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成功体験からの脱却が課題、停滞期の王国ブラジル 2016スポニチ海外通信員コラム

2016年1月8日
通貨レアルは大暴落、経済状況は悪化の一途をたどるという極めてネガティブな幕開けの2016年なのだが、ブラジルのことだからオリンピック直前になるときっと盛り上がっていくことでしょう。

 2015年を振り返ってみると、リベルタドーレス杯はインテルナシオナル、コリンチャンス、クルゼイロ、サンパウロ、アトレチコ・ミネイロが出場して、最高順位がインテルの準決勝敗退だった。

 ブラジル全国リーグセリエAは、コリンチャンスが最終節を待たずに優勝を決め、2位のアトレチコ・ミネイロに12ポイント差をつけた。得点ランキングの1位と2位が、ベテラン勢の35歳のリカルド・オリヴェイラと31歳のヴァギネール・ラブというのが気になるところ。リカルド・オリヴェイラは活躍が認められて35歳ながらもセレソンに招集されるというご褒美までもらったが、もっと若手の台頭があって欲しいものだ。アメリカのMLSでプレーするカカーまでかり出される始末なのだから…。

 しかも、監督の交代は相変わらず激しい。第2節でグレミオのルイス・フェリッペ・スコラーリ監督が解任されてから第38節までで、20チーム中32人の監督が交代があった。2人以上の監督が代わったチームもあり、中でもゴイアスは4人が交代という荒療治をやってのけたものの2部降格を免れず。ゴイアスはゴイアニア州リーグ中、元日本代表の呂比須ワグナー監督が勝率7割5分でリーグ戦暫定1位だったにもかかわらず解任するという迷走から軌道修正できないままシーズンを終えた。最初から最後まで安泰だったのは優勝したコリンチャンスのチッチ監督くらいだった。

 そして、もう一つのビッグタイトルであるコッパ・ド・ブラジル(トーナメント方式)はパルメイラスが制覇した。シーズン途中にオズワルド・オリヴェイラ監督が退任し、代わって指揮を執ったクルゼイロで13、14年ブラジルリーグ連覇を成し遂げたマルセロ・オリヴェイラ監督が見事チームを立て直し、2016年のリベルタドーレス杯出場権を得た。

 センセーショナルなチームや選手の活躍があったわけでもなかったが、ビッグゲームがある時間は、あちこちで歓声が上がり、試合を見ずともゴールが入ったかどうかは瞬時にわかる“サッカーの国”自体に変わりはない。

 ただ、サンパウロでは、人々の話しを聞いているとセレソン離れが進んでいるように思える。ネイマールの人気は不動だが、7月のコッパ・アメリカでドウグラス・コスタがわずかに活躍したもののホスト国チリに負け、国民の心をとらえるにはほど遠かった。

 セレソンのほとんどは欧州で活躍して代表入りをする選手ばかりで、ブラジルリーグで活躍した選手がダイレクトにA代表でレギュラー争いをすることはほぼない現状だ。こんなことでブラジルサッカーは良いのだろうか、と育成部に力を入れるクラブも少なくはない。

 一つの例で言えば、育成部はU-13、U-15、 U-17と通常2学年単位でチーム編成する。それをU-16とU-17に分け、U-16専任のコーチを付け完全に分けて練習をすることで選手一人一人に細かい指導をするクラブもある。当然、経費はかさむが、いずれはプロチームを育成部からの選手で大部分を構成できるほどに持っていくことを目標にしている。これまでは、サッカー人口の多さを武器に、よい選手を集めて来るというやり方が通用したが、サッカーをする場所が減り、遊びの多様化とともに、かつてのような豊富な人材が減り、良い人材は取り合いが激化している現在、育成部の現場ではもっと危機感を持って取り組んでいる。ブラジルの十八番だったテクニックが落ちてきていることを実感している指導者は徹底したテクニックの強化をはかろうとしている。もちろん個人技で勝とうとしているわけではなく、高いテクニックに裏付けられたコンパクトでスピードのあるサッカーを目指す。他国が成長している中、ブラジルが王国だからと過去の成功体験だけにこだわり続ける時代は終わっている。

 さて、トップに君臨したブラジルは伸び悩みの時期にいる一方、サッカー新興国の日本は子供たちのサッカー人気が上がり、サッカー人口も増え、世界でも活躍する日本人選手も増え成長あるのみかと思っていたら、育成世代でプロを目指すようなレベルの子以外がサッカーを続ける環境が少ないという悩みがあることを聞いた。サッカーがそれほど盛んでない岐阜県の話しだが、小学校の少年団でサッカーの楽しみを覚えた子たちが中学生になり、中学のサッカー部に入るか、クラブチームに入るかという選択肢があるが、地元の中学にサッカー部がない子はどうすればよいのか。せっかくサッカーの楽しみを覚えながらも受け皿がないとなる。

 そんな状況を憂いた岐阜県揖斐郡大野町の大野サッカークラブの長屋団長は、地元の中学にサッカー部がない子たちがサッカーできるよう少年団の延長のチームを作るために3年かけてコーチを探し、町と掛け合って練習場所を用意した。3中学(大野、揖斐川、北和)からメンバーが集まり第一期生として1年生チームが発足したのだが、問題は中学のサッカー部でもクラブチームでもないため中体連の大会にもサッカー協会の大会にもエントリーできないというのだ。そんな状況の中でも小森、清水、2人のコーチは、仕事の合間をぬってボランティアで熱心に子供たちの指導をしている。無償で子供たちのために頑張っている草の根指導者にこそサッカーは支えられているのだろう。

 この先、少子化が進む日本で、人数が集まらずチームができないという問題はきっと発生していくだろう。だからこそ、つながりを断ち切ってはいけないし、小学校の時点でレベルが高い子以外の子達がサッカーを続ける選択肢を残せてあげたらよいのだが。

 ブラジルなど強豪国が、今強いのは、100年に渡る歴史の中で、草の根からトップまでがサッカーに対する経験と情熱をつないできたから。今すぐ大きな結果が出るわけではないかもしれないが、つながりを断ち切らなければ、次の世代、ひょっとすると2世代先の子孫たちの中にネイマールのような逸材が生まれる夢を持ち続けられる。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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