小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作ミステリー小説20選
皆さんこんにちは
今回は今まで読んだミステリー小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
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1.方舟
読み終えた瞬間、しばらく天井を見上げて動けなくなった。
ミステリを読んでいて「やられた!」と思うことは多々あるが、これほどまでに背筋が凍り、同時に人間の業の深さに打ちのめされる経験はそうない。夕木春央著『方舟』は、それほどの劇薬だった。
舞台は、山奥の地下建築。閉じ込められた若者たちに、水没の危機が迫る。「誰か一人が犠牲になれば、他全員が助かる」という、いわゆる「トロッコ問題」が物理的な装置として現実に突きつけられる極限状況だ。
そこで殺人事件が起きる。犯人が見つかれば、その犯人を「生贄」として捧げればいい――。全員が助かるための大義名分を得て、犯人探しが始まる。この設定だけでも十分にスリリングだが、本作の真価はそこにはない。
特に印象に残ったのは、主人公たちの倫理観の揺らぎだ。極限状態において、人はどこまで利己的になれるのか。「
愛する人がいるから生きたい」という願いは、裏を返せば「愛する人のために誰かに死んでほしい」という呪いにもなる。
作中で語られる「愛されていない人が死ぬのは、不幸ではないのか?」という問いかけは、物語の結末まで読んだとき、恐ろしいほどの重量を持って迫ってくる。
ネタバレになるため詳細は伏せるが、ラスト数ページで世界は反転する。 私たちが信じていた「論理」や「正義」、そして「愛」さえもが、ある一人の人物の生存本能の前では無力だったと思い知らされるのだ。
読み終えた後、タイトルの『方舟』という言葉を反芻する。
それは神が与えた救いなどではなく、人間が人間を選別するための、冷たく無機質な箱だったのかもしれない。
ミステリファンはもちろん、人間の心の深淵を覗き込みたい全ての人に薦めたい一冊だ。ただし、読後の心の平穏は保証できない。
2.殺戮にいたる病
もしまだあなたがこの作品を読んでいないのであれば、今すぐレビューなんかを読むのをやめてこの作品を読むべきだと思う。
この作品を気になり、検索し、ここに辿り着いているのだから。
ここから先は、ネタバレ有りで夏休みの読書感想文レベルのレビューをさせていただきます。
この作品を代表する叙述トリック、この類いのトリックが隠された小説は幾つか読んで来たが、この作品のそれは全身に鳥肌が立ち脳が痺れるようなインパクトがあった。
この為の作品で、この為に練られた物語であると思うのだが、このトリックにしっかりとかかればかかるほどそのインパクトは大きなものとなると思う。
異常者と疑って仕方がなかった息子が一瞬で陰に暗躍するヒーローへと成る瞬間は本当に素晴らしかった。
我孫子氏はこのトリックを、(個人的に思っているだけであるが)ある種の力技で成立させている様に思えた。
魔法が解けた二回目ではどこからどう見ても父について書いてあるようにしか見えない稔編も、一回目では息子の話のように読めてしまうのだが、良く読めば二十歳で女性的なニュアンスを感じさせる様な青年がおじさんなどと呼ばれるはずも無いのだ。
他にも多々違和感は有るのだがそこは割愛させていただく。
そうして一切(名前以外は)隠していない真実を、目まぐるしく変わる場面、本から血の臭いがしてくる様な表現力で、私の持つ違和感を読み取り真実に気付こうとする意思を強引に捩じ伏せているのだろうと感じた。
こういった方面の表現力に感嘆する日が来るとは思いませんでした(グロいのが苦手なため)。
とてもいい経験が出来たので共有できたらと思いました。
3.その可能性はすでに考えた
古今東西の拷問に詳しくなれる本。…ではなくて、人知を超越した奇蹟の実在を証明しようとする探偵を描いた異色のミステリー。
ある事件にまつわる不可思議な出来事に関し、"挑戦者"たちが合理的な解釈を提示していくが、探偵がこれをことごとく否定していく。
一つの事件に色々なトリックが提示されるという構成が面白いし、すごく練られていると思った。
挑戦者が滔々と何ページにもわたって語る仮説を、探偵がほんの2-3ページほどであっさりと否定するのも痛快だった。
