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小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作20選⑦

皆さんこんにちは
今回は今まで読んだ小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
※この記事ではamazonアソシエイト・楽天アフェリエイトリンクを利用しています。


1.そしてミランダを殺す

殺してあげようか? というスリリングな会話から始まる。
おっ!これは面白そう。
男女4人の語りで話しは進むが、殺そうとする人、殺されれる人の立場が微妙に入れ替わってるのか~?
時間の経過とともに立場が替わる。今はどちら側だろう?
そこに当然刑事が絡んできてどうなるのよ!! となる。
話を読んでる方はそれぞれの立場の状況がわかるので,ハラハラドキドキしながら眼が離せない。
登場人物も少なくストーリもわかりやすいが、頭の中は???。
ラストで2、3回ビックリするが、下手な趣味は持たないほうが良かったですなあキンボール刑事さん。
原題は「殺されてしかるべき者」。
道徳を超越した犯人の冷静な所業に背筋が寒くなります。
最後までハラハラドキドキさせられる、実に良くできたミステリーです。

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2.ロボット・イン・ザ・ガーデン

「庭にロボットがいる」。ではじまるお茶目で可愛いロボットの成長と大冒険のお話です。
カバーの絵の通りのちっちゃなロボットが未熟な若夫婦の住む家の庭に迷い
込んでからロボットのタングと若い夫・ベンの大冒険が始まる。

旅先では奇異な二人の旅姿に白い目が向けられたり、妙にタングがリスペクトされ大切に扱われたりと、悲喜こもごも。魅惑的な東京では地下鉄に乗ったタングがおおはしゃぎ。

そして新しく覚えた言葉は「やだ」。(-_-;)
有頂天になったり、ふざけたり、いなくなっちゃったり、むくれたり、と未熟なベンは翻弄されっぱなし。

でもね、そんなタングの体には致命的な危険が孕んでいるのです。
早く治さないとタングは死んじゃうんです。ああ!どうしよう!不安に苛まれつつ旅の終着点に急ぐ二人。
果たして結末はいかに!

決して物凄い知能や性能を持っている訳でもなく、特殊な技能もなく、子供が工作で造ったようなタングは錆びたり汚れて、胸のカバーが勝手に開いちゃったりとポンコツなんだけど間違いなく虜になります。

だって挿絵のような可愛いロボットに、足に抱きつかれてギュッとされたり、寂しそうにポツンと佇んでたり、太陽の熱に晒されてオーバーヒートで具合が悪くなって動かなくなったりされたら、たまりませんよね。
登場人物達は悪者が1人くらいしか出てこない、あとはみんな優しくて人柄のいい人達ばかりだからとても安心できます。

堅苦しい政治観や宗教観、偏見やしつこい批判、悪意に意味不明な表現も本作にはありません。
優しい心を持っている人はきっと気に入るはずです。

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3.きりこについて

「まぁ、なんと...変わったお話だなぁ。」
というのが、読み始めて数ページの感想。
なにせ、冒頭2ページで”ぶす”という言葉が6回も出てくるので、読んでいてたじろがないわけにはいかず、
読み進めるうち、幼少期に少なからず私自身も経験したような日々を、まるで複写したかのようなストーリーに、苦々しい思い出を今更、無理やり回想させられた気分にさえなり、
「んっ?この本なに?著者の西さんってどんな人?」とGoogleさえしてしまったほど、物語前半3分の1は嫌悪感を持ちながらページをめくっていましたが、ちょうど83ページから、主人公きりこの人生もあわせて、物語の様相が変わります。
そこからは、ほぼ最後までノンストップで読んでいき、
「あぁ、思いがけなくとんでもない本に出会えたな」という感想です。

著者の西さんと黒猫ラムセス2世に、感情を操られ、導かれるように話が進んでゆき、一言で言えば”大切な事を再確認させてもらえた”、そんな一冊です。
”悲しさを背負って、喜びに気づく”という言葉が、一番この本の中で好きな言葉です。

