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小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作20選⑧

皆さんこんにちは
今回は今まで読んだ小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
※この記事ではamazonアソシエイト・楽天アフェリエイトリンクを利用しています。


1.冷血

綿密な取材に基づいたノンフィクション作品で、作品の形態からも、そうとうかがえる。
本作品のモノクロ映画「冷血」は、犯行場面や死刑執行場面を、派手なストーリー性をもって描いているが、本原作は、それを行わず、取材結果や事実のみを重視している。
作品が描くテーマは、非常に重い。
二人の犯人の、驚くべき残虐性と、死刑の是非も問う。

死刑の是非に関しては、結論を述べる自信は無い。
ただ、二人の犯人には、更正の余地は、全く無さそうではある。
本文が述べるには、二人の犯人は、何ら良心の呵責も無く殺人を遂行出来る「才能」を持つらしい。
しかし、犯行そのものは、綿密に行ったつもりらしいものの、実は、非常に浅はかだ。
二人には、その「才能」の程度に、かなり差がある様だ。

それにしても、作品は、こんな身の毛もよだつ犯行が行われたという事実を、極めて淡々と描く。
小説にまとめられられる過程で、可能な限り、感情論を排除するという、著者のフィルターがかかっている。
この事によって、多様な問題が、くっきりと、浮き彫りにされる。
人生とはこういうものだ、ということを突きつけてくるパワーのある作品である。
自分はおそらく一生忘れないだろう、この本を読んだ日のことを
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2.ギケイキ

本書の語り人は源義経本人。
自身の生涯を語るその語りがマーチダにしかできないオリジナルでぶっ飛んでいる。
たとえば宿屋で強盗に襲われそうになったときは
「死ぬ際もやはりファッションというものは大事。錯乱して暴れたシャブ中のようなブリーフ姿で死ぬのと、それなりに粋な格好で死ぬのとでは後世の評価というものが変わってくる、(中略)なので私は素早くメイクもした。髪もすばやく整えた。それって武士?ああ、武士だ。戦いにおいて武士はいつだって現実主義だ。」
てな具合。

また登場する周辺人物がマーチダ氏の手にかかるといずれも爆発的なキャラとなる。
たとえば、義経が向かった先は超バブリーな藤原秀衡。
藤原秀衡は、風邪をひいて寝ていたところ義経が訪ねてきたとたん
「すっげぇ。起きます起きます。衣服、持ってきてチョーマゲ」と言ってムクムクに起き上がる。
義経を藤原秀衡のもとへ案内した商人吉次宗高は、藤原秀衡からとてつもない褒美をもらうと
「あひゃーい。あきゃーん。」と異様な声をあげ、全裸になって意味の分からない踊りを踊り出す。
そのほか、軍事マニュアル「りくとう」を秘蔵している鬼一法眼とその姫君。
弁慶同様義経の家臣となる伊勢三郎義盛。
強盗の由利太郎などなど、どのキャラも尋常ではないのだ。
 
また100ページをさいて語られる武蔵坊弁慶の生い立ちのパートもべらぼうに面白い。
弁慶が義経の家臣となるくだりでは
「駄目よ。駄目駄目。だってそうでしょう。いま僕たちはあんなにいい感じだったじゃないですか。」
となぜかオネエことばになる弁慶。
というわけで、本書は義経が「平家、マジでいってこます」まえのお話である。
ぐんぐんにおもっしょいよ。
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3.煙か土か食い物

一ページ目いや一行目だけでも読んでみる価値はある。
文体が独特さを極めているので他の作家とは違った読書体験ができること請け合い。なので一行目からこれは!と思う人はいるはず。脳内垂れ流しのような文章なのだが、ただ勢いだけで垂れ流しているわけではなく、理知的な思考の垂れ流し。
物語のベースはあくまでミステリなので、そうでなければ推理が出来ない。粗暴だがインテリジェンスを感じさせるアメリカ勤めの医者である主人公が故郷の福井県西暁町で起きた事件を解決するために帰国するところから話が始まるが、ミステリ部分も現代の海外ミステリを強く意識しているのがわかる。素人探偵が駆けずり回り、暴れる。ただし日本の新本格ミステリの系譜があくまで基盤にある。
ある種の人は心臓をわし掴みにされるような「切なさ」が最大の特徴。
よく言われている、暴力も、文体のスピード感も、ミステリ仕立ても、福井弁も、全て「愛」を、「切なさ」を語るための道具に見える。
(とはいえ、切っても切り離せないところが舞城なんだが)
舞城は、愛を、暴力で、文体で、ミステリで、福井弁で、語る。