様々な文学や歴史が引用され、ウエオロの(つまりは作者の)膨大な知識量には驚かされた。
この作者さんはストーリーの面白さもさることながら、キャラクターがよく作りこまれていてとても魅力的だと思う。
なにか長いシリーズ物の一部なんじゃないかと思ってしまうくらい。
キャラ一人一人のスピンオフを作っても十分読み応えがあるものになりそう。
キャラクターも文体もとても好みなので、これからも追いかけていきたい作家さん。
4.七つの海を照らす星
ハートフルでヘビイで青春で社会派な、児童養護施設で起こる日常の謎?であります。
舞台となる「七海学園」は「学園」は「学園」でも、幼児から高校生までが居住する児童養護施設。青春ミステリ、学園ミステリ的な味わいはあるんですが、入所者にまつわる事件は必然的に重い問題を抱えてくることに。
それにしても著者はよくもここまで児童福祉の諸制度や問題について調べ上げたものだとただただ感心するばかり。
謎解きそのものはむしろシンプルで、目を瞠らされる大トリックはございませんが、繊細な物語の中に巧緻かつ周到に伏線を張り巡らしたプロットがまことに見事な出来栄え。
いままで読んだ鮎川哲也賞受賞作の中でもハイクオリティな一冊でした。
5.この闇と光
世界がひっくり返ってから驚きの連続!美しいもので溢れた世界で暮らすお姫さま、レイア姫…。お姫さまは情報が制限されているからこそ最上の美を想像できる。世界を自分の中で創りあげることができる。
誰かにとって神や世界そのものになれたとしたら…という少し危ない想像を膨らませてしまった。でも小さな子どもにとっての親は神であり世界そのものになりうるし、身近に神の力を持つ人はたくさんいるなぁ。
美しいものに惹かれる人たちが組み上げた夢の世界を覗けて最高だった。
終わりかたも淡くてふんわりした陶酔を残してくれる。
全てを語らないのでこの物語の世界の続きを私の中で創り上げることが許されている。美と想像の力を感じた。
6.99%の誘拐
犯行に使われた機器類やネット関連の話が古さを感じさせますが、この作品が描かれた当時ではかなり先取りだったのではないでしょうか。
出版してすぐ読んでいたらちんぷんかんぷんだったかも。
そして30年以上経っているにも関わらず、面白さが全く損なわれていないのも凄いです。
ストーリーもトリックも大変面白くて、最初から犯人は分かっているのに、飽きさせずにどんどん読み進めたくなります。
そして全体的に情景描写が多く心理描写は控えめなのですが、どうかこの犯罪が成功しますように!復讐が果たせますように!と願うくらい犯人に感情移入してしまいました。
少々ネタバレになるかもしれませんが、犯罪による死者が出ないのも、陰鬱な気持ちにならず良いですね。
人質が殺されることは無いだろうという安心感がある上で、テンポの良い文章に身を委ねられるので気持ち良く読めました。
ラストもとても良かったです。
後味が悪いことになるのでは…と危惧していたのですが、これ以上ないほどキレイに幕を閉じてくれました。
スピード感のある展開なうえ途中で一切ダレることがなく、最初から最後までずっと惹き込まれてしまうくらい読ませる力が非常に強いです。
名作というのも納得の作品でした。
7.一次元の挿し木
ヒマラヤで発見された「200年前の人骨」。
そのDNAが、4年前に失踪した妹のものと一致する――。
あまりにも異常な謎から始まる、遺伝学ミステリーです。
大学院で遺伝学を学ぶ主人公・悠が真相を追う物語は、文章が非常に読みやすく、序盤から一気に引き込まれました。気づけば長時間没頭してしまう構成力はさすがです。
本作の核心は、最新の遺伝子工学と、妹を想う兄の執念にも似た愛情。その二つが交差したとき、「挿し木」というタイトルの意味が徐々に浮かび上がり、背筋が冷えるような恐怖と、どうしようもない切なさが同時に押し寄せてきます。
複雑な時系列や多角的な視点を用いながらも、物語は見事に一点へと収束。
主人公の孤独と苦悩が丁寧に描かれているからこそ、結末の余韻が深く胸に残ります。
「このミステリーがすごい!」大賞受賞も納得の完成度。
一気読み必至のエンターテインメントであり、重厚な人間ドラマとしても秀逸。
ミステリー好きはもちろん、普段あまり読書をしない方にも強くおすすめしたい一冊です。
8.満願
「夜警」から始まり「柘榴」「万灯」を経て「満願」で締めるいずれも暗示的な短い漢字のタイトルで表される物語。