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4.エミリの小さな包丁

田舎でのおじいちゃんとの生活を主人公エミリは淡々と過ごすわけだが、なんの変哲もない、側から見れば貧しい暮らしが、こんなにも豊かに彩られる。
この小説全体がとある一文に込められてるんだろうな。
人間ってままならない。そんでままならないまま大人になってくけど、それでいいんだろうなと元気が出ました。
小説に散りばめられたおじいさんの言葉は、どれも名言級。

他人のことを気遣えない知人、母を嫌っていた主人公、口数少ないお祖父ちゃんの言葉に隠された思い。
みんなそれぞれの人生で辛いことや悲しいことにも遭いながら前向きに生きてるんだなぁと思いました。自分の思い込みのフレームだけで他人を嫌ったり好いたりするけど、知らなかったエピソードを聞いたり自ら気づいたりしたら、これまで見えていた印象とは180度変わることもある。
小説だけど、人生教訓になる温かい森沢さんのお話が大好きです。

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5.麦本三歩の好きなもの

麦本三歩は本が好き。整理整頓はやや苦手だが、部屋を綺麗に飾ることは嫌いではない。甘いものが大好きで、ついついベッドに寝転がりながらお菓子をほおばってしまう。……というようなことを、本を開かずとも想像できて楽しい。装丁にいろんな遊び心があって、面白かった。それはぜひ本を買って確かめてみてもらえれば。

本作は麦本三歩という図書館員の20代女性の日常を描いた作品。脳内が賑やかで、だけど表に出る動作はやや挙動不審気味。コミュ障な感じもあるけれど、といって本質的に人と関わるのが嫌いというわけでもない。大学でふっと話しただけの本来何も接点のない人と友達になれるあたり、実はコミュ力高い一面もあるようで羨ましい。

作者のTwitterでは「何も起こらない話」というようなことを(ポジティブな意味で)よく紹介されていた。たしかに今作は誰も死んだりしないし、時空を越えたり変身したりもしないし、他人の気持ちも読めないし人間関係が大きく変わったりもしない。……だけど、何も起きていないかといえば、そうでもないような。表面的に大きな出来事はないかもしれないけれど、でも僕らの日常以上にはきっといろんなことが起きていて、それを受けて三歩の内面にはよりたくさんのことが起きていて、読んでいて決して退屈とかそういうことはなかった。

地の文は基本的には三人称だけど、ところどころ、視線があちこちに行っているような、注意が散漫になっているような所があって、それはきっと三歩の精神状態を反映しているんだろうな。地の文を含めて三歩の視点で日常を見ることができるような気がして楽しかった。

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6.くちぶえ番長

小学四年生のツヨシのクラスに転校生のマコトがやってきました。一輪
車を巧みに乗りこなし、ちょんまげのような頭をし、口笛をよくふく、男勝りなマコトは、転校初日に、「学校の番長になる!」と宣言したのでした…。

友達想いで、強いものには敢然と立ち向かい、弱いものには味方になる。
そして、ぶっきらぼうだけれど、とっても心優しい―そんなマコトに、
クラス委員で心穏やかだけれど、ちょっぴり怖がり屋で、他人に流され
やすいツヨシは、次第に惹かれていきます。そして、最初はマコトとは
距離をとっていたクラスの子たちも、他の学年の子たちも…。

最高の相棒となったツヨシとマコトの過ごした一年間が、爽やかに鮮やか
にえがかれています。構成的には、作者が子ども時代を回想する形式
をとっていますが、その回想から小説部分への導入も見事で、グイグイ
と小説の中に引き込まれてしまいます。

小学生たちを現実感たっぷりに生き生きと描写しているこの本からは、
何か懐かしさを感じ、重松作品のクオリティーの高さを再認識させられ
ます。難しい漢字にはルビもふってあるため、是非小学生にどうぞ。
読了後は、爽やかな感動が包んでくれます。

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7.人間の大地

「星の王子様」の著者、サンテグジュペリが郵便を運ぶパイロットとして、
大西洋と北アフリカ・南アメリカ・ヨーロッパ等を飛び回り、そこで出会った人・風景について書いた本です。