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4.青が散る

1982年に書かれた青春小説という事だが、40年以上たった今読んでも瑞々しく輝いていた。
時間によって劣化する事なく、古典として読み続けられる名作だと思う。

その面白さの最大の要因は、登場人物が非常に魅力あふれてるという事だと思う。
主人公の遼平だけでなく、金子、貝谷、安斎、ポンクといったテニス部の面々、夏子、祐子といった女性陣。
さらにはガリバー、瑞山、木田といった人間の駱駝と呼ばれる人達。
それぞれが、それぞれの悩みを抱え、青春時代をおくっている姿が魅力的で、どの人物もその後の人生が気になってしまう。

数多い魅力的人物の中で、僕が一番気に入ったのは、辰巳圭之介という老教授だ。
辰巳教授が授業をサボった遼平を諭す言葉で
「若者は自由でなくてはいけないが、もう一つ、潔癖でなくてはいけない。自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか。」
というのがあり、遼平はこの言葉が胸にしみ、以来この老教授が好きになるのだが、実にいい言葉だと思う。
人は年を取るにつれ、世間的なしがらみや打算で動く事が多くなり、真っ直ぐな潔癖さを失っていく。
潔癖である事はだんだん難しくなってくるのだ。
自由と潔癖こそ青春の特権だとこの老教授は遼平に教えたが、僕の心にもこの言葉は響いた。
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5.野火

本作は戦争文学に分類されますが、そもそも既に戦争の体を成していない状況から始まります。「戦争」と言いながら、敵との戦いや争いはほとんど描かれません。作戦は存在せず、組織の命令系統は完全に崩壊していて、極度に腹を空かした男たちが食糧を求めている「だけ」です。

肺病を患った田村は、中隊からも病院からも見捨てられて、熱帯の広大な原野にひとり放たれます。六本の芋を手にして、彼はあてもなくさまよいます(と、書くのは不正確で、彼には死という明確な「あて」があります)。

「名状し難いものが私を駆っていた。行く手に死と惨禍のほか何もないのは、既に明らかであったが、熱帯の野の人知れぬ一隅で死に絶えるまでも、最後の息を引き取るその瞬間まで、私自身の孤独と絶望を見究めようという、暗い好奇心かも知れなかった。」(前半部より)

戦争を描くというよりも、共同体に棄てられた人間の行く末を描いているのがこの小説なのかもしれません。国家に棄てられ、仲間に棄てられ、神に棄てられる。そんな状態に陥った者はどんな人間性(または非人間性)を見せるのか・・

そして、「戦争を描くというよりも」と書いた上の段落に自分でツッコミを入れると、むしろこの「共同体が個人を見捨てる」ことが、辞書的な意味ではすくい取れない、戦争の本質なのだと思いました。

「若者を戦争に行かせる国」はコワいかもしれませんが、もっとコワいのは、共同体の存続を目的とする戦争は、若者だろうが何だろうがその成員を見捨てる、という社会的/精神的な暴力性かもしれません。野火を読み返して、物理的な暴力や飢餓と同じくらい、この暴力性に恐怖を感じました。
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6.箱男

人間を描写する上で最高の部類ではないだろうか。
箱男という見られることを拒否した人間を軸に、見ることと見られることとの関係性を安部公房一流の観察力と内面から滲み出す知性の輝きをもって表現してるのが、この作品。確かに、この作品を傑作とみなせいという意見もあると思う。ラストが、あまりにも迷路になっているからだ。だが考え抜いて突き詰めれば人間の思考は迷路みたいなものなんだから結局、当然の帰結というわけだ。
ストーリーは上手く説明できないのですが、全体的に無機質で、複雑で、都会的で、灰色で、その中で物が蠢いている感じが漂っていて、しかもページの途中で唐突に作者安部公房が撮った写真が前後の脈絡関係なく何枚か挿入され、そういったことが本書を小説ではなく何か別の無機物的存在に感じさせてくれます。

