小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作短篇小説20選
皆さんこんにちは
今回は今まで読んだ短篇小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
※この記事ではamazonアソシエイト・楽天アフェリエイトリンクを利用しています。
1.紙の動物園
収録されている作品が素晴らしすぎて一気読みがもったいなく、1日1作品と決めてちびちび読んだ。
宇宙開発、人類の進化、歴史改変、バイオテクノロジー、異文化交流、サイバーパンク、スチームパンク、ほとんどのジャンルのSFを読むことができる。
どれもが1級のSFで、素晴らしい。
折り紙というオリエンタリズムと、紙の動物が命を吹きこまれるマジック・リアリズムの組みあわせが絶妙な表題作。
タンパク質の組成と、古代の結縄文字をからませた現代と過去のめぐりあう物語「結縄」。
異星に降りたった女宇宙飛行士と、現地人の恋愛をバクテリアがつなぐ「心智五行」。
スチームパンク妖怪譚(←こんな世界観は初めて!)の「良い狩りを」。
センス・オブ・ワンダーを感じさせる短編が好きなかたなら必読の、完成度の高い逸品です。
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2.バナナ剥きには最適の日々
知的快楽という言葉があるが、円城塔ほど知性の快楽の深さを知らしめてくれる作家はいないだろう。
自分語りとうんちくと思考実験と、それらに冷や水をかける読書感想文みたいな唐突なユーモア。
円城塔と他の作家を隔てる、これらの熱のこもらないやりとりが不可解な設定をさらにねじれさせる。
かと思いきや読み終えてみると、普遍的な青春ドラマや思い出話だったような気もする。
この「残らなさ」がある種の人々にとってはたまらない。
かくいうぼくもその一人です。宇宙人を探索するために送り出された衛生の妄想とひとり言を描く表題「バナナ剥きには最適の日々」などがいい例だろう。
我々は未知を追い求める存在であるが、現実がその様子を冷笑する。
未知ってなんだろう、わからないってなんだろう。
そうした紙にもならない疑問を小脇に抱えて現実に生きている。
そうした瞬間にふと円城塔を読んでみる。
すると、「わからない」ことそのものがそこに姿を表す。
読書の最中僕らは理解不能ななにかと向き合い格闘し、わからないまま読み切り、結局なにも残らなかったりする。
メッセージとかも特にない。なぜ残らないのかそれ自体もよくわからない。合理的に片付けられないような、かといって合理以外の何物でもない文章と対峙して見えてくるのは、なぜだかそれを冷笑しきれない現実だ。
ぼくはそれがたまらない。
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3.ZOO
「Zoo」は、まさに多面性を持つ乙一のそれぞれバラバラな世界感の作品レパートリーをいっぺんに見ることが出来る便利な一冊。
少しおかしな世界の中に生きる少しおかしな人々、突然おかしな世界に連れて来られてしまった普通の人々、普通の世界の中に生きながら段々おかしな方向へとずれていってしまう人々、普通でありながら自ら生み出した異常な状況に苛まれ苦しむ人々。
作品世界感のレパートリーは豊富で、誰でも一つくらいは好きなタイプの作品を見つけることが出来るのでは?
