小説3,000作品以上読んだ人間がオススメする名作20選④
皆さんこんにちは
今回は今まで読んだ小説の中で個人的にオススメの作品を紹介します。
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1.熊嵐
三毛別羆事件のwikipediaを先に読んでいたので、どんなに恐ろしい話かと身構えて読みました。
けれど羆の殺戮シーンはwikiより抑えめで、この事件に関わった様々な人々の『恐怖』に重点が置かれている印象でした。
中盤、被害にあった六線沢と三毛別の村人の元へ、警察の分署長が他町村の人々を連れて救援にやってきます。
三毛別側の村人は羆の恐怖に萎縮して沈みがちですが、他町村の人達は「おれたちが来たから安心しろ」と宴会騒ぎ。
次第に三毛別側は羆を軽視する他町村に辟易し、他町村側は彼らに同情しながらもその臆する様を蔑みます。
けれど翌日、被害現場を見回るにつれ、他町村の男達も熊の存在を肌で感じて恐慌する。
川向うで待機していた分署長にはそれがわからず、逃げ帰ってきた彼らに「何を恐れることがある」と罵ります。
昨年の秋田の事件で世論は少し変わったかもしれませんが、
地方の街で熊が捕獲されると「熊を殺さないで」という嘆願がネットや電話で殺到し、野に返すと聞きました。
けれど、そういった嘆願者や自然愛護者は遠く離れた都会に暮らす人々で、現地では「殺すのもやむなし」という意見が多いそうです。
現代でも両極端な熊への見解と、本書の登場人物が被って見えました。
熊を実際に知らない人達は本当の恐怖を体験していないから、理想論が言えるのかもしれません。
それが現地の住人にとって死活問題であることに思い至ることもなく。
本書の羆は特殊な例でしょうが、
人間にとって熊は、上から目線で『保護してやる』存在ではなく、どうしようもない程敵わない野生の脅威に思えます。
終盤の銀四郎の「きさまらは、ずるい」には、
集団に交われず、一人で恐怖と対峙する生き方しかない彼の悲哀も感じました。
2.うさぎパン
爽やかな文体と登場人物が魅力的で、構成も秀逸です。
母娘の絆、高校生の恋、パンをめぐる日常生活など、
いろんな要素が自然と重なりあっていて、人それぞれに楽しめると思います。
でも、ただのふわふわしたかわいらしいだけのお話というわけでもない気がします。
例えば、大学生の家庭教師や父母など大人の恋愛の部分はあっさりしているのですが、意外と読解力も必要です。
深みがないと思われてしまう危険もありつつ、大人になりきらない少女が語り手なので、わざと説明を省いたのでしょう。
かわりにさりげない描写が挟まれ、余韻を残しているところが上手でした。
3.むらさきのスカートの女
タイトルとシュールな表紙に引き込まれて買ってしまいました。
むらさきのスカートの女のことが、どんどん気になって、読んでいくうちに物語の世界にハマります。
読みすすめていくと、おもしろさと同時に不思議な感覚が湧いてくるのですが、その不思議な気持ちが、一体何なのかもわからずに、どんどん読んでしまいます。
何かがおかしい、でも一体何がおかしいのかわからない、最後まで読むまでもなく「あー、これはすごい。おもしろい」と思うのですが、読み手の想像力と捉え方によって物語の世界が変わる気がします。
「もう一度読みたい」と思わされる一冊で、読み終えた時、物語の世界に完全に浸かってそこから抜け出せない自分がいるので驚きました。
むらさきのスカートの女よりも、○○の女の方が気になって仕方がないわけなのです。
あらすじに惹かれた方、読んで後悔はないんじゃないでしょうか。
知らされたあらすじの通り、観察者の異常性、要は地の文の人物がどうかしてるという話なわけですが、その異常性がツボでした。
滑稽劇と言っていいと思うんですが、ところどころ「お前どうしちゃったんだよ!」など心の中で突っ込み声を出して笑いながら一気に読んでしまいました。
終わり方も好きですね。全く存在感なく生息しているかのようにおもえた地の文の人物ですが、終盤にさらっと所長が、彼女の異常性がごく一面だけではあるものの社会的にバレていることを伝えるところが特に好きです。
4.あの日、君は何をした
2004年に起きた女性連続殺人事件。
2019年に起きた一人暮らし女性殺人事件。
時間軸も発生場所も異なり全く接点の無い2つの事件。
風変わりな刑事 三ツ矢だけが関連性を疑い
点を線に結んで行きます。
中盤は読者の気持ちを裏切りゆっくりゆっくり展開しますが
ラスト49ページで一気にスピードを上げ伏線を回収。
その後の7ページで、、、。
こんなにも伏線と動機の構成が美しい小説を読むことができて本当に嬉しい。
ひとは母になった瞬間すぐに毒親になるのか?