1920~30年台、飛行機のエンジンが空中で止まるのは珍しくありませんでした。
当時のパイロット達は、命を懸けて大空を飛び交っていたのです。
そんなおんぼろ飛行機で飛び回り、出会った人々・風景が、サンテグジュペリの目を見開かせます。

滝を見つめるムーア人、奴隷のバルクじいさん、
靴をナイフで裂きながら雪山で歩き続けたギヨメ、
お屋敷でシーツを繕うおばあさん、蛇飼いの姉妹など・・・
そして砂漠で遭難したサンテグジュペリ自身。
その驚き・発見の数々が、実感のこもった巧みな文章で綴られています。

星の王子様で書かれている事が形を変えて、この本の中にたくさん出てきます。
両方読むとサンテグジュペリの考え方がよく分かり、彼の暖かく前向きな考え方が好きになりました。
こんなにたくさんの事を感じ取れるおじさんが
フランスに生きていたんだと、心の中を洗い流されるような気分になれる本です。

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8.百瀬、こっちを向いて。

1985年の福岡県久留米市あたりを舞台としています。
神林さんと百瀬の両方と付き合う高校三年生の宮崎先輩は、その露見を避けるため、百瀬と偽装カップルを演じることを高校一年生の僕:相原ノボルに頼んできます。僕は宮崎先輩に恩義があるため、百瀬は恋人との関係を守るため、嫌々ながらも承諾します。
恋心は、偶然の出会いに始まり、困難があって育ちます。スクールカーストの最底辺に位置していると自分を貶めていた僕はだんだん百瀬に惹かれます。
宮崎先輩、神林さん、百瀬の3人の関係が純粋と打算がないまぜになって変化していくところを見ながら、僕はこれまでの自分の枠を超えて、心の防衛力が下がることを覚悟のうえで、他人と付き合い、想うことを始めます。
高校生の恋が、自分の人生設計と恋愛とをどのようにつなげ、いかに演技していくかにまで広がって、「生きていくこととは?」とちょっと考えてしまう、なかなか深くてよくできていながら、読みやすく読後印象のとても良いお話です。

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9.ドーン

――火星への有人探査で、最も困難なのは技術ではない。
500日間の密閉空間で起こる、人間関係である――

そんな現実の課題を背景に書かれた、火星往復ミッションに挑む宇宙飛行士たちの物語です。
この小説を通して筆者が提案しているのは、「分人」という概念です。

「分人」とは、「個人」に対する概念で、
「人間は、自分の中に一貫した個性なんてものはなく、一緒にいる相手次第で人格が変わる」
そんな考え方です。

つまり、個性とは、どんな人と一緒にいるのかの構成比でしかないのです。
そのため、「この人と一緒にいる時の自分が好き」と思える人と一緒にいる時間を長くすると、好きな自分に変われることになります。

これは、自分の人生を豊かにするための視点でもあり、
スマホやSNSで、いろんな人と同時にコミュニケーションをする現代人の気持ちを読み解く視点でもあります。
人間を洞察するためのフレームをもらえました。

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10.戦場のコックたち

これは久々にすごい小説に出逢った。
タイトルからしてお料理小説かと思ったが、バリバリの戦争小説。
裏表紙に「日常の謎」と書いてあるが、「非日常の謎」である、戦争中の物語なんだから。
舞台は第二次大戦中のヨーロッパで、連合軍のコック兵ティムを主人公とする物語。登場人物もみんな外国人なので海外小説を読んでいるかのよう。分厚い本だが、あっという間に引き込まれて読了した。

東京創元社お得意の連作ミステリ方式(5章からなる中編集)だが、ミステリよりも中身が凄い。戦争中の兵士の行動や心理、地獄絵図のような最前線の街の様子、極限の状況でどのようなことが行われていたか、史実を基によく描かれている。
一番うなったのは、アウシュビッツ収容所からのユダヤ人解放の場面。「夜と霧」の著者フランクルと逆の視点、解放する連合軍側の視点で描かれている。人間とは状況によっては、どんなことでもしかねない生き物だと、「善・悪」など二項対立では語れないのだと改めて思った。人間は平和のために戦争する愚かな生き物なのである。