しかしそのバラバラな種類の人々はそれぞれ皆、必死に生きようとしている。
そのために考え、選択し、そして選んだ選択肢によってそれぞれの結末を迎える。
破滅、犠牲を払っての生還、自らが守り抜いた命を、与えられた命を生きていくこれからの希望。
この一冊は生きるためのそれぞれの選択と結末と生き方を見事にバラバラに描いている。
多彩で多面的な、まるで別々の作家が寄せ集めて書いたアンソロジーのような作品。
これが皆全てたった一人の作家が書いた作品だと思うと本当に何なんだこれはという感覚。
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4.神を見た犬
たとえば、それは「種」のようなものである。
ごくごく小さなものなのだけど、それが一度地面に落ちれば、いろいろなものを吸収して成長していく。
日常の不安や恐怖もまた、おそらくそのようなものなのだろうと思う。
つとめて平和に見えるけれど、小さなことをきっかけとして、じわじわと広がっていく。
おすすめは「コロンブレ」「七階」「神を見た犬」「戦の歌」。
「コロンブレ」は、恐怖のあまりに人生を棒にふってしまい、「七階」は日常の「まあいいか」という惰性の怖さを改めて思い出させられる。
22編の短編に描かれる幻想世界は、足元に寄せては返す波のように、じわりと忍んでさらりと引いていく。
きわめて現実的なことを、ちっとも現実的でない世界感で描き出すブッツァーティの世界を、いろいろな角度から楽しめる。
本作を読んでもし気に入れば、長編「タタール人の砂漠」もおすすめ。
幻想世界のスケールがぐんと広がって、静謐さが深みを増している。
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5.南極点のピアピア動画
よくわからないけどなにかとてつもなくおもしろいことが始まったんじゃないかと気付いた時の興奮、
その先がどうなるのか予測できない、見返りなどなくてもとにかく自分も何かやりたくなる。
そういう感覚を味わったことのある人は、この小説を読んでその時と同じ気持ちを追体験するかもしれません。
未知のテクノロジーに出会って衝撃を受け、眠れずに朝までネットの情報を追い続ける。
呼ばれてもいないのに凄い人がどんどん集まってきて、予想もつかないおもしろいことをやり始める。
日に日にニュースが生まれて、ネットから片時も目が離せない状態が続く。
これからいったい何が起こるんだろうという、言葉では言い表せないあのワクワク感。
この話を読んで、私も初音ミクが発売されてから数か月間の熱い空気を思い出しました。
あれをリアルタイムで体験した人は幸せだと思います。
夢のあるSF小説です。
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6.逆ソクラテス
小学生たちが大人(担任の先生)を諭すという物語。
少年たちの日常を冒険譚にしたような作品。
個人的に「逆ワシントン」が揺さぶられた。
伊坂幸太郎の短編集には欠かせない、物語同士の繋がりがたまらなく良かった。
「わぁこの人はあの時のおおお」と最後は特にうるっときてしまった。
大人へ一歩一歩近づく「僕」が本来持っている「純真」な気持ちと、新しく体得していく「大人の常識」との間で成長していく姿。
また、大人でも、うまく説明できない善悪(なぜ、いじめはよくないのか。止めさせるにはどうしたらよいのだろう?)に、「僕」なりの判断をしていく姿。
遠い昔の子どもの頃の自分の気持ちを少しずつ思い出しながら、楽しく読ませていただきました。
人として生きる上で大切なことが詰まった1冊です。
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7.失はれる物語
表題作を含む全8つの作品を収めた短編集。
全編に作者の温かい眼差しが溢れている。
各編の主人公は女子高生、会社員、小学生、高校生と多彩だが、いずれも過去・現在に負い目、疎外感や傷を抱えている。
これを時にはSF的技巧を駆使しながら、表題とは裏腹に、「生きる事の希望」の物語へと変貌させている点が作者の手柄であろう。
ユーモア風味を強調した「手を握る泥棒の物語」、ミステリ・タッチの「マリアの指」も中々読ませるが、これも主人公の再生の物語ともなっているのである。
奇想とも思える状況設定の巧みさとそれを「生きる事の希望」の物語に繋げる巧みさとが玄妙にマッチしており、作者特有の雰囲気を醸し出している。
主人公(状況)に合わせて文体は異なるが、テーマの一貫性が心地良い。
世代を選ばずに支持されているのがとても良くわかる。
そして「平易」と「簡潔」がいかに「読ませる」ことの前提として必要かもとても良くわかる作風だと思うし、それにとても長けている方だと思いました。
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8.アイの物語
舞台は遠い遠い未来の日本。
