小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作20選⑬
皆さんこんにちは
今回は今まで読んだ小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
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1.スロウハイツの神様
読み終えた後、あまりの幸福感に泣けてしょうがなかった。
徹底的なハッピーエンド。できすぎの感じがしないでもない結末。
でも、そこから伝わってくる「幸せ」があまりにも温かくて、
短い間に大好きな存在になった彼女たちの幸せが嬉しくて、本当に泣けた。
空想上の産物にすぎない彼らにそこまで肩入れするのもどうなんだ、
と冷静に自分を眺めつつ、でもそこまでいとしく思わせてくれる作品と
出会えたことが嬉しくなる、そんな話だった。
上巻では1章ずつ「スロウハイツ」の住民の日常を追いかける。
彼らが何を望んでいるのか、何を目指しているのか、何が手に入らずに
もがいているのか、青春小説のような群像劇だ。
しかし、下巻に入り、上巻で散りばめられていた何気ない思い出話や
日常がすべて伏線だったことを思い知らされる。
それらが伏線だったことにすら気付かなかった数々の思い出話が
一気に回収され、あるべきところにあてはめられていく様子は実に爽快で
読み終えた後に、また最初から読み始めたくなる。
物語のテーマ、そして作者の想いは登場人物によるラスト近くの
言葉に集約されているのだと思う。
「まあ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね。」
2.優しい死神の飼い方
癌患者が登場したり、不治の病いの看護師が登場して、死と言う重いテーマも、犬とのコンタクトを通じて人間を包括していく様は、意外に元気が出た。実際犬を飼う自分も犬の生態は分かる。我が家の愛犬は、物語の犬と程遠いが日々癒しをもたらすことは変わりない。
この世の未練を立ちきり、穏やかな死を迎える試みは現代社会に必要不可欠。
癌だから、どうせ終わり… 短い生命にも気持ちが未練たらたらだと恐怖も増して来るのか、そういことは…はっきり解らないが、死神=天使の設定も、この作者だからこそ、マンガチックにならない。ちなみにそろそろ高齢の入り口になる自分もこの多死社会で死を身近に捉えるのも、良い機会なった。明日死ぬかも等、覚悟は出来そうもないが、平凡な愛犬と共に1日1
日を大切に過ごすしかないだろう。
3.かもめ食堂
映画はかもめ食堂の日々がふんわりと柔らかく描かれていて、主人公のサチエ、旅行者でかもめ食堂に居着いたミドリ、マサコが演じた女優さんの個性も見事に際立ち、不思議な雰囲気を醸し出していますが、原作を読むとそれぞれの事情が解り、サチエ、ミドリ、マサコの人となりが少し分かるようになり、三人の姿が地に足をつくようになります。
夢のような出来事や突飛?と思える設定もありますが(そもそも、三人がフィンランドで出会うこと自体が突飛ではあるのですが)、それこそ読ませる楽しい物語。
そして、この話を読んでいると、美味しい御飯を食べたくなります。
映画は映像の強みもあってか、画像の出てくるおにぎりやシナモンロールが食べたくなりました。
ですが原作は、勿論おにぎりやシナモンロール、そしておいしいコーヒーも飲みたくなりますが、何より自分にとって本当においしいと思う食べ物が食べたくなるような気がします。
例えば、美味しい食パンをカリッと焼いてバターを塗ったものや、お母さんが握ってくれたおにぎり、風邪を引いた時に作ってもらったようなお野菜をたくさん入れた煮込みうどん。
自分の心の奥にあるおいしい記憶を呼び覚まし、幸せな気持ちになれる一冊です。
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4.DIVE!!