誰のせいで毒親になるのか?
毒親のせいで子供がおかしくなるのか、それとも子供がおかしいから毒親になるのか?
このあたりのテーマが個人的にはすごくぐっときました。
5.今日のハチミツ、あしたの私
最近、蜂蜜にはまり、ヨーグルトや料理に蜂蜜を使うようになりました。
そして、偶然出会ったのが本書でした。
自分と似ている境遇、環境を過ごしてきた登場人物が多くて、感情移入して涙したことも何度かありました。
蜂蜜づくりが主題の作品かと思って手にとったが、蜂蜜を重要な媒介として、30歳の碧が、人間関係、結婚、生き甲斐などに悩みながらも、自分の居場所を見つけていくという物語だった。
読み始めの印象から静かな物語かと思っていたが、予想とは異なり起伏のある展開だった。そのため、ここであらすじを辿るのは差し控える。読んで味わってもらいたい。
優しいが、甲斐性がなく踏ん張りの効かない恋人と、行き掛かり上深く関わることになった変わり者の養蜂家の男と、これまた偶然出会ったスナックのママと……。碧が居場所を固めるにつれて主要登場人物との関係が変化していくのだが、この描写が実に繊細。人と人との距離感を細やかに描くのが上手な作家だ。
「蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日はきっと今日より良くなる」。大団円でめでたしめでたし、という単純な物語ではなかったが、碧が救われたこの言葉は、きっと多くの人の明日を良くする、と思えた。
6.コンビニ兄弟
こんなコンビニが本当にあれば、そのイートインに私も通いたくなることだろう。悪人は出てこない。皆、一生懸命に生きてるけど、なかなかうまくはいかず喘いでる。
そんな人達をコンビニを中心としたメンバーがなんだかんだで支え励ます。
プロローグから最後まで一気に引き込まれて読み続けました!ひとつひとつの話が面白く、登場人物も皆素敵な人達ばかりです。何より店長や店員たちの雰囲気にほっこりさせられ、このコンビニに通いたい!と強く思いました。北九州の門司港を知ってる方はより楽しめる内容なので購入して間違いないです!