一度読了してからは内容が何であったのか理解できたとは言えないものの、この存在感が頭から離れたことは一度も無く、印象深い本を一冊選べと言われれば、少なくとも日本の小説の中からはこれを選ぶでしょう。
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7.それからはス-プのことばかり考えて暮らした

はじめにサンドイッチが食べたくなり、次にスープが飲みたくなってしまう。
おいしい料理というものは、言葉からだけでもおいしさを発してしまう。
まるで、本から湯気が立ち込めて匂いや音が辺り一面に充満しているかのように錯覚してしまうのだ。

ハム・きゅうり・たまご・じゃがいものサラダのサンドイッチ。
えんどう豆、かぼちゃ、名なしのスープ…。
次から次へと料理が出てきて、おいしそうに食べる人が登場する。

毎日サンドイッチを食べ、毎日スープのことばかり考えて暮らす主人公。
特別なことは何も起きないが、そんな人生もあるのだと思えてしまう。
それに、そんなゆるやかな生き方をしながら、幸せを手にする方法もあるのではないのかなと、この物語を読んでいると思えてしまうから不思議だ。
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8.とりつくしま

自分がもし今、突然天に召されたとして、物に生まれ変われるとしたら。
とりつくしま係にそんな風に問いかけられたりしたら、果たしてどう答えるだろう。彼女が日中、画像処理の仕事で覗いているパソコンの画面だろうか。
若い頃、失恋した。どのくらいその人を好きだったかと言えば、その人そのものになってしまいたいくらい好きだと感じていたのだ。
この連作短篇集のなかに『名前』という作品がある。主人公はホームレスの老人。彼は、大好きな図書館司書の小雪さんのネームプレートに生まれ変わった。
ネームプレートだから、愛しい人の顔を見ることができるのは、彼女が昼休みに歯磨きしながら、鏡に写っている時だけ。それでも、彼女のふくよかな胸を感じていられるだけで嬉しいのだ。
ホームレスの男が抱く「好きな相手そのものになってしまいたい」という願望は「命を持たない物にしか生まれ変われない」規則からは逸脱していた。
それにしても、女性の作者に、こんなに男の気持ちがわかるのだということに少し驚いている。すごい。
東さんの歌集も詩集も随筆も読み、これで小説も読んだことになるが、散文はやさしい言葉を使っているのに巧いのだ。
『名前』には、嬉しい結末が待っていた。できれば生きて幸せになりたいとも強く感じた。
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9.パルプ

ストーリーや展開は大しておもしろいものではありません。
大抵酒を飲んでいて、誰かに会えば、そいつをぶちのめしているか、ぶちのめされているかです。
ですが読む人を物語のなかへ一気に引きずり込んでしまうような強烈な文体は飽きさせずにとてもおもしろく、
誰彼かまわずぶん殴って中指立てられたら中指立て返してさっさと立ち去ってしまうような主人公のはちゃめちゃな行動に惹きつけられてしまい、あっという間に読んでしまいました。

ブコウスキーを楽しんで読めるようになると真面目に文学を貫いたような装飾だらけの美文を読むのが退屈に思えてきます。
荒唐無稽な展開が起きてもこればどういう意味だろうか、とか難しく考えずにありのままを素直に受け入れて読めばとても楽しくなります。
文学的には〇世紀の必読書みたいなものにランクインもせず評価されないのもわかりますし、こんなもの低俗だと馬鹿にする人がいるのもわかります。
ブコウスキーは大好きな作家のひとりになるか、大嫌いな作家になるかの極端さがあります。
私はこんなに面白い小説に久しぶりに出会えたと思えました。
訳に関しては難解な語句もなく、この方の訳をもっと読みたくなる非常に読みやすい現代を生きている文でした。
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10.陰陽師

