【SS 1月9日】とんちの日
【今日は何の日ショートショート】- とんちの日
日付は「とんち」で有名な「一休さん」にちなみ「いっ(1)きゅう(9)」(一休)で1月9日となっているが、制定した団体などは不明である。
一休さん(一休宗純:いっきゅうそうじゅん、1394~1481年)は室町時代中期の臨済宗の僧で、「屏風の虎退治」や「このはし渡るべからず」などが知られています。以前はTVのアニメでも放映されていたので知っている人は多いですね。
【SS】出てきた虎
一休さんが屏風の前に縄を持って仁王立ちしている。屏風の中にはこちらを睨みつけるようにしている恐ろしい顔の虎が描かれている。この虎が夜な夜な飛び出して悪さをして困っているので捕まえてほしいという依頼で、一休さんは縄を持って仁王立ちしているのだ。
場所は、一休さんが住んでいるお寺。殿様の住む城の中で虎が出てしまっては大変なことになるということで、虎が出る前の屏風を城から運ばせていた。お寺の本堂の真ん中に屏風が立てられ、万一のことを考慮して本堂の出入り口の扉という扉が全て閉められた。本堂は俄かに暗くなった。
「もともと夜な夜な悪さをするという虎でしたね。これで夜になったと勘違いすれば屏風の中から出てくるに違いないでしょう」と一休さんは集まった人たちに話した。
「さあ、では虎の捕縛を開始するとしましょう。虎を追い出す役目の人を除く関係ない方々は本堂の隅の方に移動して柱の影に隠れていてください。危険ですから」
そう言って、一休さんは腰を落とし飛び出してくる虎を睨め付け言い放った。
「いざ、まいるぞ。虎殿に恨みはないが、捕まえさせていただきます。ささ、屏風の虎を追い出してくだされ。ささ、早く」
「あい、判った。それー、虎よ、屏風から出てこーい」
虎を追い出す役割の侍は勢いよく声をかけ屏風の後ろを箒で何度か叩いた。すると、屏風の中から虎の唸る声が聞こえ、平面の中にいた虎の前足がジワリと立体化し、屏風の中から本堂の畳の上に左前足が踏み出してきた。
これには一休さんもびっくり仰天。かと思いきや、見越していたかのように縄を持った右手を高く振り上げ、虎が全て出てくるのを待っているかのようだった。びっくり仰天したのは虎を追い出した侍の方だった。屏風の後ろで腰を抜かしそうになりながら小さい声で話ていた。
「殿様が一休さんを困らせてやれというので絵の虎を持ってきたが、まさか本当に飛び出してくるとは、恐ろしやー、恐ろしやー」
そうしている間に、虎の前足二本が本堂の畳の上に現れた。胴体も頭を含めて半分が出て来ている。畳が少し沈んでいるのがそれになりに体重があることを示していた。そして残りの体を引っ張り出すかのようにジワリと胴体を捻りながら、後ろ足も屏風の中から出し始めた。ゆっくりと慎重に、目の前にいる一休さんを睨みつけたまま「待ってろよ」と言わんばかりの形相と低い唸り声で威嚇していた。そして屏風の虎の体の全てが本堂に出て四つ足で立ち、体をほぐすかのように全体を身震いさせた時だった。
一休さんはタイミングを見計らっていた。屏風から出た瞬間は、体をほぐすために全身を振るわせることを。虎が身震いした瞬間、今だとばかり振り上げた右手で持っていた縄を思いっきり引っぱり寄せた。すると、虎が乗っかっていた本堂の畳がグルンと回って、虎は踏ん張って立っている場所を失ってしまった。飛んで避けることすらできなかった。そう、落とし穴になっていたのだ。もともとは悪者が潜り込んだ時に利用する捕縛ようの穴だった。穴の中は檻になっており。本堂の床下から引っ張り出すことができるようになっている。虎は自分の身に起こったことが納得できないのか、恐ろしい唸り声を上げるだけだった。
一休さんはしてやったり顔で見守っていた人たちに声をかけた。
「皆さんの協力のおかげで、無事に屏風の虎を捕まえることができました。これで虎は悪さはできません。安心して夜もお休みください」
見守っていた人たちから拍手が湧き起こった。城への連絡もすぐさま手配され、殿様の耳にも入った。
「そうか、南蛮から呪術者によって屏風の中に閉じ込められていた虎をついに追い出し捕まえてくれたか。わっはっは、さすがは一休じゃ。褒美をとらせぃ」
一休さんによって虎が追い出された屏風が城に戻り、殿様に披露された。そこには、可愛らしい干支のウサギが八匹で遊ぶ絵が描かれていた。それをみた殿様は、膝をポンと扇子でたたいて言った。
「なんと。屏風の中に虎を閉じ込めのは一休だったか。この絵は余が離れで飼っているウサギたちじゃ。うーん、してやられたわい。今回はわしの負けじゃのう」
了
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