人類が衰退し、創造主である人類に代わってアンドロイドが文明を支配する時代。
ある日「僕」は食糧を盗む途中で女性型アンドロイド「アイビス」に捉えられる。
アイビスは捉えた「僕」に対して洗脳や拷問をする様子は見せない。
代わりに「僕」に物語を聞かせたいという。
それは6つのフクションと、1つの「真実の物語」だった。
アイビスと「僕」の会話が中心となっているインターミッションの間に、アイビスが語る短編の物語が挟み込まれているという形式。
なのでこれは短編集ではく、最終的には大きな一つの物語を織りなしている。
「僕」になったつもりで、寝る前に一日一話ずつ読むと、より気分が出て面白さが倍増するかも知れない。
「さあ、今日はどんな話を聞かせてくれるんだいアイビス?」くらいのノリで。
短編として単体でも面白いと思ったのは、第5話「正義が正義である世界」である。
不思議な違和感を覚えつつ読み進めているうちに、徐々にタネが明かされてゆくところが面白かった。
また、第6話「詩音が来た日」で詩音が展開する「ヒト論」については、反論する隙が無いと感じた。
本当に我々人間はみんな、程度の差があるだけの認知症なのかもしれないと思わせるくらいの説得力があった。
9.チルドレン
陣内という変わり者が出くわす事件、彼が起こす奇跡が5つの短編で構成される。
芥川龍之介の「侏儒の言葉」、トイレの落書き集、ジャズ、パンクロック、盲導犬(相当な犬好きだ)…、小道具も相変わらず伊坂氏らしい。
事件の組立にも唸ってしまう。
行員がぐるになった銀行強盗、狂言の誘拐事件、女子高校生のあわよくば恐喝…。
脇を固める登場人物も魅力的だ。
端正な全盲の青年、屈託ないその恋人、陣内に振り回されっぱなしの友人、同僚。
しかし陣内という男、すごい男だ。
世の中の常識は彼には通じない。法律だって気にしちゃいないだろう。
銀行強盗のどさくさに紛れてカウンターの金をくすねたり、人に喧嘩を吹っかけたり、なぐりつけたり。
こういう男だから、奇跡が起こせるのだ。自分中心に世界が回っていると思っている人間だからこそ。
回りを気にし、空気を読むのに汲々としている現代人よ。
奇跡は起きるのを待つもんじゃない。起こすものなんだ。
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10.あなたの人生の物語
表題作は異星人とのコンタクトっていうSFなんだけど、これは「時間」と「愛」についての、すごくパーソナルな物語だった。
もし未来のすべてが見えたら、悲しいことも嬉しいことも全部わかっていたら、自分はどうするだろう?
主人公の選択を思うと、涙が出そうになる。
読み終わってから、自分の人生も、これから起こることも、全部ひっくるめて愛おしく思えた。短いお話なのに、余韻がすごい。
自分たちの住む現実世界とは全く違う概念の世界を堪能出来ました。
いくつもの新しい世界観を提示しているので、自分の世界が拡がっているように感じました。
全て読み終えたときの満足感は高いです。
絶対に読んで後悔しない1冊です。
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11.息吹
人間に扱いきれない技術、道具が出てきたときにそれをどう扱うか人の心の在り様が描かれている。
AI、テクノロジーが進歩しても人間は進化も進歩もしない。
少し哲学的な話も多くそういった話が好きな人にはオススメ。
これほど儚く美しくしかも壮大なまでに物語を紡げる作者の力量には驚嘆せざるを得ません。
寡作であるというのも無理はない。
一作一作に魂がこもっているのもむべなるかな,という印象。
若い時に読むのと40代、50代になってから読むのとで作品の感じ方がまた変わってきそうで面白い。
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12.ボッコちゃん
話の内容はかなり幅広いので、どうしても好みが分かれるのだが、個人的には「マネーエイジ」が一番面白く感じた。
お金が一番重要な価値観となる社会では、子供は「わいろ計算機」の夢をみる。
それ自体はかなり誇張された物語だと思うけれども、自分自身をふりかえれば「できるだけ楽な仕事をして、あとは楽しいこと(ゲームとか)して生きていきたい」とか考えていて、それはバブル崩壊後の経済的に停滞した、「仕事」への価値観の薄れた世の中だからこその夢だったような気もするし、十分に歪んでいるようにも思う(しかも今でも考え方はそんなに変わらない)。
自分の子供は将来どんな夢をみるのかしらと思えば、楽しみでもあり、不安でもある。
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13.夜市
表題の「夜市」と「風の古道」の2編、どちらも良かったが、自分は「風の古道」の方が印象的。
それは、自分がウォーキングが好きで、しばしば知らない小さな路地に何となく誘われて入り込み、意外な場所に出てしまった、あるいはなかなか出られなくなってしまった経験があるからだろう。