私はもともと怪談物には興味が有る。小泉八雲の作品は大好きだし、漱石の夢十夜などにも、心が惹かれる。しかし、『陰陽師』で描かれる世界は、怪異を描いていても、これらの作品とは全く違った雰囲気を持っている。
小泉八雲の『怪談』は、基本的に、人生の哀感に溢れている。中には、嫉妬によって人を殺す亡霊のような凄惨な話もあるが、物語の基本的な旋律は美しい哀調を帯びている。
『陰陽師』には、恐ろしい魑魅魍魎というべきものが満ちている。おどろおどろしいという形容詞がぴったりである。旋律としては、『怪談』とは全く異なる。ただ、この魍魎達は深い悲しみを背負った人間であったり、生物であったり、あるいはただの物であったりしながら、微かな哀調を響かせるので、どこかで『怪談』と通じる世界も持っている。
陰陽師安倍清明と親友の源博雅が力を合わせて難事件を解決していくが、この二人の個性も魅力的だし、二人の会話は慎重に読んでいくと、言葉の哲学に関わっていて、深い。
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11.総理の夫

原田マハという作家は、魅力的な人物を描かせると右に出るものがいないくらい抜群の才能を発揮する。
才色兼備で信念と誠実さと情熱の持ち主で日本初の女性首相となる相馬凜子、相馬財閥の次男として生まれながらも、鳥類研究に夢中で涙脆い夫の日和、日和の付き人で有能な富士宮さん、息子や嫁の凜子をバックでそっと応援する母、政界を影で操ろうとするハラグロこと原久郎どれも皆効果的に描かれている。
利権と既得権益にこだわり一向に変わろうとしない日本の政治を凜子は、次々と変革していく。消費増税、脱原発、社会福祉の充実など読者も応援したくなるような政策を打ちだし、国民の熱い信頼を得ていく。読んでいると凜子はマハの分身ではないかと思えてくる。これほど明確に日本の政治の現状と解決のための打開策を描ききっているところが並みの作家と違うところである。
「本日はお日柄もよろしく」で活躍する伝説のスピーチライター久遠久美をここでも登場させ、国民に向かって所信表明するところなど原田ワールド全開の作品といえるだろう。最後に凜子自身が子育てしながら総理を続ける決断をし、女性が安心して子育てをできる国を目指すところなど、心憎いまでの原田マハの構想力に完全に脱帽である。
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12.みかんとひよどり

近藤お得意のグルメ系ミステリ、と思いきや、ミステリかどうかというと微妙な小説です。
帯紙にも「美味しい料理ミステリー!」などと書いてあるが、これミステリーなのかなあ、という感じです。

メインの登場人物は、ジビエ料理にこだわりのあるフレンチの若手シェフと、山裾の小屋に住んで猟師を営んでいる不愛想な男。目次を見ると、ヤマシギのローストだの、若猪のタルトだの、食べたことないけどどうやら旨そうな話に読む前からパブロフ並みによだれが出る。

実際読み進めていくと、(一度も食べたことはないけれど)これでもかという感じの旨そうな描写におなかが鳴ってたまらない。
作中でも触れられているが、結局ジビエは食材が入手できるかどうかが肝になっているわけなので、日本の中途半端な街中では気軽に試すわけにはいかない。勝手に想像を膨らませつつ、どうしても食べたければ都内なのか地方都市がよいのか、その手の店を自分から探しに行かなければということなんでしょう。

さて本書のミステリ的な要素というと、猟師をやっている大高氏の謎めいた過去、というところだろうか。これがまた、人が食べて生きていく因縁というか、昨今の正義押し売りエコーチェンバーというか、うーんと唸らされる重さ。

このテーマを単なる美味しいお話にしてしまわないところが、さすが近藤の力量なんだと思いますね。偉そうに比べるべきではないのかもしれないけれど、個人的には西村京太郎の初期作品は自分は大好きで、もうその域を越えつつあるような、そんな気もする。
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13.嘘と正典