カラフルの時にも感じたのだが、この作者はどうして男の子をここまで上手に書けるのだろう。トイレで排尿速度競争するなんて恥ずかしいことを何故知っているのだろう。トモキ、シブキ、要一の3人の主要人物 (トモキは中学生,あとの二人は高校生) 達の心が思うこと、感じることが文字、紙の仲介なしにいきなり叩き付けられる不思議な語り口は名作 'リズム' 以来の天才芸である。
そして今回は高飛込みの選手養成の話で、女性名コーチがトモキをしごき抜くのだが、のんびり屋でまるで自己中心的でなさすぎるトモキが、あれよあれよと言う間に次から次と難関に挑み成長してゆく様は只事ではないのに天才芸が読み手を納得させ感動の渦に巻き込んでゆく。
ストーリー性と、キャラクター性、そして天才と言われる人間でも思春期で、そして大人では無い普通の子供である、というのがとても良かったです。才能があり、ひとつの競技に“普通の体験”を捨てて全てを注ぎ込めるか、というところの残酷さと尊さ。
スポーツ物の小説が大好きなんですが、特に良かったです。個人競技の難しさと美しさが詰まってるようで楽しかったです
5.椿山課長の七日間
さくさく読める軽いエンターテイメント作品だなと思いながら楽しんで読んでいた。話の展開に惹き付けられ、合間合間に登場人物たちがつぶやく言葉に深く頷きながら読んでいたところ最後の最後にやられた。心が揺さぶらる展開が待っていた。
タイトルは「椿山課長の七日間」だが、彼だけが主人公ではない。
彼と同じ日に殺し屋に人間違いで殺されてしまったヤクザの親分、武田と
たった7歳で交通事故にあってしまった男の子、蓮。
彼らはそれぞれ、現世に戻り、心残りをなくすために行動するうちに
お互いの行動範囲が重なり始める。
特に蓮と深く関わりあうことになる椿山課長の父親の言葉には重みがあり
人間的魅力にあふれている。何より、彼は言葉だけではなく、
自分の生き様で、行動で 私達に「生きること」「悔いなく過ごすこと」を
教えてくれる。 彼が最後に啖呵を切る場面に胸も目頭も熱くなった。
そこかしこに出てくる登場人物たちの単純で深遠な言葉の数々にも
心を揺さぶられる。
6.最後の医者は桜を見上げて君を想う
不治の病と死という現実をこれほど赤裸々に描いた作品はそうはないだろう。その死に向き合う
患者と医師。患者は、白血病、ALS、して末期癌。登場する医師は同じ大学の同期生3人。
医師としての理想に燃え、腕も確かな福原、死神と呼ばれ患者をただ生かし続けることは意味がないと主張する桐子、そして自分が二人のような強い意志を持っていないことに悩む音山。
3つのエピソードで、末期患者たちの想像を絶する苦しみが描写される。読んでいて息苦しい。
その描写の凄まじさに否応なく読者も死というものを考えざるを得なくなる。そして、この3人の医師の葛藤。誰が良い、誰が悪いというテーマではない。医師が患者たちとどう向き合うか、患者目線で医師は患者の死を考えられるのか。出来るだけ生命を永らえさせて、奇跡を待つという福原の考えと、根本的に対立する桐子は、患者がただ単に生き続けるということでなく人間の尊厳の為に死を選択することを良しと考える。そして音山。彼は、
この作品の最後のエピソードで非常に重要な役割と問題提起を行う。
7.ダイナー
組織の名うての殺し屋が集う定食屋(ダイナー)『キャンティーン』。ほとんど絶望的な状況から、ウェイトレスとして働くことになったのが、本作品の主人公・オオバカナコ。店の王にしてたぐいまれな料理人・ボンベロのもとでしごかれ、鍛えられるうちに、徐々にタフな女ウェイトレスとして蘇生し、成長していきます。
最悪の展開に必死に頭を働かせ、立ち向かい、息を吹き返し、変貌していくオオバカナコの姿は、見ていて酸欠になるような、とても胸苦しい気持ちになりました。と同時に、そのサバイバルな姿がすごく痛快で、いつの間にか「負けるな、オオバカナコ!」と、声援を送っていましたね。
この作品の魅力としては、旨そうな料理の描写、イカれた殺し屋たちの個性的なこと、拷問や殺しのシーンのむかつくばかりの凄惨さなど挙げられますが、わけても心にヒットしたのは、ウェイトレスのオオバカナコと雇い主のボンベロとの間に次第に結ばれていく信頼関係、試練にさらされたなかで太くなっていくふたりの絆でしたね。この味わいが良かったからこそ、エンディングの三頁が生き、読後の余韻が後を引くものになったんじゃないかな。
8.麦の海に沈む果実
舞台は北国にある元は修道院だったというとても広大な敷地を持つ全寮制の中高一貫の学園。この学園周囲を湿原に囲まれており外界とは隔絶された環境にあります。この学園に2月の最後の日に一人の転入生がやって来ます。彼女の名は水野理瀬。『3月以外の月にやって来る者は、この学園を滅ぼすであろう。』という言い伝えのある学園に、何故か2月の最後の日にやって来るよう指定されていた水野理瀬。その理由は読み進む毎に徐々に明らかにされていきます。そしてこの学園に隠された秘密も・・・。
