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3DGS実用化への道⑧ 建築ビズの新ワークフロー🧭CESIUM × ガウシアンスプラッティング『D5 Render XR Tour』徹底解説

こんにちは、STUDIO55技術統括の入江です。

建築ビジュアライゼーション制作において、大規模都市のビジュアル表現は、長年にわたり制作現場を悩ませてきたテーマの 1つです。

これまでにも、Unreal Engine 5Unity を活用し、都市・地理情報と連動する3Dプラットフォームである Cesium、そして日本の都市データ基盤である Project PLATEAU などを組み合わせた都市データ活用の制作フローを紹介してきました。

しかし、これらの手法はゲームエンジンを前提としたワークフローであるため、誰もが気軽に扱えるとは言い難く、実務においてはデバイス環境への依存や制作物の納品形式など、制作以外の部分にもいくつかのハードルが存在します。

近年、この状況を大きく変える可能性として注目されているのが、リアルタイム描画が可能な 3D Gaussian Splatting(3DGS)によるスキャン生成技術です。

大規模な空間を高密度に再現できるこの技術は、大規模都市表現のアプローチそのものを刷新する可能性を持っています。さらに近年は、AI技術との組み合わせによって、その生成手法や活用範囲も急速に広がりつつあります。

本記事では、Cesium を使った 3D Gaussian Splatting(3DGS)生成による都市表現の進化を例に、「D5 Render」に追加された XR Tour機能 を通して、大規模都市ビジュアライゼーションの新たな可能性を紹介します。


D5 Render XR Tour

D5 Render は リアルタイム・フォトリアルレンダリングに特化した最先端の建築ビジュアライゼーション向けソフトです。

『D5 Render XR Tour(エクステンデッド・リアリティ・ツアー)』は、2025年7月にリリースされた「D5 Render 2.11」で導入された機能です。
同時編集やクラウドベースのチーム管理などの協業機能を提供する「Teams」サブスクリプションの一部として、XR Tour が追加されました。

その後、D5 Render公式サイトのブログ記事で、「D5 Render 2.11」アップデートとして XR Tour 機能が紹介されています。

画像参考: d5render.com

「D5 3.0」(2026年1月頃)では、これまで Teams限定だった Spatial Tour(空間ツアー)や XR Tourの一部機能が Proプランにも拡張されました。
これにより、チーム向けの協業機能としてだけでなく、通常の有料ユーザーでも、ブラウザを通じた空間共有やプレゼンテーション用途として活用できるようになっています。

画像参考: digitalproduction.com

これは 単純な360°パノラマビューではなく、3D Gaussian Splatting(3DGS)技術を使って、複数の角度からレンダリングした画像をクラウド上で AI処理し、軽量3Dシーンとして生成します。
具体的には「エンドツーエンドの Gaussian Splatting サービス」として展開されるものです。

画像参考: d5render.com

リンクや QRコードで Webブラウザ上に没入的なウォークスルー体験を作成・共有できることから、これまでのようにクライアント側のデバイスを心配する必要はありません。

つまり、特別なアプリやVRデバイスは一切不要です。

🌐使用方法 - 実践例

準備として、セシウム(Cesium)の認証取得が必要になる前提条件は、これまでの UE5 等での使用と変わりません。

画像参考: cesium.com

セシウムのサイトにアクセスしてログインの上、トークンを作成します。それを D5 Renderの Settings の Cesium セクションから「Add Cesium Token」にペーストして保存することで使用ができるようになります。

詳しくは、下記ユーザーマニュアルのリンクを添付しておきますので、直接ご確認ください。

画像参考: docs.d5render.com

1️⃣チュートリアル: マルチカメラ撮影の設定

D5 Render 上部のツールバーにある「サイト」「Cesium(セシウム)」の項目があります。

Cesium(セシウム)

クリックで「Cesium(セシウム)」ダイヤログが起動します。

「Cesium(セシウム)」ダイヤログ

反映する場所は検索から指定します。
ここでは例として「Japan, Osaka」と入力し、ジオコーダで表示される候補のエンティティをクリックします。

japan, Osaka でざっくり検索

適切な場所を検索できたら、次にCesiumで使用するモデルデータを選択します。
「Japan 3D Building Data」は PLATEAUの 3D都市モデルですが、今回はよりリアルな都市表現が可能な「Google Photorealistic 3D Tiles」を使用します。