時間にまつわるSF6編を収めた短編集。
いずれも高度な理論を用いて丁寧に構築されている印象で、それでいて難解なこともなく、読み手をグイグイと引き込んでいきます。
物理学に疎い評者には物語内に出てくる理論がきちんと科学考証されているか判断つきませんが、そのあたりは著者の東京大学大学院総合文化研究科博士課程というバックグラウンドを信頼することにします。
どの短編も面白かったのですが、やはり表題作である『嘘と聖典』は共産主義という人類史に残る壮大な実験をなかったことにしようというプロットが非常にスリリングでした。エンゲルスの件は歴史的事実としても正しいようで学びにもなりました。
登場するギミック・人物・時代設定含めて冷戦スパイ長編が書けそうなところ、あえての短編。あえての静謐な結末。暑苦しくなりすぎず、クールに突き放しすぎる感じもない絶妙なバランスの筆致だと思います。
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14.それでも会社は辞めません

立場が違えば
仕事が違えば
見える視点や考えていること、価値観は全く違います。
そんな違いが軋轢を産み、生き辛くさせる。
特に派遣会社や会社でお勤めをされている方は感じることかもしれません。

だからこそこの本が伝えてくれる
「今いる環境に対して少し見方や感じ方を変えてみる」
というメッセージを是非受け取っていただきたい。
きっと生きるのが楽になります。

今あなたが憎くてしょうがない人も何か問題や葛藤があるかもしれません
家庭での問題があるかもしれない
コンプレックスがあるかもしれない
守りたい自分の正義等何かを守りたいのかもしれない
そんな自分に降り掛かっている問題を必死に隠しているかもしれないんです。

そこに想いを馳せてみてください
そうすると心が少し優しくなって
世界がちょっと暖かく見えるはずです。
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15.これはただの夏

2018年夏、テレビ局の下請け会社で働く45歳の「ボク」は、委託元テレビ局の社員ディレクター大関とともに、さほど親しいわけでもないカップルの結婚披露宴に出る。二次会では、新婦の友人である女性・優香と意気投合して朝まで一緒に過ごすのだが……。

再来年にはオリンピックが来ると、日本人の多くが無邪気に考えてい(2018年の)ひと夏の物語です。この物語では、同じマンションの見知らぬ隣人が部屋を自由に訪ねてきたり、病気の知人を手土産持参でぶらりと見舞いに行ったり、区民プールが当たり前の賑わいを見せたり、そして家族でもない人が手で握ったおにぎり弁当を風俗店内で頬張ったりします。
主人公と後輩がかわすこんな会話も、2018年当時であれば意味のないおしゃべりとしてやり過ごしてしまったものに違いありません。
「先輩、再来年の東京オリンピックのとき、俺ら何してますかね?」
「いまと一緒だよ。何も変わらないよ」
そんな当たり前だった「ただの夏」が、今から8年前の東京には広がっていた事実を思うと、遠い異世界を眺めるような気がして、心が沈みます。
つまり、類型的な登場人物たちが繰り広げる《ありきたりな物語》に過ぎない「ただの夏」を奪われた私たちにとって、このコンテンポラリーな小説は、おそらく今から10年後の読者には味わいつくせない苦味をもって今の私に迫ってきたのです。
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16.スカイ・クロラ

「すべてがFになる」の中に、こんな一文がある。
「「Time is money」なんて言葉があるが、これは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである」
「スカイ・クロラ」は、この一文を裏返しにしたところに生まれたような小説だ。
この作品の主人公は、子供のまま大人にならず、戦争によって誰かに殺されない限り死なない子供、である。彼等の間では、「いつまで生きるつもり?」といった会話が普通に交わされる。時間も生命の価値も、彼等にとってはさして貴重ではない。
主人公の、生と死と時間に対する考えは、子供から大人へなり、やがて死を迎える通常の人間である我々が、日常に埋没させて無意識に放棄してしまっている、生と死と時間の問題を躊躇なくつきつけてくれる。
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17.戦闘妖精・雪風(改)

久しぶりに、続きを読むのがもったいない、と思うSF作品に出会った。こんなことはウィリアム・ギブソンのニューロマンサー以来かもしれないな、と思っていたら、なんとどちらも1984年に上梓されていることが分かり驚いた。もう30年!も前に、ネットワークに神が宿る、という、当時のコンピュータの性能に照らせば荒唐無稽でありつつも、不思議なリアリティを感じさせたウィリアム・ギブソンの世界観は、CPUの性能向上や、インターネットの爆発的な普及で、もっとずっとリアルに感じられるようになってきている。