それぞれが微妙にシチュエーションも事件も、人物像さえも様々で、読み手はいつの間にか日常から登場人物の視点に同化して奇妙な事件に巻き込まれ、そしてそれぞれの章でその奇妙な事件の真相が判明します。
(解決ではありません。あくまでも真相がわかるだけで、或る物語については、まだまだ悲劇が続いたりもします)
作者の文章力、描写力、心象の説得力は実に大したもので、実際だったらまず遭遇もしないし、動機づきもしないこれらの物語のシチュエーションに読み手はいつの間にか取り込まれてしまいます。
ブラックで悲劇的なオチにも思わず、これしかないだろうな、と納得してしまうのです。
ですが、読み終えてしばらくすると、なんとも居心地が悪く、暗くにがい感覚が胸を這い登ってくるのです。
「この人たちは切実だし、真摯に切羽詰っている。だけど何処かがいびつだ。歪んでいる。。。」と事件やミステリというものはそういうものなのかもしれません。
しかし書きこみがリアルで上手であればあるほど、読み手は登場人物たちが自分とは違うことに違和感と安心感という異なった感想を重ねるものなのでしょう。
そして良くできた作品ほど、その振り幅というか色相の違いが際立つのだと思うのです。
9.すべてがFになる
この作品の面白さはキャラクター描写にある。
主役のコンビは、どんな状況にあっても「論理的」かつ「魅力的」なセリフをはく。
それは、ロジカルである事に憧れる私たちを(本当に、そんな物に憧れているのか?)存分に楽しませてくれる大きな要素だ。
もちろん、そんな設定は推理小説である事を支える「仕掛け」のひとつだろう。
デジタル世界をを題材とした謎解きというのも、いわゆる理系人間を喜ばせる魅力には違いないが、現代だからこそ成立するギリギリの新手法に挑んだ成果と捉えるのが、冷静な判断というものだろう。
もちろん作者は、この後もロジカルな2人を配した「キャラクター小説」を次々と発表するが、私は、キャラクターの面白さと、推理の巧みさが幸せな出会いを果たした本作品を、今もって著者の最高傑作だと感じている。
10.十角館の殺人
ネタバレ厳禁の作品の為多くは語りませんが、一言だけ言うなら、読んでよかったと思います。
有名なのは興味ない!なんて捻くれずに、もっと早く読んでおいてもよかったなあ〜と。
もちろん作品たるもの、好みや感想は分かれてしかるべきなので、「あなたもきっと楽しめますよ!」なんて無責任は言いませんが、読もうか読むまいか迷っている方には、是非お勧めしたい作品です。
11.硝子の塔の殺人
今作のエンタメとしての肝は主に三つ有る。
一つ目、推理と真相の多重構造。どんでん返しが幾つもあるというやつだ。
今作は大まかに言えば三つの事件の入れ子構造になっている。
その分、推理と真相というメインディッシュが三つも楽しめる部分が一つ。
二つ目、読めばわかるが、作者はとてつもなくディープな本格オタクだ。
語り出したら止まらなくなるタイプだ。そんな作者が本格をメタ的に解体し、一つ目で上げた入れ子構造にのせ、それぞれテーマとして入れている点。
例えば、探偵と犯人は影と光である。逆ではない。難解な事件とそれを作り出す犯人がいなければ、名探偵はけして存在出来ない。ダークナイトのバットマンとジョーカーであり、もっと直接的に言えば、パズルの解答者と出題者だ。
難解なパズルが無ければ、天才的な解答者が居てもそれは只の人……などだ。
そして三つめ、エンタメとしてもっとも大きな肝はやはりキャラとその関係性であろう。
本格の弱点の一つが、キャラの弱さだと言われている。アガサ・クリスティなどの例外を除けば、トリックや舞台立てに重きが置かれるものの、内面描写が弱くキャラが魅力的ではないというやつだ。
今作のキャラは少なくともリアリティのあるものではない。
だが犯人は魅力あるキャラに仕上がっていると感じる。その関係性についても見事だ。
潜入捜査官ものと同じエンタメ構造が本作にはあり、いずれ来るであろう破綻、終わって欲しくないものが何時か終わる。捜査の進展とリンクしたその終わりに、読者は事件とは別種の緊張を常に強いられる。
そして真相、ハッキリ言って荒唐無稽な動機だ。だが本格推理好きとしては、その想いを狂人の戯言として切り捨てられないものでもあり、
それに寄り添える彼を、怪物と一緒に滝つぼに落ちようと言える彼を、応援してしまう自分がいる。
12.爆弾
本作は一部を除いて、対話形式でストーリーが進んでいく。