この作品は時事ネタ、戦争ものにお決まり「お涙頂戴」のやらせ感、単調さなど全くなく、最初から最後まで沢山のテーマーと哲学を内包した、稀有な作品である。50年後100年後も読める古典となり得る力作である。

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11.人間に向いてない

タイトルに惹かれ予備知識無しで読み始めましたが、冒頭から主人公(母である美晴)の息子(優一)が異形の虫に変わる話で驚きました。
人の心情の繊細な機微が描かれた物語を期待したのですが、なんだこれはファンタジー系かと。
しかし、読み進めて早々にその判断は見当違いでした。
結論、めちゃくちゃ面白いです。

自分の環境の悪いところと相手の環境の良いところを比較しがちですが、それは良くないですよね。
母も異形になった息子のためにこれだね頑張れるならそれまで頑張れた気もしますが、どうしようもならないと分からないもんですもんね。
ネタバレになりそうですが、ラストの息子の激情には心を打たれました。

※余談ですが、芋虫みたいなユウくんがだんだんかわいく感じてくるのも不思議なところです。

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12.掃除婦のための手引き書

とにかく剥き出しの言葉。美しく、ねじくれ、憐れなほど純粋で、人の心を掴みます。最近あまりに女性讃歌ものが流行るのでこれもそうなのかなと思って居たけど、訳が岸本さんということで、特大の信頼から中味を見ずに購入。
著者の実体験談が綴られて居ますが、夢の中をみせられているかのような不思議なリアルさと空想に包まれました。
しかし、アメリカの作家には多いtoughでどこまでも<此処ではない何処か>を求めるフロンティア精神がほのみえます。
今再発見されている方だそうですが、亡くなったそうで非常に残念…
表紙は女優ではなく本人です!超美人。
美人ならではと言えそうな苦境も数々描かれています。
あっという間に読み終わる面白さですが、何度も読み返したくなる魅力に溢れています。

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13.通い猫アルフィーの奇跡

主人公の猫、アルフィーの視点で進む物語。語り口が最高!
この作者、余程の猫好きでしょうね。
猫を飼ってない人も楽しめるけど
猫を飼っている人は愛猫と重ねてより楽しめると思います。
お近づきの印にネズミの死骸、次にもっと特別な鳥の死骸を送ったり
「どっちがハンサムか」と猫同士が喧嘩していたり、
愛猫や近所で見かける猫の行動が、「もしやそうだったの!?」と
笑いが止まりませんでした。
ちょっとおせっかいで人情味あふれるアルフィーの活躍。
ラストは感動で涙が止まりませんでした。
うちの近所の通い猫も アルフィー程賢くないにしても、こんな事考えてたりして?と想像してみたり

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14.神去なあなあ日常

林業に携わる人々の熱量や職人技、木を切ることがこんなに難しく様々な計算や経験が必要とはと驚かされます。そして林業経営の知られざる事情や巧みさも知ることができました。
その反面、普段の生活はテキトーな「なぁなぁ」でいる意味と、山で生きる人々の不思議な習わしなど、そのバランスが大変おもしろかったです。情景描写が秀逸なのでその場面が目に浮かび、最後まで飽きずに読み進めてしまいました。
うちの実家もまぁまぁ田舎なので親世代の人達が寄り合って神事事をしている地域ですが、大変なら辞めたらいいのにと思っていました。でも、自然と共に生きるためにそこに住み続ける人間の誠意と覚悟を地域全体で共有する大切な事なのかもと思えるようになりました。
しかしこの取材力は本当にすごいと思います。神去村に行ってみたい。

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15.海が見える家

主人公文哉の父が、海が見える家にすむようになった訳が、「ぶっきらぼう」と呼ばれた和海や地元の人々との交流を通してだんだん明らかになっていきます。そして、父が見ていたであろう同じ景色を文哉も見るという場面で物語は終わる。

父の家で過ごすうちに、文哉は、父親へのわだかまりや働くこと、生きること、幸せの受け止め方が変化していきます。そして、文哉自身も、父が暮らしていた家、海、仕事に心から生き生きと楽しめていることに気付きます。

