。この時期には「名古屋城桜まつり」が開催される。


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【SS】見えない城

 四百年以上も前に遡る。長崎県の小さな島にお城が築かれた。ヨーロッパのお城を手本にしながら日本独特の文化を合わせてデザインされた変わったお城だった。石垣を高く積み上げ、その上に八階建という普通では考えられない高さのお城を築いたのだ。石垣の部分はまるでピラミッドのようでもあった。島に築かれたお城であるが故に、海を一望できるため周りからの防御も容易だった。

 通常の城であれば城の麓は城下町で栄える。しかし、この城は城下町と城との間にもう一つ異人街と呼ばれるエリアが存在していた。お城を中心として異人街がお城を取り囲み、そして異人街を取り囲むように城下町が繁栄していたのだ。これはお城に近づこうとする日本人を見つけやすくするための工夫だった。着物を着た日本人が異人街に入ると目立ってしまうわけだ。なぜそこまで用心していたのだろうか。

 秘密は、お城の石垣が積まれた内部にあった。内部は地下四階ほどの深さが掘られ、その先に大きな鉄の扉で仕切られている部屋があった。扉の前には十人もの兵士が隠れて監視しているほど厳重警戒されている。その部屋には一体何があるのか兵士たちは知らされてはいなかった。

 毎月決まった日になると、城主と異人とお供のもの数人がこの部屋に入っていくのが習慣となっていた。この部屋に入るとまる二日は出てこなくなる。兵士たちは詮索したり他所で話をしたりすると斬首されてしまうので、その秘密を守り通していた。

 中に入った城主は、異人の一人に話しかけていた。

「今日は、ポルトガルで晩餐会だな。またあの美味いワインが飲めると思うと胸が高鳴るのう」

「はい。殿様。サンジョルジェ城では殿様のお越しを首を長くして待っていると思います」

 そんな会話をしながら奥へと進み、真っ暗な空間に向かって全員が歩きながら進んで行った。真っ暗な空間は全員を飲み込むかのように包み込み、初めから誰もいなかったかのような静けさを取り戻した。忽然と全員が消えてしまったのだ。

 ポルトガルのサンジョルジェ城の地下室では、サンジョルジェ城主とそのお付きの兵士が真っ暗な空間の前で待ち構えていた。しばらくすると、その真っ暗な空間から、着物姿の日本人と同行していた異人とお付きのものが姿を現したのだった。この真っ暗な空間は長崎の島とオランダのリスボンをつなぐ異次元空間だったのだ。この秘密の通路を知られるとお互いの国の中でパニックになってしまう。したがって厳重な警備と箝口令が敷かれていたのである。

「ようこそ、日本のお殿様」

「ご無沙汰しています。サンジョルジェ城主殿」

 ここから、日本とポルトガルの貿易が始まっていたことは、歴史の資料には記されていない。秘密を守り通した結果、百年後にこの異次元空間が自然消滅したことにより秘密は完全に世に出ることはなかったのである。

 城は、戦をするためではなく、実は外国との貿易をするための大きな役割を担っていたのである。思想や小さな調度品、果物などはこの異次元空間を経由し城主自らがお互いに取引を実施し、品質を確認した後、城下の一部の者に配布し、船舶による大量の貿易へとつなげていたのだった。

 サンジョルジェ城で出会った二人の城主はその後晩餐会でワインをのみ、近況を語り合い、お互いの貿易の成果などを話した。ちなみに、サンジョルジェ城主は日本から持参した日本酒をワイングラスで味わい、顔を綻ばせていたそうだ。話の中で、宗教の話題でも盛り上がり、日本の仏教とヨーロッパのキリスト教の話を交換し、お互いに広めてみようかという話がまとまりつつあった。そこで宣教師を連れて行かなければならなくなったのだが、流石に宣教師を秘密の通路を使って連れていくのはまずいだろうということになり、船で日本に向かわせることになったそうだ。もちろん貿易の品を積んだ船に宣教師も便乗していくという計画だった。

 晩餐会はほぼ四時間程度で終了した。お互いに忙しい身であり、空白の時間を作りすぎると怪しまれるのである。だから会合は大体三時間から長くても五時間で切り上げられていた。しかし、歪んだ時空の中を移動することになるので、入った人間にとっては二日間という時間が過ぎてしまうことなった。だから日本側のメンバーは二日間留守にしていることになる。そんなことから、頻繁に会うことは叶わなかった。しかし、その分濃い内容の話にすることができたのかもしれない。

 こうして始まったポルトガルと日本の貿易ではあったが、異次元空間が消滅してからは、容易に訪問することも叶わなくなり、途端に情報の鮮度が落ちていった。そしてキリスト教の普及を訝しがる幕府は、長崎での貿易に制約をかけキリスト教を一掃してしまうことまで考え始めていた。この頃になると、元々島に建っていたお城は火事となり焼け落ち、その後に遥かに小さなお城が建てられることになった。城主自らが火を放ったとの噂も広まったが真意は定かではない。その際、積み上げた石垣とその中の部屋もくずれ埋もれてしまったことから、きれいに平地に整地され、異次元空間への部屋は全て埋められてしまった。こうして、その痕跡は完全に消されたのである。

 お城には史実に残っていない隠された秘密が眠っている。もしかすると財宝とともに眠っているのかもしれない。


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