とある席にて
客三人…。
迎え付けを受け小間へ。
典型的な四畳半、琵琶床は表千家。
先々代が熱心だったと言う。
磨きの丸太普請が瑞々しい。
壁は錆壁、
枯れた土味が釜の湯気で生き生きしている。
軽い歓談の集まりのはずだった…。
忙しい中折角だからと言うことで、奥方が急遽気を利かせた。
点前は御主人自ら。
茶道口から
少し照れ臭そうに扇子を突き出す。
さっさとニ服点て ざっくばらんしたいのが見え見え。
間をおかず奥方が食籠を持ち出し茶道口を閉める。
「お早いですがどうぞ」懐紙と黒文字も抜かりなく添わせる…。
「遠慮なく…」
正客 食籠の蓋裏をひとめ見て次客へ。
菓子は薯蕷…梅鉢の焼き印。
暖めてあるから食籠の蓋裏には
うっすらの汗……。
花押は流儀の朱。
甘味暖味いただくうちに点前はどんどん進む。
床は俳画。釜に煮えが立つ風情が
薄墨で詠まれている。
床柱に山茶花…。
越前らしき御歯黒壺に
派手な金気色の掛け金具。
小さめの口が少し傾ぐのが可愛い。
香合は琵琶床へ。
つまみが危なっかしい宋胡録。
奥方は特別説明しなくても良く御存知でしょう…とすましておられる。
あれよあれよと言う間に一服点ってしまった。
奥方 茶碗をすっと正客に送る。
一応礼して押しいただく正客。
吸いきりの音で御主人は次客の茶碗を
暖め始める。
「いつもながら幸せ…」
正客 ひとことで茶と菓子のおもてなしに感謝…。詰も御製も聞かない。
ちゃっちゃと点てられる次碗…。
出される茶碗は二つだけ…。
順繰りに皆が 両方の茶碗で飲めるようにと…。
御主人は早々に歓談に移りたいのだろう。御自服は御辞退…。
棗茶杓拝見の段には座を崩し始める賓主。
そんな雰囲気を察してか
床畳に
ひとひらの花びらがほろり…。
奥方 黙って琵琶床の香合を正客に
回して、その香合が座っていた紙釜敷の上に ひとひらを鎮座さす………。
「どうぞ ごゆっくり………」
ニコっとする訳でもなく
不機嫌な顔でもなく
そそくさと茶道口から
退かれていく………。
全く
出来る人は
美しい…。
緊張がほぐれたあとの歓談は
ご想像の通り………。
だんだん白くなりゆく
炉の底…。
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