わたしたちは、実際にやりたいことを思う存分やれることはそんなに簡単なことではありません。また、やりたいことが何であるかもわからないまま生活しているものです。だから文哉の父は、本当の幸せ者に違いありません。
照りつける太陽、潮風、草いきれ、額の汗など、夏色満載の小説です。

この本のテーマは決して明るいものではないと思います。しかし、誰にでも起こることではないかと感じさせられます。物語は海辺の自然を美しく表現されている為、四季を想像しながら読むことができました。

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16.10の奇妙な話

物語は、社会がずっと抱えてきた理解され切れていない差別や排除などの問題も内包していると思った。
例えば、「ピアーズ姉妹」は、ルッキズムをもとにした蔑視。「眠れる少年」は、起立性調節障がいや睡眠障害の問題。
「骨集めの娘」は死別や喪失の悲嘆と手当について。置き去りにされていること、放置されて流されていることはぼくたちの社会には無数にある。時の経過がもたらす風化。もし自分の娘や息子が外国に拉致されたままそのまま無下にされていたら……。多数決に便乗して裏金が正当化されようとしていること。被災地への補正予算投資の遅れ。留まることのないいじめや若者の自死。信じ難い放ったらかしがここそこに散在している。でもミック・ジャクソンの短編集はそれらを蔑ろにはしなかった。決してハッピーエンドではないのに、微かな希望のようなものが残り香のように漂う読後感がぼくは好ましいと感じた。

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17.デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士

主人公の荒井尚人(なおと)は「コーダ(Coda)」です。コーダとは「両親ともにろう者である聴こえる子」のこと。CodaはChildren of Deaf Adultsの略です。
両親がろう者なので、コーダは音声日本語より先に、日本手話を自然に習得します。
尚人の仕事は手話通訳士。ある日、彼は、窃盗未遂の罪で起訴されたろう者の裁判で、通訳をつとめます。
冒頭、裁判長は「被告人には黙秘権がある」と告げる。尚人は手話で〈あなた/持つ/黙る/権利〉と表現する。しかし、この「黙秘権」が被告には伝わりません。
人差し指を口に当てる〈黙る〉という手話を、手のひらを口の前に持ってくる(=口を閉ざす)という表現にしても、通じない。口にチャックをする表現に変えても、被告は首をかしげるばかり……。
一つ一つの言葉の意味はわかっても「黙っている権利がある」という概念がわからないのです。観念的・抽象的な意味を手話で伝えることが、いかにむずかしいか。また、警察で作成される被告の供述調書が、いかにいいかげんか。この小説は、ろう者をとりまく社会や行政のひずみを浮き彫りにしていきます。

文法構造が違う「日本手話」と「日本語対応手話」のこと。中途失聴・難聴者が使う「日本語対応手話」につきあうのは苦痛、と語るろう者がいること。聴覚口話法やインテグレーション(統合教育)の可能性と問題点。ろう者は責任能力が劣るので刑を軽減すると定めた刑法四十条が、逆差別だとして削除されるにいたった歴史などなど。ろう者とデフ文化をめぐる話題が、ここにはいろいろ盛りこまれています。

「コーダ(Coda)」や「日本手話」と「日本語対応手話」等初めて知る内容も多く勉強になる事も多いですが、何より自分のスタンスを決める事を求められる中で、双方の意見を鑑みながら繋いで行こうとする部分に感動しました。

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18.おいしくて泣くとき

貧しい子どもたちに無料でご飯を提供してくれる大衆食堂の息子心也。
中学3年生の彼の同級生の夕花も貧しい家庭のためこの食堂の「こども飯」の世話になっている。小学生の時に母を亡くしている心也はこの夕花に同情的で何かと精神的な支えになっている。夕花が義父の暴力に耐えかねて家を飛び出す時も心也は一緒に海に連れて行ってやる。
ここでの二人の幼い初々しいまでの会話や行動は胸を打たれる。やがて夕花は遠くに引っ越してしまう。