この本を読んで真っ先に思い浮かぶのは『ハリーポッター』に登場する全寮制の魔法学校『ホグワーツ』ですね。ただ『ホグワーツ』に比べると、この本の舞台の学園の方が暗い部分が多いように思います。
その暗く重い雰囲気の漂う場所で、学園独自のルールに従い、普通の学園生活とは随分かけ離れた毎日を過ごしているたくさんの生徒たち。あまりにも非現実的な感じもしますが、そこはさすがに恩田陸。登場するキャラクター一人一人が素晴らしく魅力的なため、すぐに引き込まれてしまいました。
一言で言うと学園ミステリー物になるんでしょうが、それだけでは表現できないほど奥が深いです。
徐々に明らかになっていくたくさんの謎。そして最後まで読んでも明かされることのない謎。
恩田陸らしさが十二分に出ている素晴らしい作品です。
9.和菓子のアン
今回のヒロインの可愛さは、ピカいち。
身長が低く体重は少なくなく、Mサイズはぎりぎり?みたいな丸い体型とふっくらほっぺ、という一見、なめられやすい(よくいえば親しみやすい)感じの見た目なのですが、この子、賢い。
デパ地下の和菓子ショップ(しかも店長以下、面白すぎる曲者揃いという一筋縄ではいかない職場)に自分なりに体当たりし、デリカシーとか、お客様の気持ちとかを大切に一生懸命店に立ち続けるのです。
今までの「バイトヒロインもの」だと、かならず(あえてなのでしょうけれども)1話くらい「え? この人、ダメじゃん」的な失敗、あるいはヒロインのイヤな面がちらっと見えちゃうところがあったんだけど、この「和菓子のアン」ちゃんは、どんどん読んでるうちに「絶対可愛くて賢くていい子なんだろうなあ」と友達になりたくすら思えてきます。学校の勉強的な意味じゃなくて、人と接するときに持っていたい賢さと優しさがちゃんとあるんですよねー。庶民的な家庭で明るく育った普通の女の子の強みを感じる魅力的なヒロインです。そして彼女に負けず劣らず個性的で会ってみたくなるようなキャラクターたちが物語を一緒に盛り上げます。
というわけで、キャラクター小説として秀逸なところは良い意味でラノベ的。更に、デパ地下という生活になじみのある、それでいて知らないこともいっぱいの場所で、今までケーキとかのほうが好きだし、と地味な印象が正直あった和菓子の魅力をからめてライトミステリーが展開されていくのです。面白くないわけがないです。
食いしん坊にも、成長する女の子好きにも、デパートに目がない人にも、後味の良いミステリー好きにも…
まるであらゆるニーズを受け止めるデパ地下(和洋中韓国料理などなどもろろもろ)のようにどんな読者もウェルカム!な1冊です。
10.どうしても生きてる
最近、「嫌なことがあれば逃げてもいい」という言葉を至る所で目にするが、本書はこの言葉に対するアンチテーゼのような意味を持っていると思った。
生きていれば、上司から嫌なことを言われたり、自分だけ理不尽な目に合うことは当然あるだろう。しかし、そのことに対して、「世界はこんなに酷いところなはずがない!だからこんなことからは逃げるべきだ!」と、現実逃避するのは、あまりにも健やかである。
確かに、時には逃げることも大切であろう。しかし、逃げるにしても「ああ、そうだよな、クソだよな、知ってるよ。さあどうしようか」と、世の中のクソさ、理不尽を認めた上で次にどうするか、そう考えてから逃げるなり、戦うなりすることが、理不尽の壁にぶち当たった時に、自分の糧になるのではないだろうか。
11.限界集落株式会社
この本はその名前の通り、現在の社会的課題である「過疎」「少子化」「農業」などのいわゆる「地味なテーマ」を取り扱っている。
そんな小説仕立てしにくいテーマとは相反してストーリーはとても読みやすく、対立項も明確なので感情移入しながら読み進めることができる。
これには登場人物それぞれの設定がとても個性的であり、「キャラ立ち」していることが大きく貢献していると思われる。
私自身が人口2,000人の田舎地区出身であることもあり、とても興味深く一気に読み終えてしまった。
いわゆる農業を中心とした田舎の地域と都市の対立というものは当然あるが、この小説の中ではその二項の相克を目指しており、少なくとも小説上ではハッピーエンド。とても清々しい。
「現実はこんなに上手くいかない」などの声は多々あろうかと思うが、それでも良いのではないか。
この本の中でも「声を上げることこそが大切だ」と登場人物が言っている。道筋はあってもその道自体は事例によって様々なものが生まれてくるのは当然のことだ。
人口減少や過疎というものは緊急のリスクではなく、「先が見えるリスク」である。