その章の人物の一人称で語られるが、個性あるキャラの心理描写と文章の構成力が素晴らしいので、読みやすく理解しやすい。
内容はほとんどが取り調べ室でのやり取りです。
テンポ良く適度な緊迫感もあり、スズキのイライラしいセリフまわしも興味深い。
取り調べ中のやり取りの随所に伏線が潜んでいて目が離せない。
ただの無差別爆弾犯と頭の切れる捜査官の話ではない
他者との関係、欲と正義、道徳観に問題提起される読み物としてめちゃくちゃ面白い。
本作を気に入った方は続編もどうぞ
13.13階段
正直なところ、最初は読み始めたことを後悔した。
あまりに暗く、救いがないように思えたから。
それでも先を知りたくて読み進めるうち、いつしか引き込まれていた。
殺人を犯した者は死刑に値する。じゃなければ、殺された人の無念さは、突如奪われた命は報われない。
当然と思っていた既成概念がぐらつくのを感じた。
冤罪、そして、実行する刑務官の苦悩。
簡単には片付けられない。
犯罪の裏にある一人一人の人生、それを決定する法機関、実行する刑務官の思いや人生。
そして、どんなに愚かな犯罪を犯そうとも、自分の子どもは自分にとって唯一無二の存在であり、代わりはいない。
世間では許されなくても自分は許し、その子どもを殺した相手は自分にとっては死刑に値する。
また、たとえ正当防衛であろうと自分の手で人を殺したならば、一生そのことはその人についてまわり、自分の中の終身刑と化してしまう。
人一人の命の重さをずっしりと感じる1冊だった。
自分は当然なことを当然と分かっていなかったんだな、と思った。
推理小説としても秀逸だが、それ以外にも考えさせられる内容、一人でも多くの人に読んでほしいです。
読後の感想は…、疲れた。圧倒される感動にである。
14.薔薇の名前
この小説では、中世の北イタリアの山上の由緒ある修道院で起こった奇怪な連続殺人事件の謎に、当修道院を訪れたフランチェスコ会修道士、バスカヴィルのウィリアムと、その弟子のベネディクト会見習い修道士、メルクのアドソの師弟が挑む1327年11月末の7日間が描かれています。
鋭い頭脳の持ち主であるウィリアムは、謎解きの途中で、この事件の原因は修道士同士の争いや復讐ではなく、修道院の敷地内に建つ巨大な迷宮構造を有する文書館に秘蔵されてきた禁じられた一巻の書物が関係していることに気づきます。
舞台は中世、修道院。
シャーロック・ホームズとワトソンのような関係の師弟修道士が、文書館をめぐる殺人事件に挑む。
エンターテイメントでもあり、学術的でもあり、ミステリーと記号論と歴史と宗教学を同時に含んでいる。
本の迷宮をめぐる物語は、その本自体もまた迷宮のようで、人によって、見方によって、さまざまな読み方ができる。
個人的に、おもしろいと思ったのは、この本の構成。
遠い昔に書かれた書物を、現代の著者が見つけて、訳出していくという作りになっている。
語り継がれて、失われて、そうしたことがめぐりめぐって、今この手元に本がある。
ふだんはうっかり忘れているけれど、多くの伝承や物語に、わたしたちはそうやって出会っているのである。
本の本の本、とでもいうべき多重構造が、なんともさすがというべきか。
学術でもいいし、娯楽でもいい。
そんな本はめったいにないので、たとえぶ厚くてびっくりしても、物語の迷宮に迷いこむ価値はあると思う。
15.名探偵のいけにえ
物語の舞台が40年以上前にも関わらず、近代的な認知心理学のエッセンスをふんだんに盛り込み、それがトリックの中枢に深く融合している見事な構造。
魅力的で個性豊かなキャラクタ。
事件の様相をとことん分かりやすく説明するため挟み込まれる多くのイラスト。
シュールなジョークも突如出現する緩急自在な無駄のない文章。
「この手の小説でこの展開は通常ありえないだろ!?」と仰天する進路変更(特に物語6合目)。
そしてさらにあり得ないけれど説得力がものすごい解決編。
でもそこでさらに訪れる大どんでん返し。
そして、最後に明かされるこの物語の真の探偵役の正体。
ミステリ読みとして、この作品を読み逃すようなことにならなくて本当に良かったです。
16.medium 霊媒探偵城塚翡翠
形容し難いほど感動しました。
霊媒師が事件解決、小説家が捜査協力、なんだか過去の名作海外ドラマを継ぎ接ぎしたような設定だなと思いながらも、勧められたので読んでみました。
読後にはすっかり虜に。読みもせず舐めてかかったことを申し訳なかったと思い、いやそれすらも作者の巧妙な罠なのではと疑ってしまうほど、全てが緻密に練られております。