一方、もう一つの物語が並行して描かれる。
喫茶店を経営するゆり子と主人のマスター。ここもこども飯を提供しているが、経済的に苦しいうえに、暴走車が店に突っ込んできて経済的な負担に苦しむことになる。だが、ここでちっちゃなしかし重要な人生の奇跡が起きる。
作者はこの奇跡を読者に覚らされないようにちょっとしたトリックを仕掛ける。
恵まれない境遇の子どもたちが最後に出合う奇跡。
物語全体を温かい雰囲気と愛、人情が支配していて、読んだ後に無条件に自分の心に無限大の温かい気持ちや優しさ、愛をもたらしてくれる、そんな物語。

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19.罪の声

昭和における未解決事件の筆頭ともいえる「グリコ・森永」事件をベースに、事実とフィクションを巧妙に織り交ぜて作った、実に読み応えのある作品でした。どこまでが真実でどこからがフィクションなのか、分からないといえば本当にわからなくなるような、見事な構成。

最後の鳥居の言葉に、元新聞記者であった筆者のプライドを感じることができたし、その「記者としてのプライド」が、リアリティを増幅させた結果、まさに事実と見紛うほどの本作品を産んだといってもいいでしょう。

特筆すべきは、なんといっても、実際に事件で使われた「子供の声」に焦点を当てたこと。
その当事者たちが現在、どうしているかに焦点を絞ったことで、光を歩む俊也と闇を歩むの聡一郎に、最後まで心を揺さぶられます。

たしかに私たちは、被害者ばかりに目が行くけれど、加害者の親族にまでは考えが及ばないことが多いのかと思います(この事件においては知らずと犯罪に加担していたことになるが)。彼らは重たい十字架を背負い続けながら、生きていかなければならないという側面も、現実として見落としてはいけないと自戒しました。

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20.告白

主人公熊太郎の思弁を通し、ここまで人の心理のひだに分け入って掘り下げて、追いかけて捕まえて逃がすまいともがいてもがいて、周到に執拗に緻密に、言葉にならない心の深層を言葉で表現しようと悪戦苦闘する執念と情熱は、ドストエフスキーに通じるものがあるな~と思い当たりました。

これはまさしく心理小説の金字塔だと思います。言葉の力に圧倒されます!コテコテの河内弁で表現した作者の才能にも圧倒されます!ぶっ飛んでいても、端正でなくても、文学ってこういうことなんだなと、強烈なパンチを食らいました。

「人はなぜ人を殺すのか」
河内十人斬りを描いていますが、十人斬りよりも最後の殺人が問いかけてくるものに、本当の「人はなぜ人を殺すのか」の深層があるように感じました。斬った十人と違って、最後に殺した1人との間には、世の中の理不尽や熊太郎の劣等感、強烈な自意識が大きく介在していたとは思えません。それでも殺してしまうほどの孤独や絶望がなぜ生まれてしまったのか?本当の伝わらない辛さ、分かり合えない悲しみが、この最後の殺人で示されているのだとしたら辛すぎる。人の心とは、言葉とは、コミュニケーションとは何なのか?熊太郎の最後の告白の主語は何だったのか?ずっと気になって知りたくて何度も読み返すことになるんだと思います。そこを見込んで、重苦しい内容でも爆笑あり涙あり、義理人情の浪花節も炸裂するエンターテイメントに仕上げてくれたのかな。

極道の人殺しの話でありながら、その心の在り方には彼らを極道と呼ぶ者達よりも汚れのない何かがあり、哀しい人間賛歌のようになっていることにも感情を揺さぶられます。分量の多さは中身の濃さ。読書好きを夢中にさせること間違いなし。

テーマ、文体、感性、世界観など、何を挙げても稀有な読書体験であり、文学への認識そのものを新鮮にしてくれた一冊であったことに最大級の賛辞を捧げたいです。そして翻訳しても絶対に伝わらないであろう日本語の面白さ、奥深さ、豊かさ、美しさ、音楽性、抒情性、独創性を、日本人であるがゆえに堪能できた自分は本当にラッキーだと思えた一冊でもありました。

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おわりに

いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。

その他書籍も紹介しております。
宜しければご覧ください。



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