逆に門司港を知らない方でも全然問題なく、ひとつの素晴らしい連作小説として楽しめます。
実生活が多忙できついことが多々あるといった方も、日々少しずつ読めば元気が出る作品だと思う。
7.光のとこにいてね
二人の少女は大きな傷を抱えて生きて来ていた。
それは私よりも不幸な人生だったと思う。
だけど、私は、二人の抱きしめて来たお守りに何故か強烈に嫉妬してしまう。なんて、強い、なんて確かなお守りなんだろう。
どんな苦しみの時にも、そのお守りは暗闇で密かな光を放ち、崩れ落ちそうになる膝を支えてくれる。
それは普通の幸せとは表裏一体だ。優しい、信じられる夫が支えてくれるようになっても、自分の身体を通して生まれて来た子供を得ても、どこか半身を求めて完全には満たされない思いを抱えてしまう。
この愛はなんなのだろう。
性欲では無い、
友情でも無い、
もっと切実な物…
これに勝てる愛なんてない。
だから、二人を愛する夫たちは白旗を上げざるを得ない。
8歳の結珠と果遠が、団地の公園で育んだ、どこか切実な叫びのような光にかなう輝きなんて、絶対に与える事はできないから。
多分、この先もハッピーエンドはあり得ない。
ただ、この二人はハッピーになることより、手を繋ぎあって生きることを選ぶのだろうな、と思った。
8.八日目の蝉
文章の美しさや読みやすさは流石だが、何より二人の主人公の希和子、薫の、その鬼気迫る感情の奔流が押し寄せてきて、一気読みしてしまった。
確かに彼ら二人は、道徳的にあるいは法的に、間違っていると言わざるを得ない。しかし、そのような許されざる選択肢を選ぶことで、二人は何とか生きる術を得たのだろう、生き延びることができたのだろうと思う。
読後、生きてくれてありがとう、という、二人への感謝の気持ちが自身の中に芽生えた。
「登場人物全員が悪人で、感情移入できない」という意見もあると思うが、逆に私にはそのような人こそ、読んで欲しいと思う。
おそらく、そのような人は、社会の「道徳観」「倫理観」に従うことが第一優先して、雁字搦めになっていて、だからこそ人としての動物的な感情について行けず、理解できないのではないか。
でもそれは、相当に生きづらいと思う。
どうにもならない人間の感情、愚かな我々にも、一筋の救いがあるという小説で、私は読後すがすがしく救われたような気持になった。
9.仏果を得ず
"大阪に住んでいるなら、当然文楽を語れて当然"と言いたい所ではあるが、恥ずかしながら美術史の講座に必要だと思って、上辺をささーとなでて知っている位なのだけど。それでも本書はとても面白かった。
何より、登場人物全てが魅力的に描かれていて、構成としては文楽の演目をものにする為に悩む主人公の健太夫が各章ごとに、師匠に扇子で頭を叩かれ、三味線の相方にも怒られ、そして惚れた気の強い女性にも振り回されるといった情けないパターンが繰り返されるのだが、それ自体が何とも【文楽世界と現実が重ね合わされている】ようで飽きさせない。
また、仮にフィクションとしても観客として演目を眺めるのではなく【演じる側目線】で紹介される文楽世界は、それだけでとても新鮮で。舞台の裏側の人間ドラマや息遣いを感じさせてくれる気がして、こちらも興味深いものだった。
文楽ファンだけでなく"文楽はなんとも興味がもてない"そんな人にもオススメ
10.死の淵を見た男
事実は小説より奇なり。
ここに、フィクション作家の脳髄では想像が遠く及ばない、書き表すことが不可能な事態が現実にあった、という証しが、ノンフィクション作家である門田隆将氏によって著された。
本書が書き上げられるまでに、著者による数多くのインタビューや情報収集、事実集積、その整理、分析という膨大な作業を経て、そこから蒸留されて本書に結実している。
東日本大震災による福島原発事故は、ニュースでリアルタイムに報じられた。が、現場で実際に何が起きて、どういう対応がなされたのかを具体的に知ること、また原発について素人にも分かりやすく知ることはなかなか敷居の高いことと思ってきた。
本書では、関わった多くの人たちの動きが時系列で分かりやすく、かつ臨場感をもって書かれているので、一気に読むことができるし、その事実の迫力に圧倒される。
