売主の9割が知らない|囲い込みを見抜く3つのサイン
「3ヶ月経つのに内見が2件。やっぱりワンルームは売れないんだ」——そう思わされているなら、あなたの物件はそもそも市場に出ていない。
売れないのではない。売らせてもらえていない。
投資用1R/1LDKの売却で起きているのは、相場の問題ではなく情報の遮断だ。売主側の立場で言い切る。囲い込みは、売主が自分の手で3分で見抜ける。
「反響ゼロ」の正体は、業者の取り分の最大化
仲介手数料は国土交通省の告示で上限が決まっている。売買価格400万円超なら「価格の3%+6万円+消費税」。
ここが起点だ。売主からだけもらえば1件分。買主も自社で見つければ2件分=収入がそのまま倍になる。
だから他社に紹介せず、自社の客が見つかるまで情報を止める。これが囲い込みだ。
囲い込みは「売れない」のではなく「売主の売却機会を業者の利益と交換している」行為だ。
1,800万円の区分で計算すれば、片手なら約60万円、両手なら約120万円。この差額が、あなたの3ヶ月を溶かしている。
2025年1月、囲い込みは行政処分の対象になった
ここは重要なので正確に書く。
2024年6月に宅地建物取引業法施行規則が改正され、2025年1月1日に施行された。同時に「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」も改正され、囲い込みが確認された場合は指示処分の対象であることが明確化された。
つまり今の囲い込みは、グレーな商慣習ではなく法令違反として指導・処分され得る行為だ。売主が指摘する法的な足場は、すでにある。
■ レインズ登録は「いつまでに」が法律で決まっている — 宅建業法第34条の2により、媒介契約の種類ごとに登録期限がある。
専属専任媒介:契約締結日の翌日から5日以内(休業日等を除く)
専任媒介:契約締結日の翌日から7日以内(同上)
報告義務:専属専任は1週間に1回以上、専任は2週間に1回以上
この日数を過ぎている時点で、交渉の材料は売主側にある。
囲い込みを見抜く3つのサイン
■ 登録証明書を渡してこない担当者は、それだけで黒に近い — レインズに登録すると「登録証明書」が発行される。ここに記載されたIDで、売主は売却依頼主専用の確認画面にログインできる。国土交通省が制度として導入した仕組みだ。
専任・専属専任を結んだのに証明書が手元にない。渡す気配もない。この一点で担当者を疑って構わない。
「システムの都合で」「後日まとめて」は理由にならない。登録は法定義務で、証明書はその証拠だ。
■ ステータスが勝手に「紹介停止」へ書き換わっている — 確認画面には取引状況が3つのいずれかで表示される。
公開中:他社からの紹介を受け付けている状態
書面による購入申込みあり:書面で申込を受けた状態
売主都合により一時紹介停止中:売主の事情で紹介を止めている状態
ここが最大の急所だ。申込を聞いていないのに「購入申込みあり」。停止を頼んでいないのに「一時紹介停止中」。これは囲い込みの典型パターンそのものだ。
レインズ利用ガイドライン(令和7年1月1日改正版)では、売主都合が解消した場合、その翌日から2日以内(休業日を除く)に「公開中」へ戻すと定められている。放置されているなら、意図的だ。
■ 他社に電話させると、業者の建前が崩れる — 友人や親族に頼み、別の不動産会社経由で自分の物件を問い合わせてもらう。返ってくる答えで判定できる。
「商談中です」「今は紹介できません」——あなたが商談を知らないなら、その時点で確定に近い。
ポータルサイトに載っているのにレインズが停止中、という組み合わせも同じ。集客は自社だけでやる、という意思表示だ。
3つのうち1つでも当てはまるなら、媒介契約の見直し交渉に入るべき段階だ。
囲い込みの疑いが出た時点で、感情的に詰めるのは悪手だ。相手は手続きの専門家で、こちらの怒りは価格交渉のカードに変えられる。手順を踏んで潰すのが正しい。
匿名で状況だけ見せてもらえれば、どのサインが出ているかは判定できる。電話も訪問もなし、テキストだけで完結する相談窓口を用意している。
▶ 投資マンション売却 匿名相談:LINE @874gqomt
(登録証明書の見方・媒介契約の切り方まで、テキストで確認できる)
売主がやりがちなNG行動と、その回避策
■ 一般媒介にすれば安心、は半分外れている — 一般媒介にはレインズ登録の法的義務がない。「囲い込まれないように一般で」と選んだ結果、どこにも情報が出ないという逆の事態が起きる。
回避策は単純だ。専任・専属専任を選び、登録証明書の交付と確認画面のIDを契約時に書面で約束させる。一般を選ぶなら、レインズ登録を特約で明記させる。