「Cesium(セシウム)」設定

「追加」で、都市データが読み込まれます。

Cesium が反映された作業画面

クラウドマークは、モデル操作の基点です。

Cesiumモデルの操作基点

このアイコンを使うと、読み込んだ大規模モデルの位置を整えたり、回転させたりすることができます。

Cesiumモデルのギズモ

この都市空間モデル上に、今後建設予定の高層ビルなどの建築モデルを予定地に配置します。これにより、新しい建築デザインが都市環境の中でどのように見えるかを、視覚的にシミュレーションすることが可能になります。
※ここでは説明用として仮想の配置を行っています。

3Dモデルの配置

「ツアー」をクリックします。

「ツアー」

「+」ボタンから「XRツアー」を選択。

「XRツアー」

画面の「編集」をクリック。

ツアー>XR編集

「ショットリスト」の + ボタンから「半球」を選択します。

被写体の高層ビルモデルに半球を配置し、大きさなどを調整します。
👉半球の無数の円錐状ポインターは カメラ位置を表しており、ガウシアン生成用の撮影ポイントです。

「プレビュー」から、複数カメラ視点の内容を確認できます。
👉 操作キー: WASD

「プレビュー」でカメラ設定を確認

💡補足解説: CG上のカメラアレイ撮影と仮想スキャン

ここで「マルチカメラ撮影 / Camera Array(カメラアレイ)」に関して、補足的に理解を深めるための解説を行っておきます。

先ほどの D5 Render に見られるショット設定は、もともと複数カメラを用いた物理撮影システムを中核にしたスタジオや技術サービスで用いられてきた手法です。

画像参考: xanglestudio.com

このようなカメラアレイ撮影スタジオの物理的な多視点撮影環境を、最初にCG上のスキャンと言う発想で切り開いたのが、Camera Array Tool for Blenderです。

画像参考: toppinappi.gumroad.com

2024年9月に登場したこのアドオンは、新たな「第三のスキャン手法」とも言えるワークフローの可能性を示唆しました。

  • 実物を撮影する → フォトグラメトリ

  • 動画や写真から空間を再構成する → 3D Gaussian Splatting

  • CGモデルからスキャンデータを生成する → 仮想スキャン

仮想空間上のCGモデルをGaussianスプラッティング用のポイントデータに変換することで、実写撮影を行わずに3DGS用のシーンデータを生成することが可能になります。
この発想の転換により、より多様な 3D データの活用や運用の道が大きく広がることが注目されています。

「Camera Array Tool for Blender」では、カメラの配置形状を複数のプリセットから選択可能で、D5 Render のショット設定に対応した形状も再現できます。

球体 (Sphere)
オブジェクトを中心に全方向からカメラを配置。人物や小物、建築模型を360°キャプチャする際に有効。
→ D5 Render の「球体ショット」に相当

半球 (Hemisphere)
上方向のみカメラを配置し、地面や台座を意識した撮影に適しています。
→ D5 Render の「半球ショット」に近い

キューブ / グリッド (Cube / Grid)
立方体の面方向にカメラを配置し、オブジェクトを多面から囲む形状。
→ D5 Render の「キューブ型ショット」に相当

さらに、カメラ数や角度、半径なども自由に調整可能なので、都市や建築モデルの周囲を囲む多視点配置も作れます。物理スタジオの制約がない分、カメラの自由度が高く、CGモデルに最適な仮想スキャン環境を簡単に構築できます。

一方で、Blender には Cesiumを直接読み込む公式機能はありません

そのため、建築・都市の大規模スキャンを扱う場合、「エンドツーエンドで Gaussian Splatting を処理できるサービス」として搭載した D5 Render の XR ツアーは、建築プレゼンテーションにおける新しい表現手法として価値を発揮します。