40年後に人口が3800万人減少するのが「予測できる未来」なのであれば、打てる手はあるはず。
そういった希望を見出すことができる、未来に向けてとても前向きになることができる小説だ。
こういった社会問題解決派小説がどんどんこの世に出て欲しいと思う。
12.キッドナップ・ツアー
家を出た父にいきなり呼び止められ、小五女子を父親が誘拐するひと夏の親子の旅行記。誘拐といっても、だらしない父親の小芝居に、しっかりものの娘がつきあっているあげているだけである。ある条件(最後までわからない)を母親が承諾するまで、二人旅は続く。やがて、父親のだらしなさにうんざりしながらも、理解を示していく過程を成長としてとられている。
この本は子供目線で物語りが進む児童文学だが、離婚してしまうお父さん目線で書かれると全く違うものになるだろう。
父親はこれから片親なしで育っていく娘に、こんなにろくでもない父親がいなくても、不幸ってわけではないということを、身をもって教える。自分のだらしなさや情けなさを包み隠さずに子供に晒し続ける旅行。教育の根本を見せつけられた。こましな教訓をならべたり、上から目線の注意やお説教が、子育ての中心になってしまっている親は多いのでないか。自戒させられる。
そして、最後に、このお父さんのすべてといっていいほどの一言を娘に告げる。
「おれがろくでもない大人になったのはだれのせいでもない。
だれのせいだとも思わない。
だから、あんたがろくでもない大人になったとしても、それは、あんたのせいだ。
おれやおかあさんのせいじゃない」
肝心要の誘拐の条件が明かされないまま終わってしまうので、小説の主題が曖昧になると思ったが、改めて、作者からの子供たちや、親への強烈なメッセージを思い返し、誘拐の条件などとるに足らないことだと思った。
13.乱反射
登場人物たちのほんの悪意のない「まぁいいか」と思っていること。
人間は聖人君子ではなく、ちょっとした些細な事。
もちろん、モラルには反しているけれど、でもそれが小さな連鎖で2歳の子供の命がかかっている。
それぞれの責任逃れ。保身の気持ち。
読んでいて、一言でもいい、謝罪の気持ちを表してくれたらと思うけれど、事件が命に関わる問題のため、表立って謝罪できない。
人の気持ちが絶妙に描かれている。
そして、主人公の男性もまた、モラルに反していることに気付いた瞬間の慟哭。
登場人物たちの言い訳や逃げる姿勢にやりきれなさを感じるが、自分自身も聖人君子ではなく、どこかで何かのモラルを気づかぬうちにしているかもしれない。
ごく一般の悪意のない行動が連鎖して最終章に向かう。
主人公と妻がもう一度、立ち直り前を向いて生きていってほしいと希望したい一冊でした。
14.ロスト・ケア
介護は今、日本では深刻な問題である。思えば一昔前は、介護という言葉自体遠い存在だった。
人は60過ぎれば仕事を引退し、残り10年を余生として過ごし、病を得て自然に死んでいく。
この形が残っていたからである。しかし、近年、日本は稀に見る長寿大国になった。
100歳を超えると、金で作られた記念品を渡していた自治体が、あまりにも100歳超えが多すぎて予算が間に合わず、
金メッキにした、という話もあるほどである。長寿というめでたい事柄の影に、家族介護という悲劇がある。
ニュースでの老老介護の果の殺人も珍しくない時代である。
こういった社会的な背景を舞台に、ミステリー仕立てにした本書は、かなり重い内容である。
緊迫感をもって読ませるが、どうしても犯人の思想的に、障害者施設での多量殺人の事件を思い出してしまう。
それが殺人であっても、家族は、介護が終わりホッとする。
この事実は、紛れもなく真実であろう。人間の尊厳を考えさせられる内容であった。
15.いちご同盟
今考えるとそんなくだらないことで、と笑い飛ばしてしまえるような理由で自殺を考えたことがあったのですが、この小説のヒロインの「私には病気という選択肢しかない。自殺のことを考えるなんて、贅沢だわ。」というセリフに衝撃を受けました。
あなたがつまらないと感じている今日は、病気で昨日死んでいった人が渇望した明日だ、という言葉を何かで読みましたが、まさしくその通り。
病気と必死に闘っているヒロインが、死に憧れる主人公に言ったこの言葉は、僕の人生を変えたと言っても過言ではありません。
「生きる希望を見いだせない」、「毎日がつまらない」などと感じている人は特に、彼女の生きる覚悟に触れ、普通に暮らせるということがどんなに貴重なことなのか再確認してみてはいかがですか?
幼さゆえに純粋な彼らの物語は、同年代の学生さんたちはもちろんですが、大人になってからでも感じるなにかがあるはずです。
16.西由比ヶ浜駅の神様
脱線事故が起きた日の電車に乗り、愛する人にもう一度だけ会うことができる。あなたなら愛する人との最後の時間をどう過ごしますか?
