売主の大半が見落とす|囲い込みで300万円失う3つのサイン
投資用ワンルームを売りに出したのに、内見も申し込みも来ない。担当者は「今は市況が悪い」と繰り返す。その沈黙の正体は市況ではなく、囲い込みであることがある。
そして囲い込みは、売主から見えないように設計されている。だから気づいた時には、手元に残る金額が数百万円単位で削られている。
囲い込みが起きる理由は、市況ではなく手数料の構造にある
仲介会社の報酬は宅地建物取引業法46条と国土交通省告示で上限が決まっている。売買価格400万円超なら「価格×3%+6万円+消費税」だ。
問題はここから先。売主からも買主からも受け取る「両手仲介」なら、この報酬が2倍になる。
だから一部の会社は、他社が連れてくる買主を意図的に遮断する。自社で買主を見つけるまで時間を稼ぐ。これが囲い込みだ。
囲い込みは「売れない状態」ではない。「売らせない状態」である。
具体的に計算する。2,000万円で売れるはずのワンルームを、囲い込みで3か月動かさない。そのうえで「反響がないので」と1,700万円まで下げさせる。
このとき会社が受け取る報酬は、1,700万円の両手で約125万円(税込)。もし2,000万円で他社客に片手で売っていれば約72万円だ。
会社は約52万円得をして、売主は300万円失う。 これが囲い込みの経済的な正体である。
囲い込みを見抜く3つのサイン
売主側には、業者の内心を推測せずに事実だけで確認できる手段が3つある。
■ 登録証明書が届かない、または期限を過ぎている — 専任媒介・専属専任媒介を結んだ会社には、指定流通機構(レインズ)への登録義務がある。期限は法定で決まっている。
専属専任媒介:契約日の翌日から5営業日以内
専任媒介:契約日の翌日から7営業日以内
一般媒介:登録義務なし
登録が済むと、会社は売主に「登録証明書」を交付する。この書面が期限を過ぎても出てこない会社は、その時点で法定義務を果たしていない。
催促して初めて出てくる、あるいは日付が後追いになっている。これが1つ目のサインだ。
■ 取引状況が「公開中」以外になっている — 登録証明書には、売主専用のIDとパスワードが記載されている。これを使って「売却依頼主用物件確認」画面にログインすれば、売主自身がレインズの登録内容を確認できる。
確認すべきは取引状況(ステータス)だ。区分は3つに限られている。
公開中:他社からの紹介依頼を原則拒否できない状態
書面による購入申込みあり:原則として紹介を断れる状態
売主都合で一時紹介停止中:売主の意向を前提に表示できる状態
ここで「書面による購入申込みあり」や「売主都合で一時紹介停止中」になっているのに、売主が申込書を見ていない、停止を頼んでいない。
売主の認識とステータスが食い違っていれば、それは事実として異常である。 これが2つ目のサインだ。
■ 報告書の中身が「反響」だけで、他社名が一切出てこない — 専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、売主への業務報告が義務づけられている。
囲い込みをしている会社の報告書には共通点がある。ポータルサイトの閲覧数など自社で作れる数字ばかりで、他社からの物件照会件数が出てこない。
3か月動かない物件に他社照会が0件ということは、実務上ほぼ起きない。「他社からの問い合わせは何件で、どう回答したか」を書面で求めた瞬間に、報告のトーンが変わる会社がある。
これが3つ目のサインだ。
2025年1月、囲い込みは指示処分の対象になった
ここは押さえておく価値がある。2025年1月1日施行の宅地建物取引業法施行規則改正で、囲い込みの扱いが変わった。
専属専任・専任媒介物件の実際の販売状況とレインズの登録ステータスに相違がある場合、宅建業法65条に基づく指示処分の対象になることが明確化された。
つまり売主は「疑っている」ではなく「登録状況と実態が違う」という事実で話ができる。感情で戦う必要がなくなった。
売主が陥る3つのNG行動
■ 一般媒介にすれば囲い込まれないという思い込み — 一般媒介にはレインズ登録義務がない。報告義務もない。結果として、どの会社も本気で動かず、売主は状況を検証する手段そのものを失う。
囲い込み対策として一般媒介を選ぶのは、監視カメラを外して防犯するのと同じだ。
■ 最も高い査定額を出した会社に任せる — 査定額は約束ではない。高値で媒介契約を取り、動かさず、値下げに誘導する手口は今も残っている。
見るべきは査定額そのものではなく、その金額の根拠となる成約事例が提示されているかである。
■ 売り出し3か月以内の値下げ提案を受け入れる — 値下げを検討する前に確認する順序がある。レインズのステータス、他社照会件数、内見数。この3つを潰してからでなければ、値下げは囲い込みの尻拭いになる。
動く前に、状況だけ整理する
売却するかどうかを決める前に、まず自分の物件が今どういう状態に置かれているかを知る。ここが出発点だ。
「レインズ登録状況セルフチェックリスト」を無料で配布している。 登録証明書のどこを見て、ステータスをどう照合し、報告書で何を要求するかを1枚にまとめたものだ。
受け取りは下記のLINEから。電話番号は不要、完全匿名で構わない。
LINE ID:@874gqomt(投資マンション売却 匿名相談)
売却を勧めることはしない。売らない判断も同じ重さで扱う。オーバーローン、サブリース、管理費滞納など、人に言いにくい状態のまま相談してもらって問題ない。
まずは「いま囲い込まれていないか」だけを一緒に確認する。それだけでも、手元に残る金額は変わる。
FAQ - よくある質問
Q1. 売主本人がレインズを見ることはできますか?
A. できます。専属専任・専任媒介の登録証明書に記載された売主専用IDとパスワードで「売却依頼主用物件確認」画面にログインすれば、登録内容と取引状況を確認できます。
Q2. 登録証明書をもらっていない場合はどうしますか?
A. 交付を書面で請求します。専属専任は5営業日、専任は7営業日が登録期限なので、経過していれば期限超過の事実を明示して回答を求めます。
Q3. ステータスが「書面による購入申込みあり」でした。囲い込み確定ですか?
A. 確定はしません。本当に申込みが入っている可能性もあります。申込書の写しの提示を求め、存在しなければ実態と登録の相違になります。
Q4. 囲い込みが疑われる場合、どこに相談できますか?
A. 免許行政庁(都道府県の宅建業担当課または地方整備局)が窓口です。2025年1月以降は宅建業法65条の指示処分の対象として扱われます。
Q5. 媒介契約は途中で解除できますか?
A. 契約期間は最長3か月で、更新しない選択が可能です。期間内の解除は契約条項と費用償還の定めによるため、契約書の該当条項の確認が先になります。
Q6. 一般媒介と専任媒介、どちらが有利ですか?
A. 検証手段の有無で決まります。専任はレインズ登録義務と報告義務があり、売主が事実を確認できます。一般はどちらもありません。
出典・参考文献
公益財団法人東日本不動産流通機構「媒介契約制度」 https://www.reins.or.jp/contract/
公益財団法人東日本不動産流通機構「よくあるご質問(売却依頼主用物件確認)」 https://www.reins.or.jp/qa/
不動産ジャパン(公益財団法人不動産流通推進センター)「レインズの取引状況(ステータス)管理」 https://www.fudousan.or.jp/keywords/vol42/index02.html
宅地建物取引業法34条の2(媒介契約)、46条(報酬)、65条(指示処分)
2025年1月1日施行 宅地建物取引業法施行規則改正/宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(34条の2関係)
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