日本では、行政も事業者も「安全」よりも「採算」を優先する道を選んでいた。それは、人間が生み出した「原子力」というとてつもないパワーに対する「畏れのなさ」を表わすものだった。
世界唯一の被爆国でありながら、その「畏れ」がなかった日本人だったのだ。何回か今回の危機を予見する事故が起きていて、対応策を取っていれば、こういう状態にはならなかった筈なのは悲しい。
11.噂
私は最後まで誰が犯人かわからなかったのですが、真犯人よりも、何の罪の意識もなくああいうことを平気でしでかしてしまう女子高生たちの方が何倍も怖かった。
確かに二十年前ほど渋谷にいた女子高生たちはあんな感じでしたけど。
また、警察内部の所轄と本庁の確執も興味深かった。
マイナスイメージの情報はプラスイメージの情報の十倍のスピードで伝わるはその通りだと思います。
「他人の悪口」や「他社の悪口」を意図的に流すことで相手を再起不能に陥れるやり方は企業でも個人でもあると思います。
ストーリーは最後までハラハラドキドキで、読者を飽きさせない展開は、多少のもたつきも気にならず楽しんで読めました。
まさか、最後にあんなどんでん返しが待っていたとは想像すらでできませんでした。
最後の一言は鳥肌モノでした。
12.再開
物語の舞台は横浜北部の街。小学校時代の幼なじみが20数年の時を経て、とある事件をきっかけに再会を果たす。その運命と偶然の出会いが織りなす、推理小説です。
数ページ読んで思ったのですが、時間軸と場面展開が非常にユニーク。
小説は読み進めるにつれて、物語の枠組みとプロットが見えてくるのですが、この小説はその流れが非常に丁寧に作られており、正直どこかで読み止めることが出来ないような創りになっています。
あと、1ページ目から最終ページまでの時間軸が、過去にさかのぼることはありますが、今起きている話しの流れでは2週間程度の話しだというのも、ポイントなのかもしれません。
終盤にちょっと進むだけで、物語の中心は数日間の話しなんだよね。
女性1人と男性3人という組み合わせの妙が光っていると思います。
なにが、どう光っているのかは、是非とも手にとって読んで頂きたいと思います。
正直、ちょっと偶然が重なりすぎなんじゃないかと思う展開だと思いましたが、それは偶然じゃなくて必然だということが終盤に向けてどんどん解き明かされます。
そして、物語の最後、事実だけを考えると辛い結末のようにも思えますが、4人が再会したことによって新たに生まれた時の歩みが、明るいであろう将来展望につながります。
13.おいしいごはんが食べられますように
仕事ができず、当たり前のように業務に穴をあけ、誰かが埋め合わせをし、繫盛期でも決して残業をしない、そして求めている量の仕事は終わらせない。その上で、負担はその場で責任感がある人間、あなたが背負う。そんな人を排斥しようとするのは、悪い事ですよね?
この話のモノローグで語られるのはそんな主人公と、もう一人の同僚の話です。
恐ろしく可愛い女の子の内面が一切語られず、また、その女の子が職場環境を変えるスーパーウーマンでもありません。
ですが、現実に近い世界の企業の話として、そういった可愛げのある女性は恐ろしい力を持ちます。
それは無責任な上司による愛玩物としてかもしれませんし、「良いひと」を排斥するのは道徳的に良くない、という鎖を集団に縛り付けるからかもしれません。
主人公二人が社会生活の中、多くのものを取りこぼしている中で、対照的な愛される弱者の話。
これを読んでいるあなたがどちら側なのか、あるいは、モノローグに語られない視点の人なのか。きっと誰かにはなれるでしょう。
14.ナイルパーチの女子会
女性ならではの~という意見が多いようですが、私は女性だけに限った話ではないと思いながら読みました。
無責任なものだとはわかっていても周囲の評価がどうしても気になってしまう人、自分の軸を他人からの承認に求めがちな人、物事がうまくいかないのや他人に対するいらだちを「女は、あるいは男は~だから」などと大きな主語の中にざっくり片付けてしまうことに違和感がある人は、読んでいて胸がキリキリするのではないでしょうか。