自分の町にもその昔の用水路に蓋をした細い散策路があり、自転車も通れないから歩く人も少ないのだが、知ってる人は巧みに抜け道に利用している。どこまで続いているのか行ったことはないが、喧騒あふれる表通りからちょっと外れると、人影少ない異世界が、意外なほどの身近に存在するのだ。
散歩好きが過ぎて、迷子になった経験のある方々なら主人公に容易に感情移入出来るはず。
迷子経験がなくとも、小説の最後の5行には共感出来るだろう。
いやむしろ、主人公の彷徨の物語は、ラスト5行のためにあったんだなぁ・・・。
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14.スーツケースの半分は薔薇の名前
青いスーツケースをバトンのように、主人公が入れ替わり立ち代わりリレーのようなストーリー展開ですが、共通していることは、「旅に出かける」= 自分と向き合うキッカケの一つで成長することの最初の1歩 という点です。
8章の女子旅で終わらず,9章のあのお話で締めくくられているのも、お話に深みが出ているなぁと感じました。
お涙頂戴ではなく自然と鼻がつんとしてホロリときてしまいました。
読後感が爽やかで晴れやかな気持ちになりました。
私も旅好きですが、やはりスーツケースは旅先では相棒であり、心強い味方という点では、とても共感ができました。
読んだ後、旅に出たくなる一冊。
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15.薬指の標本
「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の二編を収録した短編集。
前者は、頼まれた(、そして2度と顧みられることがない)ものを何でも標本にする標本室の受付係の女性が、標本技師に徐々に吸い寄せられ(恋といっていいだろう)、身体を侵食されることを受け入れる話。
後者は、外界と隔絶された持ち運び可能な六角形の、その中にこもってただ独白するための小部屋が近所にやって来たことを知り、その不思議な心地よさにやみつきになり、ある日小部屋が消え去ったことにとまどう女性の話。
現実には存在しないが、いかにもありそうな、現代人の思いをすくい取るサービス業の想定が奇抜で面白い。
二編とも主人公の女性がそのサービス業およびサービス提供者に依存していく、心の揺れが繊細なタッチで描かれる。
行間に漂う静謐・透明な雰囲気は著者のファンにはたまらない。
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16.晩年の子供
静かに、音楽がやさしく室内に鳴り響くように、そして時に鋭く、痛いくらいに率直に私に語りかける物語。
山田さんが小さい頃から見てきた物事を、きれいにきれいに、細かく織り込んでいます。
筆者の物事を見る目はふつうの人より温度が低いような気がします。
それは単に醒めている、という意味ではなくて、とにかく冷徹に観察者たるのです。
さまざまな種類の人間を観察し、分類し、好きなものとそうではないものに分ける、時には自分の感情さえも地図のように広げて、分析してみる。「あ、ここにひどい自意識があるぞ」というように。
私たちは普段は自分のそれに気づきません。
それに目を向けようとはしません。けれど、山田さんの現実の観察記録断片のようなこの小説に、きっと、気づかされるのだと思うんです。
人や自分の汚さや愚かさ、そしてその美しさに。
私はこの小説がすごく好きです。特に作者の描く、「こまっしゃくれた」女の子の、幼い自意識の様子に、非常に共感します。
そしてそれと対照的に置かれた、自分に忠実で、自意識に振り回されない人たち(例えば「海の方の子」の哲夫くん、「花火」の姉など)が、羨ましくて、とても素敵で、できた人たちだなぁ、と思うのです。
だれもの心の地図に、1つはきっと呼応する素敵な短編集。
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17.阪急電車
阪急今津線を舞台に、電車内で出会う人々の物語が描かれています。
電車の中でがやがやうるさいおばさん、ヤンキー男から離れられなかったり、彼氏を寝取られた女性は世の中にたくさんあふれていて、そんな経験を実際に経験したり友だちから愚痴を聞かされることは、よくあることかもしれない。
そこをスッキリする経験やスカッとする話を聞くことはなかなかない。
そこがやはり奇跡であり、そんな話が展開するのがなんとも痛快かつほっこりする。
短い乗車時間の中で、登場人物たちが少しずつ前向きになっていく様子が心に残ります。
日常の中の優しさに気づかされ、読後に心が温かくなる一冊です。
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18.笑うな
笑うなと言われたら、反対に笑いたくなるのが、人間の悲しい性ではないじゃないでしょうか?
