EMF|揺れるキーボードとSTIGMAのTシャツ
当時、キーボードの子が、やけに目に留まった。
BEAT UKで見たEMFは、ギターの横でキーボードがぐらぐら揺れていて、メンバーもどこかスケーターっぽかった。
「Unbelievable」はもちろん知っていたけれど、自分の中に残っているのは曲だけではない。画面で見た、あの身軽な佇まいまで含めてEMFだった。
Jesus Jonesも同じ頃によく見ていた。ロックなのにビートが前へ出ていて、服装も立ち姿も軽い。同じではないけれど、あの頃には似た匂いのバンドがいくつかいた。
たぶん、あのキーボードの人がDerry Brownsonだったのだと思う。キーボードやサンプリングを担当していたメンバーだ。
派手に飛び跳ねたり、頭を振ったりしていて、**「本当に弾けてるのか?」**と思うような動きもあったけれど、それも含めて見ていて面白かった。
自分が見たEMFのライブは、たぶん1993年の『Stigma』期。
微かに記憶があるのは、渋谷ON AIRの方だ。
Tシャツの記憶もある。
フロントには『STIGMA』のジャケットプリント。
背中の下の方、お尻のあたりに「EMF」。
ただ、自分が好きだったEMFは、もう少し前のEMFだった気がする。
『Schubert Dip』の頃のEMF。
「Children」や「I Believe」や「Unbelievable」にあった、速くて前に出てくる感じが好きだった。
ライブでも、その頃の曲はやっぱり上がった。
「Children」や「I Believe」になると、客席がわっと動く。Ned’s Atomic Dustbinの時に感じた、押し合いの強さとは少し違っていた。
荒っぽさはあっても、音が走り出すと客席も一緒に跳ねる。
自分の中では、それがEMFのライブだった。
ただ、『Stigma』は正直、そこまで好きにはなれなかった。
1stの頃にあった若さやスケーターっぽさから、少し暗く、重い方へ行っていた。
後年、Ian Denchが『Stigma』について、「Nirvanaへの自分たちなりの答えだった」と語っている。そう聞けば、あの重さも当時の空気と無関係ではなかったのだと思う。
でも、自分にはその変化があまりしっくりこなかった。
その頃は、自分の聴くものも変わっていた。
グランジの音が入ってきて、ギターの歪みや重さにも引っ張られていた。日本でも、THE MAD CAPSULE MARKET’Sの音の圧がどんどん強くなっていた頃だった。
自分自身、重い音が嫌いだったわけではない。
でも、その重さをEMFに求めていたわけではなかった。
そういう時期の中で、EMFは自分の中で少し聴き方がわからなくなっていった。
『Stigma』の次の『Cha Cha Cha』になると、自分にはさらにピンとこなくなった。変わっていったEMFの中に、自分が好きだった感じをあまり見つけられなかった。
ずっと後になって、ベーシストのZac Foleyが亡くなっていたことを知った。
あらためて当時の映像を見ると、Zac Foleyもかっこいい。EMFの身軽さは、あのキーボードだけで作られていたわけではなかったのだと思う。
EMFを、その後ずっと追い続けたわけではない。
それでも、BEAT UKで見たEMFは妙に残っている。
ギターの横で、キーボードを激しく揺らすように弾きながら、自分もぐらぐら揺れていた。
今でもEMFと聞いて先に思い出すのは、その揺れているキーボードの方だ。
