売主の9割が知らない|囲い込みを3分で見抜く3つのサイン
「そろそろ売ろうか」と思いながら、まだどこにも相談できていない。
その迷っている数か月のあいだ、あなたの部屋は買主から意図的に隠されている。
これは感情論ではない。2025年1月、国はこれを行政処分の対象になる行為として明確に位置づけた。
囲い込みは悪徳業者の例外ではない。報酬構造そのものだ
仲介手数料の上限は、売買価格が400万円を超える場合で「価格×3%+6万円+消費税」。
2,000万円の1Rが成約すれば、売主からだけ受け取る片手取引で約72.6万円。買主も自社で見つける両手取引なら約145.2万円。
つまり他社に買主を紹介させないほうが、同じ1件で売上が単純に2倍になる。
囲い込みは「悪い担当者がやること」ではなく、「放置すると得をする側に傾く構造」だ。だから制度で潰しにいった。
イタンジ社の調査では、2025年1月から処分対象になった囲い込みについて、およそ6割が「受けた」「見聞きした」経験があると回答している。例外どころか、業界の日常に近い。
2025年1月、囲い込みは指示処分の対象になった
令和6年6月に宅地建物取引業法施行規則が改正され、令和7年1月1日から、宅建業者にはレインズへの取引状況(ステータス)の登録が義務づけられた。
実際の販売状況と登録ステータスに相違があれば、宅建業法第65条第1項に基づく指示処分の対象になる。
登録されるステータスは3区分だけだ。
公開中
書面による購入申込みあり
売主都合で一時紹介停止中
さらに令和7年1月4日から、レインズ登録時に売主へ交付される「登録証明書」に2次元コードが記載され、売主が自分のスマホから直接ステータスを確認できるようになった(国土交通省 報道発表)。
売主が自分で確認できる。ここが決定的に変わった点だ。
囲い込みを見抜く3つのサイン
■ 登録証明書と2次元コードを自分から渡してこない — 専任媒介は契約日から7日以内、専属専任媒介は5日以内(いずれも休業日を除く)にレインズ登録が義務。登録すれば証明書が発行される。
こちらが催促するまで出てこない会社は、売主に見られたくないと考えている。まずここで9割ふるいにかけられる。
■ ステータスが「売主都合で一時紹介停止中」になっている — あなたが停止を頼んだ覚えがないのに、この表示になっている。これが囲い込みの最も分かりやすい痕跡だ。
「公開中」以外の表示を見た他社は、その物件への客付けを止める。買主候補が構造的に消える。
■ 報告が「反響はあります」で、数字がひとつも出てこない — 専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上の業務処理状況の報告義務がある(宅建業法第34条の2第9項)。
問い合わせ件数・内見件数・申込件数。この3つを数字で言えない報告は、義務を形だけ満たした報告であって、判断材料にはならない。
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囲い込みで売主が失う金額を試算する
査定2,000万円の1Rが、3か月ものあいだ実質的に市場へ出ていなかったとする。
売主は焦る。担当者は「反響が弱いので価格を見直しましょうか」と言ってくる。1,850万円で成約。差額は150万円。
そこへ保有コストが乗る。返済と管理費・修繕積立金の持ち出しが月2.5万円なら、3か月で7.5万円。
さらに税率が効く。譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年以下なら短期譲渡で39.63%、5年超なら長期譲渡で20.315%(短期譲渡所得・長期譲渡所得の税率)。
判定は「売った日」ではなく「売った年の1月1日」。ここを1年ずらすだけで税率がほぼ半分になる局面が実在する。囲い込みで数か月を溶かすと、この分岐点をまたぎ損ねる。
売主が陥るNG行動と、その回避策
■ 一括査定で最高額を出した会社にそのまま任せる — 査定額は売れる金額の保証ではない。媒介契約を取るための数字だ。高い査定を出した会社ほど、後から値下げを迫る動機を持つ。
回避策は単純だ。査定根拠(成約事例・想定賃料・利回り)を書面で出させ、根拠の薄い会社を落とす。
■ 専任媒介を、何も確認せずに更新し続ける — 媒介契約の有効期間は最長3か月。自動更新はできず、更新には売主の申し出が必要だ。この3か月は、売主が主導権を取り戻せる唯一の定期タイミングになる。
回避策は、更新の前にステータス・問い合わせ件数・内見件数の3点を数字で提出させること。出せない会社は更新しない。
■ 売り急ぐ理由を、最初に全部話してしまう — 「返済がきつい」「早く手放したい」を初回で伝えれば、価格交渉の主導権はその瞬間に相手へ渡る。
回避策は、理由を語らず条件だけ伝えること。希望価格と期限。この2つで足りる。
囲い込みを疑ったときの手順
登録証明書の2次元コード、またはID・パスワードで自分の物件のステータスを確認する
「公開中」でなければ、いつ・誰の判断で変更したのかを書面で回答させる
直近の報告履歴(回数と内容)を確認し、法定頻度を満たしているか照合する
改善がなければ、媒介契約の有効期間満了に合わせて会社を切り替える。期間途中の一方的な解除は費用償還の論点が生じるため、満了のタイミングが最も安全だ
悪質と判断したら、免許行政庁(各都道府県の宅建業担当課)へ相談する
囲い込みは、売主が確認していないという前提の上でだけ成立する。確認する売主の物件は、そもそも狙われない。
FAQ - よくある質問
Q1. 一般媒介ならレインズに登録されますか?
A. 一般媒介にレインズ登録義務はありません。登録するかは会社の判断です。ステータスで管理したいなら専任・専属専任を選ぶ必要があります。
Q2. 登録証明書をなくしました。確認できませんか?
A. 媒介契約を結んでいる会社に再交付を求めてください。応じない場合、その対応自体が判断材料になります。
Q3. サブリース中でも売却できますか?
A. できます。ただし賃貸借契約が買主に引き継がれるため、収益条件が価格に直結します。契約書の解約条項と手数料率を先に確認してください。
Q4. 残債が売却額を上回っています。売れませんか?
A. 差額を自己資金や他の手当で埋めて抵当権を抹消できれば売却は成立します。まず正確な残債と査定レンジを突き合わせるのが先です。
Q5. 相談したら売却を勧められますか?
A. 保有継続が有利な局面では、そう伝えます。売り時をずらすだけで税率が変わるケースがあるためです。
Q6. 匿名でも相談できますか?
A. できます。物件の所在と築年、残債、家賃だけで初期の判断はつきます。電話もかけません。
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出典・参考文献
国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00087.html
国土交通省「(専属)専任媒介契約を締結したら レインズの『ステータス管理機能』を活用しましょう」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001854004.pdf
公益財団法人 不動産流通推進センター/レインズ「売却依頼物件のレインズ登録内容が確認できます」 https://www.reins.or.jp/pdf/info/gaiyo/annaisho.pdf
短期譲渡所得・長期譲渡所得の税率 https://www.nomu.com/tax/sell/joto.html
イタンジ株式会社「2025年1月から処分対象となった不動産の『囲い込み』、およそ6割が『受けた』『見聞きした』経験あり」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000303.000014691.html