同じように、この小説で描かれる世界も、すでに各国でドローンの活用が現実化してきている今、そして無人機X47Bが空母に苦も無く離着艦できるこの時代において、不気味なほどリアルに感じられた。日本にもこんなすばらしい予言的SF作品が存在したことを知らなかったなんて…。

人としてのやさしさや尊厳を捨てきれない、しかし、意識的にまるでコミュ障であるかのように描かれる主人公のパイロット。そして雪風は生きるか死ぬかの瞬間に、彼の感傷を超えた合理的な判断によって、お互いの存在継続への最適解を実行する…。

娯楽SF小説としても十分魅力的だが、それだけではない。これからの時代、避けては通れない機械と人間との共存関係について考えさせる深い作品だと思う。
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18.森のなかの海

この小説は、起承転結があまりハッキリせずに、物語のスタートとゴールだけがある。
スタートは阪神淡路大震災だが、それを軸として物語が進むワケではない。
ゴールもあるが、そこに行き着くコトを物語の目的とする登場人物も、背景も用意されていない。
ストーリーの中には、他の小説に見る波瀾万丈も、あっといわせる展開もほとんど無く、シンプルと言うより、少し物寂しげなカンジさえする。
だが、実際の人の一生がいつも「起承転結」だけで流れるワケでは無いことを考えると、この著者の描く、どこか物寂しげな世界観は、もしかするとボク達が明日体験するかも知れない、
という迫真性に富み、フィクションであるにも関わらず、ボク達に生命の危機感さえも覚えさせる。
他の小説家なら、地震で亡くなった人々を、涙をできるだけ誘う文体で書くだろう。
女性の主人公:希美子の心の葛藤や憎悪をもっと強く書くだろう。
友情や信頼、努力や勝利、を溺れてしまうような美しい文体で表現し、読者を魅了するだろう。
だがこの本の著者はそうしなかった。
この小説は、著者の作った新しい世界観の中で成り立ち、
他の小説では決して表現できない、人としてのホントの有り様を如実に描き、「喪失した魂の復活」というわかりにくいテーマを見事に表現しきっている。
破壊や殺戮、勝利や敗北を強く描き、「桃太郎」のような勧善懲悪の延長でしかない現代の小説に疲れた人にオススメ。
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19.空飛ぶ馬

「謎」そのものも魅力的ですし、その謎の裏の人の悪意や好意、感情の渦に読者も触れ、主人公のわたしの潔癖すぎる繊細な心の揺れにも触れ、短編それぞれにまた味わいが違い、面白いです。

特筆すべきは短篇「砂糖合戦」。
喫茶店に入った女性たちがマクベスの魔女のように砂糖壺を囲み、次々と砂糖を紅茶に入れていく。
それも尋常のないスプーン7,8杯以上の沢山の砂糖を。
なぜ?
この面白いなぞかけと、その解決パートの鮮やかさ。短編そのものの後味と、本書全体を通した後味。

確かに謎解きものとしては、女子大生の私生活や文学知識などの回り道も多く無駄な情報はあるのですが、むしろその「無駄」な活写される生活部分や知を刺激する様々な仕掛けにこそ、本書の魅力があると思います。
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20.スティル・ライフ

人が人を裁くことはできるでしょうか?正しい生き方は何が基準となるでしょうか?人生を歩むなかで、こういった問いかけは出口を見失うことがよくあります。しかし、この本では、とてもシンプルに生きていくことが美しく、そして草食動物のように他を傷つけない主人公の友人の行き方がわれわれの問いかけに率直に答えを出してくれます。幸福は私欲や情欲の中に見出されるものではなく、本来シンプルな生活の中で見つかるものであること、それがとても理解しやすい物語として描かれている、池澤夏樹さんの独特の世界感があります。
冒頭に、すべてを奪われた後は、まるで、身体が別の世界をさまよっているよう、まるで透明の水の中を遊泳しているような気分になる。あまりにも美しい文体は、「潮騒」の平成版である。
ある大学の教授が、接続詞のないきれいな文章であるとおっしゃっていたが、まさしくそのとおり、本書は小説というより、芸術作品に近いのかもしれない。

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おわりに

いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。
その他書籍も紹介しております。
宜しければご覧ください。



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