音色・倍音とオクターブの意外な関係
ユニゾンの次に基本的な音程はオクターブである。完全8度ともいう。オクターブもうなりに注意してうなりがなくなるようにすればよい。でも同じ音程ではないのに、何と何がうなるのか?
音の三要素というのがある。これだけ決れめば音が決まりますよ、というもので、音の大きさ、音の高さ、音色の三つである。
音の大きさは音量といい、特に波形としてみた場合には振幅とも呼ばれる。単位は音がどこを伝わっているかによって変わってくるが、空気中を伝搬している音ならばPa(パスカル)、つまり気圧と同じ単位である(音圧ともいう)。これもパスカルさんが由来なので頭は大文字である。ちなみに「人間は考える葦である」のパスカルさんである。
実用上はdB SPLのような対数圧縮された単位が使われることが多い。なお、JISでは単にdBと表記することになっている。よく、ヘッドフォンやスピーカーの性能のところに書いてあるdB SPL/Wの/の左側の単位である。電気的に1Wぶっこむと、物理的にどれくらいの大きさで音が鳴るかのことなので、スピーカーの能率(効率)を表しており、数字が大きいほど能率がいいわけだ。
音の高さは前回やったように周波数のことであり、単位はHzであった。
このふたつは単位はともかく、それぞれひとつの数字で表すことができる。が、音色はそう単純ではない。音色を決めているのは音に含まれている倍音の量である。
たとえば440HzのAの音を出した時に、その2倍・3倍…の周波数の音も一緒に鳴っている、という現象が起きるのが普通であり、この2倍…の周波数の音のことを倍音と呼ぶ。ギターをやっている人はチューニングの時にハーモニクスを使うと思うが、普通に弾いている時もこのハーモニクスが一緒に鳴っている、と理解するのがいいだろう。
というか、そもそも倍音を英語で言うとharmonicsである(overtoneとも言う)。元々の音、今の場合は440Hzの音のことだが、これを基音(fundamental)という。倍音はそのまま2倍音・3倍音と呼ばれたり、第2倍音のように頭に第を付けることもある。第2倍音は2番目の倍音ではなく、周波数が2倍の倍音である。つまり、基音も含めて数えて2番目の倍音である。
倍音は聞こえる人と聞こえない人がいるが、これも都市伝説ではなくて、実際に鳴っている。聞こえないのは基本的に人間の耳が倍音を音色の違いとして聞き分けるようにできているからで、それが普通であり、訓練しないと聞こえるようにならないと思う。また、まったく同じ音を出していても場所によって、同じ部屋でも立つ位置によって倍音の聞こえ方は変わってくるので、聞こえるという人でも聞こえない時がある。
スマホで音楽を聞いていて音量を下げていくと、全部の音が同じ割合で小さくなる。つまり、基音が半分になれば、倍音も全部半分になる(dBだと全部の音が-3dBとか-6dB小さくなるわけだが、そこんとこは突っ込まんといて)。音量を小さくしたら音色が変わりました、という話は聞いたことがないだろう。つまり、音色というのは基音の大きさを基準として、どの倍音が何倍の大きさで含まれているかで決まってくる。
だから、ひとつの数字では表せなくて、例えば基音を1とした時に2倍音が0.5倍の大きさ、3倍音が0.1倍の、4倍音が0.34倍の大きさ、というように、全部の倍音の大きさを指定する必要がある。
…何倍音まであるの? と思った人がいるかもしれない。理論上は倍音の方に上限はない。ただ、人間の耳の方がどうせ20kHzあたりまでしか聞こえないので、人間向けには440Hzなら50倍音くらいまで指定しておけばだいたいOKである。猫向けにはもう少し上の倍音まで指定しないとダメだろう。
で、やっとオクターブの話である。オクターブは周波数でいうとちょうど2倍の周波数である。1オクターブで2倍なので、2オクターブは2倍の2倍で4倍である。3倍ではないので気をつけなければならない。
ハモっている=うなりが聞こえない、なのであった。また、うなりとはふたつの音の周波数がずれている時に聞こえるのであった。ユニゾンの場合はふたつの音の周波数が同じだから簡単だが、オクターブの場合は周波数が倍違うわけだ。この場合は何をどう聞けばいいのか。
実は低い方の音の2倍音と高い方の音の基音がうなりの対象になる。つまり、テノールが220HzのAを出しており、アルトが440HzのA、つまり1オクターブ上のAを出していると、テノールの第2倍音が440Hzになるので、これがズレているとうなるわけだ。例えばテノールがちょっとズレて220.5Hzになると、第2倍音が441Hzになるので、アルトとの差の1Hz、つまり1秒に1回うなる。
うなりは音量の変化を耳で聞いている。この場合、耳に入ってくるテノールの2倍音の量とアルトの基音の量が、1秒に1回の速さで変わるということだ。倍音の比率が変わると音色が変わるのであった。つまり、倍音そのものが聞こえない人でもこのうなりは音色の変化として知覚できる。
これが冒頭に書いた結論である。