そういう人物像であることがあてはまらない人は今の世の中あまりいないと思いますので、それだけにおすすめです。
これは女友達がほしい女の物語として捉えるとわりとわけがわからないし、単なる狂人の話なんですが、自分を無条件に認めてくれる人に女友達という呼び名をつけたい人の物語として考えると少しわかりやすくなると思います。
かなり極端な展開や登場人物の設定なので、ついていけない・理解できないというのもわかりますが、それでも「自分にもあるある」と感じられるところが多かったです。怖かった。そしておもしろかった。
15.リカ
知人から紹介されて読み始め、その狂気に感情を揺さぶられた。
読後感はいうまでもなく呆然。読書している間は正に食い入るように読んでいた。瞳と本の距離がこれほどに狭まったのは久々だった。
まず、このリカという作品の時代背景として、パソコンが流通し始め、出会い系サイトというのが密かに流行っていた時代だ。
今ではなんてことないインターネットだが、個人情報の保護の重要性を感じさせてくれる。ネットがなければ繋がるはずのなかった縁が繋がってしまい、闇に引きずり込まれてしまった、というのがとても上手いと感じた。
これが執筆されたのが大体2000年度初頭。アングラ感がまだまだ漂うネットの世界と、行動原理がまるで読めない存在リカを上手く組み合わせた文字通りの怪作品だ。
構成として、坂井に出会い系サイトの教授を受けているシーンは純粋に興味深いし、出会い系で日常にスリルを求める感じも楽しい。リカに電話番号を教えたところから始まる日常や精神の崩壊は非常に詳細に描かれている。
ファックスからの書類、ドアに張り付けられた髪の束、娘の亜矢の誘拐……背中に塗られた謎の赤い十字。そして豊島園での邂逅。ここで改めて気づきました。作中では序盤から名前がでているリカも、初めて顔を突き合わせて会うのは300ページを超えてからなのだと。なるほど、ネットを介して電話やメールで繋がることのできる世界観を上手に使っている、上手いなぁと思った。ネットの恐怖をしめす当第一の作品だと思う。
16.悪人
人間は誰しも悪人の部分をこころに抱いているのかもなと考えさせられた。ほんの些細な偶然の重なりによって人生が変わる様を見事に描いている。
法で裁かれる立場の人間だけが悪人では決してない。祐一と光代がもう少し前に出会っていれば二人は幸せになれたのだろうか?
祐一は、本当に孤独だっただろうか。
祖母の祐一への愛に、もっと深く気づくことはできなかっただろうか。
祖母は、祐一への愛をもっと、もっと深く伝えることはできなかっただろうか。
佳男は、佳乃への愛を、もっと、きちんと伝えることは、できなかっただろうか。
大切な人を失ってからでは遅すぎる。
あなたを愛している、その気持ちを、本当に大切な人に、もっと深く相手に届くように、伝えよう。そう思った。
17.小学五年生
著者の作品には、小学五年生を主人公にしたものが多い。その意味で、著者
の真骨頂といえる一冊かもしれない。小学四年生でも六年生でもなく、五年
生である理由は、あとがきでも書かれているように、著者にとっても理由
を筋道立てて説明するのは難しいという。
ただ、この頃は、女子が男子よりも急に大人びてしまい、そんな女子から
見ればまだまだ「ガキ」な男子も、女子をほのかに意識し始めたり、自我
が芽生えて親との距離も微妙に広がってきたり、性にも関心を持ち始めた
り、先生の言うことが絶対でないことに気づいてきたり、それに、友だち
の間でもグループ化したり、あるいは私立中学の受験を意識し始めたり…
と、これから迎える思春期の入口に立ったような時期である。
もう決して綺麗で純粋な子どもだけの世界ではない。
また、著者の他の作品同様、主人公の少年がとっても格好いいのである。
男らしくて、正義感が強くて、不器用で、優しくて。この少年たちに、今回
もやっぱりホロっとさせられてしまった。17編いずれの作品も素晴らしく、
著者のプロ作家としての力量に今回も脱帽するばかりである。
18.彼女は頭が悪いから
なんとも気分の悪い小説だ、と思いながら読むのをやめられず一気に読んでしまった。
2016年に起きた東大生東大院生5人組による集団強制わいせつ事件がモチーフ。