パンドラの箱しかり、鶴の恩返ししかり、禁断の木の実を食べたアダムとエヴァしかり、黄泉の国から連れ戻すまでイザナミの姿を見るなと言われたイザナギしかり・・・。
「こうするなよ」と釘を刺されても、人間も神々も過ちを犯してしまうのですから・・・。各
国の伝説や神話に共通しているのも面白く、また悲しく感じられます。
表題作の「笑うな」の他にも、思わず顔をくしゃくしゃにしてしまうほどおかしなツツイワールドがてんこ盛りです。買ってソンはないですよ。
ただ一言注意なんですが、通勤・通学列車の中では極力読まないでくださいね。
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19.その日のまえに
本書は、死をテーマにした短編集でありながら、単なる悲しみの物語ではなく、生きることの意味や、大切な人との別れにどう向き合うべきかを静かに問いかける作品です。
それぞれの短編が独立しつつも、ゆるやかにつながっており、一冊を通じて読んだときに、まるで一本の長い物語を読んだかのような深い余韻を残します。
物語に登場するのは、余命宣告を受けた人、その家族や友人、そして死を見送る側の人々です。
死に直面したとき、人はどのような感情を抱くのか、どのように大切な人と最後の時間を過ごすのか――そうしたテーマが、静かでありながら心の奥底に響く筆致で描かれています。
印象的なのは、それぞれの短編が単なる悲劇ではなく、どこか温かさを持っていることです。
死は常に絶望をもたらすものではなく、時に生を際立たせ、大切なものを再認識させる契機となることを、本書は繊細に示しています。
登場人物たちは皆、悲しみや喪失感に押しつぶされそうになりながらも、それぞれの方法で前を向こうとします。
その姿があまりにもリアルで、読んでいるうちに自分の人生や大切な人との関係を改めて考えずにはいられませんでした。
文章は決して感傷的になりすぎることなく、抑えたトーンで綴られています。その分、読み手の心の中で物語がじわじわと広がり、ページを閉じた後も登場人物たちの言葉や表情が心に残ります。
特に、登場人物たちがふとした瞬間にこぼす言葉には、日常の何気ない美しさと、人生の儚さが詰まっていて、何度も読み返したくなるような印象的な場面が多くありました。
そして、文庫版のために書かれたあとがきは、作品をさらに深く味わうための大切な一篇となっています。
著者自身の恩師との思い出が綴られ、それがこの作品の根底に流れるテーマとどのように結びついているのかが語られることで、物語の背景にある「死と向き合うこと」「別れを受け入れること」の意味がより明確になります。このあとがきを読んだことで、本書全体のメッセージが一層胸に迫り、深い感動を覚えました。
本書は、読んでいる最中も、そして読み終えた後も、強い喪失感と悲しみに包まれ、涙せずにはいられない作品です。
しかし、それと同時に「生きることの大切さ」を静かに教えてくれる本でもあります。
死は誰にとっても避けられないものでありながら、普段は深く考えずに過ごしてしまうものです。
しかし、本書を通じて、愛する人を失うことの意味や、その先にある希望について、あらためて向き合うことができました。
大切な人を思いながら、生と死について考えたいときに手に取るべき一冊です。涙なしには読めませんが、読み終えたときには、きっと温かな気持ちが胸に残ることでしょう。
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20.スモールワールズ
本作に収められている『魔王の帰還』には、途轍もない女性が登場します。
鉄二の姉は、身長188cm、スニーカーのサイズ28cm、総合格闘技(地下プロレスだったかも)からスカウトされたことのある、岡山弁丸出しの27歳。名前は真央だが、あだ名は「魔王」。
その魔王がトラックドライバーを止め、突然、離婚すると出戻ってきたのです。
魔王のおかげで、高校2年だが、教師や同級生たちから遠巻きにされている鉄二は、なぜかクラスの中で浮いていて仲間がいない菜々子と言葉を交わす機会に恵まれます。
読み進めていくうちに、鉄二が教師や同級生たちから遠巻きにされている理由、菜々子がクラスの中で浮いている理由、そして、魔王が出戻ってきた理由が明らかになってきます。
読み終わった瞬間、本当に、久しぶりに、涙が滲んでしまいました。
これぞ、読書の醍醐味と言うべきでしょう。
魔王に出会えた幸運に感謝!
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おわりに
いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。
その他書籍も紹介しております。
宜しければご覧ください。
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