想像を遥かに超えたクライマックスも素晴らしいですが、そこに至るまでも引き込まれるような内容で、止められず最後まで一気読みしました。
文字を読んでいることを忘れるほど情景や心情風景が自然と流れ込んでくる文章力も素晴らしいです。
17.カササギ殺人事件
もの凄いどんでん返しがあるわけではないが、最近あまりお目にかかれない古典的な探偵小説であり、何と言っても完成度の高いフーダニット(犯人当て)が2度も楽しめる凝った作りになっている。
1つは本編であり、女性編集者スーザン・ライランドを探偵役とする物語。
もう1つは作中作、架空の作家「アラン・コンウェイ」作で名探偵アティカス・ピュントを探偵役とする物語。
この2つの物語が絡み合うところがこの作品の要であり読みどころでもある。
上巻を読み終えて下巻に行くところで唖然となり、下巻はもう止まらなかった・・・。
悔しかったのは、本編も作中作も犯人が当てられなかったこと。
逆に当てられないということは、それだけこの作品がすばらしいということである。
散りばめられた伏線の回収、読者を嘲笑うかのような目くらまし、2つの物語をつなぐ構成力、そして読了後に訪れるスッキリ感、すべて完璧。近年稀に見る怪作と言っていい。
アガサ・クリスティーを久しぶりに読みたくなった。
18.体育館の殺人
学校に住むという奇人変人に類する脅威の秀才(全教科満点が可能)である裏染天馬が事件を紐解く密室推理ものです。
裏染は大のサブカル好きで多種のアニメがメタファーのように散見するので好きな方は笑える人も多いはず。
警察なども定番のキャラ設定で読みやすさはピカイチ。
ミステリ不慣れな方からよく読む方も総じてテンポ良く読める作品です。
謎はややこしいものではですが、ポイントになるエピローグでのもう一つの秘密の暴露。
ここまで読んで深みを楽しむのが一興となるのでお見逃しなく。
19.ハサミ男
本書「ハサミ男」が他の供述トリックと一線を画すのは、その仕掛けや驚きが二重三重にも重なっている事だろう。
読んでる最中に「こいつが犯人じゃないか?」という推察を見透かすように、ことごとく否定された点が非常にすばらしい。
それも一度や二度ではない。新たな人物が候補に挙がるたびにその疑惑と事実が付きつけられた。
「だったらハサミ男は……樽宮由紀子を殺した偽のハサミ男は誰なんだ!」という気持ちがそのたびに強くなっていき、読みやすさも相極まって本文を正確に捉えながらもページをめくる手がどんどん早くなっていき、移動中だけの読書が自宅に帰ってもなおノンストップで読み切ってしまった。
真相に辿り着いた時はうまく状況を飲み込めなかったが、後で分かりやすく、かつ違和感なく纏められているのも◎
もはや一度目の視点で読むことなど不可能で、未読の方が羨ましくすらある。
20.ミレニアム
ミステリーを主体として、女性への憎悪・ジャーナリズム・IT・民族主義・投資家・企業経営・男女関係の在り方など、さまざまな問題を取り上げている本書。
トリックを楽しむには物足りないというのは否定できませんが、エンターテイメント小説と考えたら一級品だと思います。
。私は北欧スェーデンの雰囲気を楽しみつつ、成年後見制度の問題点、障害者への虐待、また他国への経済援助を利用した不正など、日本にも共通する社会問題について考えながら読みました。
今までスェーデンというと福祉国家をはじめとした良いイメージしかありませんでしたが、日本同様社会が抱える闇があることをしりました。
本書の魅力は扱うテーマの多様性だけでなく、登場人物の巧みさにもあります。
まず、際立った個性を放つヒロイン、リスベット。彼女の生きざま・価値観は、本来非難の対象となるようなものですが、読み進めていくうちに不思議と彼女に共感し、さらには彼女の全てを応援したくなってしまいます。
そんな強烈なリスベットに対しもう一人の主人公ミカエルは、女にだらしがないところを除けば特に個性のない正義のジャーナリストで、ややもすれば影が薄くなりそうなところをうまくバランスをとって表現しているなと思いました。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。
他の書籍も紹介しております。
宜しければご覧ください。
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