■ 一番高い査定額の会社に預ける — 査定額は約束された売値ではない。媒介契約を取るために高く出す会社は実在する。
預けた後、2ヶ月で「反響がないので価格を見直しましょう」が来る。最初から下げる前提の数字だったということだ。
回避策は、査定根拠の成約事例(成約日・専有面積・階数・築年)を出させること。出せない会社は預けるに値しない。
■ 3ヶ月の契約更新を惰性で流す — 専任・専属専任の契約期間は上限3ヶ月。ここが唯一、売主が主導権を取り戻せるタイミングだ。
期間満了の2週間前には、レインズのステータス履歴・問い合わせ件数・内見数を書面で出させる。数字を出せないなら更新しない。それだけで囲い込みは成立しなくなる。
売り時は「譲渡した年の1月1日時点」で決まる
税金の話も外せない。個人が不動産を売った際の譲渡所得の税率は、所有期間で二段階に分かれる。
短期譲渡所得(5年以下):39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
長期譲渡所得(5年超):20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
判定は引渡日ではない。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかで決まる。
利益300万円なら、短期で約118万円、長期で約60万円。58万円の差が、売り出し時期の選び方だけで生まれる。囲い込みで3ヶ月潰されると、この年またぎを逃す。
まとめ:売主が持つべき3つの武器
登録証明書とIDを、契約時に必ず受け取る
確認画面のステータスを、週1で自分の目で見る
契約更新のタイミングで、活動実績を数字で出させる
この3つを実行するだけで、囲い込みは事実上できなくなる。業者が教えないのは、教えると困るからだ。
売却を検討していることを社内や周囲に知られたくない段階でも、状況の棚卸しだけは先にできる。電話なし・完全匿名・売却を急かさない方針で相談を受けている。
▶ 投資マンション売却 匿名相談:LINE @874gqomt
媒介契約書とレインズの画面キャプチャがあれば、囲い込みの有無は判定できる。売却の是非そのものから一緒に整理する。
今後も、サブリース・オーバーローン・修繕積立金といった売主が詰まる論点を記事にしていく。フォローしておけば見落とさない。
FAQ - よくある質問
Q1. レインズは売主本人でも見られますか?
A. 見られる。登録証明書に記載されたIDで売却依頼主専用の確認画面にログインでき、登録状況と取引ステータスを確認できる。
Q2. 登録証明書をもらえていない場合、どうすればいいですか?
A. 担当者に交付を書面で請求する。専任・専属専任で登録期限を過ぎているなら、宅建業法上の登録義務違反にあたり得る。免許行政庁への相談も選択肢になる。
Q3. 囲い込みが確認されたら、業者はどうなりますか?
A. 2025年1月1日施行の改正により、囲い込みが確認された場合は是正の指示処分の対象となる。改善されない場合はより重い処分に進み得る。
Q4. 一般媒介と専任媒介、囲い込み対策としてどちらが有利ですか?
A. 専任・専属専任の方が有利になる場合が多い。レインズ登録義務と定期報告義務があり、確認画面で監視できるためだ。一般媒介には登録義務がない。
Q5. 所有5年目ですが、今売ると税率はどうなりますか?
A. 判定は譲渡した年の1月1日時点。この日時点で5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%が適用される。年をまたぐだけで税率が変わるため、引渡時期の設計が必要になる。
Q6. ローン残債が売却価格を上回っていても相談できますか?
A. できる。残債と売却見込額の差額をどう埋めるか、金融機関との調整順序を含めて整理する必要がある。数字を見ないまま判断するのが最も危険だ。
出典・参考文献
国土交通省「レインズにおける取引状況の登録制度の導入と売却依頼主専用確認画面の提供について」 https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000129.html
公益財団法人 東日本不動産流通機構「媒介契約制度」(レインズ登録期限・報告義務) https://www.reins.or.jp/contract/
公益社団法人 中部圏不動産流通機構「レインズ利用ガイドライン 令和7年1月1日改正版」 https://www.chubu-reins.or.jp/reinspdf/data/dc17_moushikomi.pdf
国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