といったテーマで描かれた作品なのですが、とにかく人のドラマがすごい。
自分ならこんなに美しく生きられるか…?
と考えさせられるほど素敵な作品でした。
4人の人物にフォーカスをあてた4話構成なのですが、全話ボロ泣き。最後の8ページは嗚咽を抑えられませんでした。
とにかく登場人物が全員素敵です。
これは少しネタバレみたいになってしまうかもなのですが、最後まで読んだ上でもう一度読むと、また違った涙になります。
17.コインロッカー・ベイビーズ
あるコピーが村上龍のことを「現代文学の旗手」と書いていましたが、こういうのがまさに現代文学なのかと思いました。
なぜかというと、描かれるディテールの一つ一つに現代人としての既視感を覚えるからです。
錆びついて草生した地方の風景がある一方、都会には未来を望みながらだらしなく退廃して発生した傷口がある。
登場人物に関しても、古臭い人間関係のしがらみから、個人主義のゆがみまで、それは見たことのある世界です。
でも、それを小説として提示したものはこれまで見たことがなかった。
そして、その中で繰り広げられるストーリーが何を志向しているのかわからないのも現代的と言えます。
この物語から希望を得るのは難しいし、絶望を求めることも拒絶されています。
ストーリーを追うという刹那的な喜びだけが許されているようです。
18.妖怪アパートの幽雅な日常
タイトルに「妖怪」とあっても、決しておどろおどろしい内容ではないし、主人公が高校生だからといってジュヴナイルと断定するのは早計。
中学生になったばかりのときに両親を亡くした主人公が、親戚に遠慮をしながら3年間を過ごし、いよいよ寮のある高校に入学して独立する!という矢先に、寮が火事のため入居不可になってしまう。
自暴自棄になる主人公の前に、寮が建て直しされるまでの期間限定で格安アパートに入居できるという甘い話が供される。
胡散臭いと思いつつも、独立にこだわる主人公は入居を決意。
伺候して、そのアパートは妖怪や幽霊などがたむろする「妖怪アパート」だった……!
と書いてみると何の面白みも感じられないが、あに図らんや、何だかじんわりと泣けてくる物語なのだ。
簡単そうに軽く触れられているが、何と深遠な真理の数々がちりばめられていることか。
説教臭い話や小難しい事は何も書かれていないが、読み終えると体の中からすっきりとして清々しい気持ちになれる。
おとなも子供も一読あれ。
19.小さいおうち
丁寧に丁寧に紡がれた物語。
登場人物は、あたかも実在の人物がいたかのように詳細に描かれ、
昭和初期のたたずまいをあますことなく伝えてくれます。
モダンな洋館に住む美しい時子奥様と、その家に使える、若き女中タキ。
そのタキが晩年にしたためる一遍の回顧物語がこの小説の核になっています。
女中という、差別用語的な職種を、一気にスーパーキャリアの専門職として、品格を高めた感があり、目を開かせてもらいました。
当時『よい女中なくしてよい家庭はない』と言われて家人に重宝されていた女中さん。
そのなかでも、タキは『奥様、わたし、一生、この家を守ってまいります』と、忠誠心が強い人。
その信念は、若く美しく、タキに優しい時子奥様の存在があったから。
互いを尊重するという、主従の関係を超えた結びつきが
今後どうなっていくのか‥ページが進む内容でした。
露悪的なモノのない、落ち着いた文章と、丹念に調べこんだであろう時代考証。登場人物の上品な会話は夏目漱石の小説を、ふと思い出させます。
使われているディティールが絶妙で、開戦に突入する時代でありながらも、
エレガントなものを失うまいとした、凛とした女性像を想起させてくれます。
素敵な小説に出会いました。
20.東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン
月並みな感想になってしまうのですが、この本から「愛」を強く感じました。
リリーフランキーさんの人生を通して、母親へ
いや、リリーフランキーさんの持つ全ての愛が描き殴られてます。
小説の中でも自伝的なので私小説に部類されると思います。
私が言えるのはここまでです。
1度読んでみてください。
以下本書で印象に残った言葉を引用します。
母親というのは無欲なものです
我が子がどんなに偉くなるよりも
どんなにお金持ちになるよりも
毎日元気でいてくれる事を
心の底から願います
どんなに高価な贈り物より
我が子の優しいひとことで
十分すぎるほど倖せになれる
母親というものは
実に無欲なものです
だから母親を泣かすのは
この世で一番いけないことなのです
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おわりに
いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。
その他書籍も紹介しております。
宜しければご覧ください。
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