加害者の1人は「彼女は頭が悪いから」と言い訳したそうで、この発言を軸に物語が編み出される。
相手は東大ではなく、東大の自分より頭が悪いから…
相手は女であり、男の自分より頭が悪いから…
バカにしてもよい、何をしてもよい、
被害者もそのヒエラルキーを受け入れてるから大丈夫、という考え。
ものすごくおぞましいが、東大に限らず世の中に勝手な序列が作られているのは真実である。
そして、序列を崩そうとすると、崩そうとしてるように見えると、ものすごいハレーションがおきるのが今の世の現実だ。
この事件の被害者に東大狙い?ついていくほうが悪い勘違い女という批判が堂々とされたように。
ヒエラルキーからふわっと浮き上がっている作中の山岸遥という存在が光っている。
加害者目線からは「変な人」に見えているが実に冷静。
彼女のように一歩ひいて世の中の当たり前を考え直してみたい。
19.なめらかな世界と、その敵
星新一ショートショートをより美しく、高画素化したような作品。
文字をなぞるとそこにある世界が繊細で綺麗な映像と共に脳内で再生される。するすると頭に入ってくる物語は非常に読みやすく、各短編が1本の映画のような完成度。それを続けて読む私達は、まさに複数の世界をグラデーションの如くなめらかに移り飛んでいる。どこまでも突き進むストーリーと、それを構成する1行、1文字に隙がなく、存分にSFを味わえる美しい1冊。
全編それぞれの魅力があり大好きですが、特にお気に入りなのは以下の三編です。
「なめらかな世界と、その敵」
「乗覚」という設定だけでも非常に面白いのに、「乗覚障害」という深みまで持っていく…天晴れです。冒頭の一文から惹き付けられました。一体何が起こっているんだと。また、その乗覚障害を抱える人物の心情がとても伝わってきて、この世界にはもちろん「乗覚」はないですから、決して理解し得ないはずなのにどうしてか共感してしまう。終盤は描写とともに胸が痛みつつも爽やかな読後感を与えてくれました。
「美亜羽へ贈る拳銃」
人物達のそれぞれへの思いが残酷なほど綺麗に一方向なのがとても美しい。中盤の神冴美亜羽の人を好きになることについての台詞も興味深かったですし、短編とは思えないほどの充足感を得られました。脳科学というテーマがもう好きなのですが、そこに人間模様と巧みな心理描写を入れてこられてはたまりません。
「ひかりより速く、ゆるやかに」
設定がそもそも好きなのですが、シンプルには進まない感情が絡んでくる場面が特に人間の熱を感じさせました。ちょくちょく挟まれる部分はそういう意味か、と理解したあたりからページをめくる手が止まりませんでした。晴れやかで心地よく澄み切ったようなラストで、この一冊を締めくくるのに相応しい作品でした。とある人物が終盤直接は登場しないところも語りすぎない工夫がなされており非常に好みでした。全部全部明かさないことも文学の醍醐味だと思います。
20.猫を処方いたします。
この本を読んでみると、やはり私と同じように猫を飼う不安な主人公が出てきたりと、初めて猫を飼う・猫があまり好きではない人が、猫好きに変わっていく様がとてもよく表現されていました!
好きなシーンやセリフが沢山あるのですが、それを書くとネタバレに繋がるので詳しい感想は難しい。
単にかわいい、ほのぼのだけではなく、いきものだからこそのほろ苦さや寂しさもあり、それをひっくるめての心強さと希望があるお話です。
最初はちょっと変わったおかしなお話しだなぁと思いながらも、猫好きには分かる分かる!と共感できる出来事にどんどん引き込まれ、最後は涙が溢れて止まりませんでした。
連作ではあるけれどそれぞれ短編で纏まっているので読みやすいのでぜひ。
猫を飼っている人、以前飼った事がある人、飼った事がなくても猫が好きな人におすすめしたいです。
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おわりに
いかがでしたでしょうか?
どの本もオススメなので良ければご一読ください。
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