これにより、クライアント体験や意思決定プロセスの質を向上させる可能性が大きく開かれるのです。


2️⃣チュートリアル: ガウシアン・スプラッティング生成

では、設定したマルチカメラのレンダリングを行います。

マルチカメラセッティング画面

画面右上の「レンダリング中」アイコンをクリックします。

「レンダリング中」アイコン

「ツアーをレンダリング」ダイアログが開きます。
対象のテンプレートを選択して「レンダリング」をクリック。

「ツアーをレンダリング」

👉最大 2,500 枚の画像を使用することが可能。
👉 注意: プロジェクトは保存済みである必要があります。

レンダリングが完了したら、次に「共有」をクリックします。

「D5 クラウドに公開」ダイアログが開きます。
ここからは、先ほどのマルチカメラ撮影の複数視点のレンダリング画像をもとに、ガウシアン・スプラッティングデータの生成処理がクラウド上で行われます。

つまり、CGモデルを直接変換するのではなく、複数視点画像から空間を再構成するフォトグラメトリに近いプロセスが内部で行われていると考えると理解しやすいでしょう。

「D5 クラウドに公開」

デフォルトスムーズ精密の 3つの品質から選択できますが、ここではとりあえず「デフォルト」を選択した状態で「公開」ボタンをクリックします。

・デフォルト:(バランス型)一般的なツアー、クライアント向け

スムーズ:(操作性重視)大規模モデル、軽量端末での閲覧

精密:(高精細重視)近景確認、プレゼン用画像・動画

使い分けの目安

クラウドへのアップロードが完了すると、画面にその状況が表示されます。

アップロード完了画面

この後、立て続けにガウス生成の処理作業に入るため、しばらく待ち時間となります。

完了メールが通知されるので、ここからは画面を離れて別作業を行っても大丈夫です。

処理状況は Showreel 画面で確認ができます。
※ツアーの公開やホスティングは D5 Showreel プラットフォーム上で行われるため、生成されるリンクは D5 Renderドメインのものとなります。

Showreel

表示が Generating → Ready に変われば、処理は完了です。

ガウシアン生成完了画面

3️⃣チュートリアル: ガウシアンデータの編集

右上の三点マークから「Edit」をクリックすると、内容を編集することができます。

ドロップダウン項目

「D5 Render Interactive Editor」画面が開きます。

「D5 Render Interactive Editor」画面

先ほどの D5 Render 上の Cesium 空間が、複数カメラの視点から ガウシアン・スプラッティングとして再構成されていることが確認できます。

ガウス化されたデータ

ここでの編集内容は、

・ カメラ位置と見え方の設定
ガウスデータの必要範囲の整理
・ ウェブサイトや画像表示等のエフェクト追加

など、実務を想定した操作です。

例えば、デフォルトの背景は黒ですが、ここでは Background Color を白に変更すること等もできます。

背景カラーを白へ変更

ここで特に重要なのは、ガウスデータの整理です。

現在のデータにはフローターノイズなどの不要な要素が多く含まれており、このままではモバイル環境での共有時にエラーが発生する可能性があります。
そのため、軽量化を含めたデータ整理は、実運用において欠かせない工程となります。


🔦データ整理のポイント

  • 現在のデータにはフローターノイズなど不要な要素が含まれる

  • このまま共有すると、モバイル環境でエラーが出る可能性がある

  • 軽量化も含め、データ整理作業は必須


「Crop PLY File」をクリックします。

「Crop PLY File」

すると、SuperSplat が起動し、データリンクで自動反映されます。つまり、編集作業そのものは、SuperSplat で行う形です。

SuperSplat

Super Splat の操作方法については、以前の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

SuperSplatの操作で不要な箇所を削除し、データを整理します。

このように不要な部分を削除します。

続いて、整理したデータを保存して上書きします。

それによって、編集されたデータが D5 Render Interactive Editor にそのまま反映されます。

「D5 Render Interactive Editor」画面

必要最小限なエリアに絞り込むことで、より安全性を確保することができますので、参考にしてください。


🔦作業手順

  1. 不要な箇所を削除

  2. 整理したデータを保存し、元のファイルに上書き


その他、任意に画面に設定を加えます。

「Scene」の + アイコンには、2つの ホットスポットがあります。

「Media Hotspot」「Web Hotspot」

⚡Media Hotspot
画像や動画などの メディアコンテンツを空間内に表示するホットスポット
👉 
空間内の特定ポイントに 情報パネルとして配置できる

< 表示可能なメディア >
・画像(PNG / JPG など)
・動画(MP4 など)
・建築プレゼンでは以下の用途に使える
・デザイン説明パネル
・図面・パースの補足表示
・プロモーション動画の埋め込み

