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コミュニティが盛り上がるとはどういうことか

コミュニティ研究をやっていると、この問をよく投げかけられます。誰だって自分のコミュニティが活性化してくれる方が嬉しい。しかしそうならない、なぜだ、ということですね。

ここでの盛り上がり、活性化を「メンバーからの積極的関与」とした上で、どうすればそうなるか考えてみたいと思います。


コミュニティは役に立つ≒価値があるか?

Haasら(2021)は、質問紙調査によってジョブエンゲージメントが高ければ、コミュニティへのエンゲージメントと「コミュニティは役に立つ」と感じる程度が高まることを示しました。また、この「役に立つ」という認知もコミュニティへのエンゲージメントを高める媒介効果があるということを明らかにしています。つまり、仕事熱心な方というのはそもそも馬力が高くてコミュニティ活動も同じように積極的になってくれます。また、そういう方は常に仕事に役立つものを探しているので、コミュニティが役に立つならば積極的に活用したいと考えるわけですね。

出所:何故かジョブ・エンゲージメン「ト」を書ききれないGPT-4oさんにて作成

このことが示唆するのは、「あなたのコミュニティはメンバーにどのような価値を提供していますか?」ということです。

人が集まるとそこはなんとなくコミュニティ「っぽく」見えます。しかしそこにメンバーが知覚する「価値」がなければ、積極的参加など望むべくもないということになります。

コミュニティは参加しやすいか?

Sedighiら(2017)の調査では、人が情報発信しない理由について述べられており、その主要な要因は「時間がない」「手間がかかる」「恥をかくかもしれない」などの理由でした。つまり、それを上回るくらいコミュニティに価値がなければそもそも誰も関わりたくなど無いのです。例えばあなたが街中で募金の呼びかけを見た時、もしかしたら募金はするかもしれません。しかしその団体に入り、メンバーの一員としてそれ以上の貢献をしようと思うでしょうか。逆に言えば、そのボランティア団体で活動する人にとっては、それだけの時間や手間がかかったとしても得られる何か(それはその人の利他性がそうさせるのかもしれないし、心からその社会課題を解決したいと思っているのかもしれない)があるということだと言えます。

価値を高め、参加を促すには?

Wengerら(2002)は「コミュニティの(略)成果がメンバーその他の関係者にとってどのような価値があるかは、領域(domain)によって決まる。」としています。ここでいう領域とは、そのコミュニティの存在理由と考えればわかりやすいでしょう。Wengerらは「領域に対するコミットメントのないコミュニティは、友人同士のグループに過ぎない。」と言い切っています。つまり、「自分たちは何のためにここにいるのか?」を答えられないコミュニティは、人を惹きつけることはできないということです。こう書くとなんだか大きく構えたような話に見えますが、そんなことはありません。字をうまく書けるようになりたいとか、歌をうまく歌いたいとか、そんな領域でもかまわないのです。大切なのは「自分たちは何のためにここにいるのか?」に答えることなのですから、その内容に大小も貴賤もないのです。

これは、「そんなことは当り前じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、コミュニティと言いながら実質的に1対多の関係性になっているような勉強会やサロンは世の中にたくさん存在します。また、領域をしっかりおいているつもりでも、どうしても自分(コミュニティマネージャーや運営企業)しか発信しない、というコミュニティもあるでしょう。なぜこうなるのでしょうか。

Sedighiら(2017)は電子ネットワーク上のコミュニティに参加する男女25名への聞き取り調査を通じて、知識提供者は「利他性」と「互恵性」、知識を受け取る者は「問題解決」を動機としてコミュニティに関与していることを示しました。ここでの問題解決とはこれまで述べてきた「価値」だと考えて差し支えないでしょう。ここでは、利他性と互恵性に注目したいと思います。つまり、誰かの役に立てるという思い、あるいは他のメンバーへのお返しとして、コミュニティへの積極的参加が促されるということです。しかしここで「恥をかくかもしれない」という恐れがメンバーの参加を躊躇わせます。コミュニティは様々な人がいますから、「自分なんかでは役に立たない」と思ったり「あの人に比べたら自分の言うことなど誰も聞かないだろう」などという心理が働くのです。

リーダーやコミュマネは何をすべきか?

これを何とかするのがコーディネーターです。実際の職務上の呼び名としてはコミュニティマネージャーやリーダーが該当するでしょう(当然そうでないこともあります)。コーディネーターはメンバーの能力や興味を把握し、必要なタイミングでコミュニティに刺激を与え(イベントしたりとかね)、メンバー同士を繋げ、コミュニティのレベル向上に努める存在です。

コーディネーターの仕事は「歩き回る」事です。コミュニティという場を使って、誰に、どんなことを、いつやってもらうのか、それを常に調整するためにはとにかく様々なメンバーと関わることが必要だからです。自分など役に立てないと思う人がいたとしても、実際にはコミュニティにおいて重要な知見や能力を持っているということは往々にしてあります。そのような人にスポットライトが当てることで、「恥をかくかもしれない」というハードルを越えてもらうのです。

コミュニティにおけるこのような実践を通じて、メンバー自身に「自分はこういうことができるのか」「こんなふうに人の役に立てるのか」という自己認識が生まれます。そしてそれは同時に、他のメンバーからもその様に見られるという事に他なりません。「あの事なら〇〇さんに聞くといいよ」という評判が広まると、その人がコミュニティの中で活躍できる場が自然と増えていくのです。このようなやり取りを通じて自信を深めたメンバーは、よりコミュニティで中心的な役割を担っていくようになります。こうした人を1人、2人と増やしていくことがコミュニティの活性化につながると考えられるのです。

数を追うのは正解か?

この議論を踏まえると、コミュニティを盛り上げるためにとにかく参加者を増やす、というのはあまりお勧めしません。ここまでお読みいただいた方はお察しいただけるかと思いますが、どこの誰だかわからない人が大量にいるという状況は、利他性や互恵性が働きにくくなります。また、人を集めることを優先するあまり、領域の設定が甘くなりコミュニティの価値がぼやけてしまう恐れもあります。これは単純に人を集めるのが悪いと言っているのではありません。多様な知が集まるという意味では数の強みが発揮されることもあります。しかし、ここまでお読みいただければお分かりの通り、数だけでコミュニティが盛り上がることはないのです。

もし今コミュニティの盛り上げに腐心されている方のお役に立てば幸いです。

参考文献
Haas, A., Abonneau, D., Borzillo, S., & Guillaume, L.-P. (2021). Afraid of engagement? Towards an understanding of engagement in virtual communities of practice. Knowledge Management Research & Practice, 19(4), 400–410. https://doi.org/10.1080/14778238.2020.1745704

Sedighi, M., & Van Splunter, S. (2017). Factors affecting knowledge sharing in online communities: A case study from the Netherlands. Journal of Knowledge Management. https://doi.org/10.1108/JKM-12-2015-0491

Wenger, E., McDermott, R., & Snyder, W. M. (2002). Cultivating communities of practice: A guide to managing knowledge. Harvard Business Press.