⚡Web Hotspot
クリックすると 外部Webページを開くホットスポット
👉 
XRツアーの空間から 外部情報へナビゲーションする役割

主な用途 >
・プロジェクトの公式サイト
・物件紹介ページ
・Google Maps
・YouTube動画

Media Hotspot で、D5 Render でレンダリングした画像を加えます。

Media Hotspot 設定
D5 Render レンダリング画像

画面のアイコンをクリックすることで、レンダリング画像が表示されます。

Media Hotspot の設定

4️⃣チュートリアル: XRツアーとして公開・共有

いよいよウェッブで内容をシェアする設定を行います。

画面上部の「Share」ボタンをクリックし、クラウドにアップロードされたリンクをコピーしてシェアします。

※リンクはぼかしています

また、「Generate QrCode」ボタンで QR コードを生成できます。

Generate QrCode

ダウンロードしたQRコード画像は、以下のビジュアルになっています。
※このQRコードはサンプルであり、実際にはリンクはありません。スキャンしても機能しません。

(参考)ダウンロードしたQRコードの画像

リンクや QRコードを共有することで、クライアントは場所もデバイスも問わず、気軽に3Dモデルを操作して内容を確認することができます。

QRコードからスマホで反映

XRツアーは、生成したコンテンツを QRコードやURLで簡単に共有できる便利な機能です。
スマートフォンでQRコードを読み取るだけで、ブラウザ上からインタラクティブな空間を体験できるため、プレゼンテーションや遠隔共有にも非常に有効です。

🔗「Download PLY」がもたらすガウスデータの拡張性

「Showreel」の Download PLY は、XRツアー(3DGS)で生成されたガウスモデルを外部ソフトウェアに渡すための出力機能です。

Download PLY

D5 Render が PLY データを直接インポートできるようになったのは「D5 Render 3.0(2026年1月リリース)」からの対応です。

以前のバージョンでは、3D モデルは一般的な3Dフォーマット(.fbx、.skp など)のみが対象で、Gaussian Splatting 系(PLY/GS)は読み込みできませんでした。

このアップデートにより、XRツアーやショーリールでクラウドから出力したガウスデータを D5 内で再インポート・編集できる ようになっています。

ダウンロードしたPLYを直接インポートした画面

多くのDCCではガウスデータの直接読み込みはできず、プラグインやアドオンが必要となることが多いため、この点でも D5 Render の独自性と先進性が際立つ ものとなっています。

Blenderにインポートした ガウス(PLY)データ

🧭建築ビジュアルは「体験」を共有する時代へ

これまで建築ビジュアルの共有は、静止画パースや動画によるプレゼンテーションが中心でした。
しかしXRツアーのような仕組みを使うことで、制作した空間を「体験として共有する」という新しい方法が現実的になってきています。

D5 Render Cesium

特にガウシアン・スプラッティングのような空間キャプチャ技術と組み合わせることで、実空間に近い密度のビジュアルをブラウザ上で軽快に閲覧できるようになり、これまでのCG制作とは異なるワークフローが見え始めています。

大都市のリアルなビジュアル表現も、これによってスピード感をもった建築ビジュアライズ制作が可能になってきます。

D5 Render
レンダリング設定画面
さまざまな表現 例
さまざまな表現 例
さまざまな表現 例

QRコード 1つで空間体験を共有できるという手軽さは、プレゼンテーションやリモート確認、さらにはマーケティング用途においても新しい可能性を持っています。

もちろん、公開範囲の管理やデータの扱いには注意が必要ですが、XRツアーのような仕組みは、建築ビジュアルの「見せ方」を一歩先へ進める技術の 1つと言えるでしょう。

今後、こうしたインタラクティブな共有方法が普及していくことで、建築ビジュアルは単なる画像制作から、空間体験を設計するメディアへと変化していくのかもしれません。