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疲れた時に耳と心を癒す 、FISHER(フィッシャー)のポータブルCDプレーヤーの音を聞く

最近の音楽配信サービスで音楽を聴いていると、「音が細かいな」と感じることがある。

ボーカルの輪郭がくっきりしている。
楽器の位置がよく分かる。
高域までスッと伸びている。

いわゆる高解像度の音だ。

もちろん、これは素晴らしい。

驚くほどリアルで臨場感がある。

でも、音楽を聴くたびに、いつも「細かい音まで全部見せてほしい」と思うだろうか。

たまには、もっと肩の力を抜いて聴きたい。

そんなときに面白いのが、昔のポータブルCDプレーヤーだ。

今回紹介したいのは、FISHER(フィッシャー)のポータブルCDプレーヤー

昔、
三洋電気がフィッシャーという名前でポータブルCDプレイヤーを発売していた。
ヤマダ電機とタイアップされた製品だった。

オーディオのエッセンスが注入された品質の高い製品だった。

このプレーヤーから出る音は、現代的な「キレキレ」の高解像度とは少し違う。

もっと柔らかい。

もっと穏やかだ。

そして、どこか懐かしい。


「刺さらない」という心地よさ

FISHERのポータブルCDプレーヤーを聴いていて感じるのは、

「高音が耳に刺さってこない」

ということ。

もちろん、これは個人の聴感による部分が大きい。

しかし、そこがこのプレーヤーの面白さだ。

最近の音楽再生機器では、音の細部をクッキリと描き出すことが大きな魅力になる。

それが使命になっている。

ボーカルの輪郭。

シンバルの細かな響き。

ギターの弦。

残響音。

そうしたものが鮮明に聴こえる。

ところが、FISHERの音は、そこを少しだけ丸く包んでくれるように感じる。

例えるなら、

「音を目で見る」のではなく、「音を肌で感じる」

ような感覚だ。

FISHER Z-ACDP4

耳元をそよ風が通り過ぎるような音

この音を、何かに例えたくなる。

鋭いレーザー光ではない。

キラキラしたガラスでもない。

もっと柔らかい。

そう、

耳元をそよ風が通り過ぎるような音。

音が前へ前へと押し出してくるのではなく、自然に耳の中へ入ってくる。

「聴け!」

と迫ってくる感じではない。

「まあ、ゆっくり聴いていってください」

そんな雰囲気なのだ。

これが、なかなか心地いい。


疲れた夜に聴きたい、鈴木祥子「優しい雨」


疲れているとき、音楽にまで元気を要求されたくない。

「さあ、盛り上がろう!」

そんな音楽ではなく、

「今日はもう、ゆっくりしていいよ」

そんなふうに寄り添ってくれる音楽が聴きたくなる夜がある。

そんな夜に、私は鈴木祥子を選びたい。

1993年に発売されたアルバム『RadioGenic』。

そこには「幸福の樹」「空の休暇」「Goodbye, my friend」などと並んで、「優しい雨」が収録されている。(UPLINK⁠)

CDを取り出して、FISHERのポータブルCDプレーヤーに入れる。

静かに音楽が始まる。

鈴木祥子の歌声がヘッドホンで耳に広がっていく。

最新のオーディオ機器のように、音の一粒一粒を鋭く拾い上げてくる感じではない。

少し柔らかい。

少し丸い。

そして、どこか懐かしい。

それが鈴木祥子の歌声とよく合う。

「優しい雨」という曲名の通り、音楽が雨のように静かに降ってくる。

ヘッドホンから耳へ。

耳から頭の中へ。

そして、いつの間にか心の奥へ。

疲れているときには、こういう音がいい。

音楽を「聴かなければ」と頑張らなくてもいい。

ただ流しておけばいい。

仕事のことも、明日のことも、一度だけ横に置いておく。

小さなCDプレーヤーから流れる鈴木祥子。

1990年代のCDだからこそ感じる、あの時代の空気まで一緒に聴こえてくる。

スマートフォンで音楽を再生するのとは、少し違う。

ポータブルCDプレーヤーは、決して最新の高性能オーディオではない。

でも、だからこそいい。

音楽を細部まで分析するためではなく、

疲れた耳と心を、そっと休ませるための音。

そんな音楽の聴き方があってもいいと思う。



「昔の音」だから悪い、ではない

古いポータブルCDプレーヤーの音を聴くと、

「現代の機器より解像度が低い」

と感じることがあるかもしれない。

しかし、それを単純に「劣っている」と考えるのは少し違うと思う。

音楽は、解像度を競うためだけにあるものではない。

音の気持ちよさ。

長時間聴いていられること。

ボーカルに温かみを感じること。

音楽そのものに集中できること。

そういう価値もある。


KENWOOD DPC-X4

FISHERとKENWOOD――方向は違っても、面白い2台

ポータブルCDプレーヤーをいろいろ聴いていると、メーカーによって音のキャラクターが違うことに気づく。

今回のFISHERのような、耳当たりの柔らかい音。

そしてKENWOODにも、独特の音楽的な魅力を感じるモデルがある。

KENWOODはカーオーディオやコンポなどでも知られたメーカーだけに、ポータブルCDプレーヤーにも「音楽を楽しませる」という方向性を感じさせる。

DPC-X447MPの音を聞いたことがある。

キラキラした音ではないけど、音楽がなめらかに滑っていく感じ。摩擦が少ないというか。なかなかに聞かせてくれる音だ。

これも刺さらない音。

もちろん、すべてのFISHER、すべてのKENWOODが同じ音というわけではない。

同じメーカーでも、モデルによって回路やDAC、ヘッドホンアンプ、イコライザーなどが違う。

だからこそ、

「メーカーで決めつけず、実際に聴いてみる」

ことが面白い。


「いい音」の答えは一つじゃない

最近は、

「ハイレゾ」

「高解像度」

「高性能DAC」

「低ノイズ」

といった言葉が音楽機器の世界に並んでいる。

もちろん、これらは重要だ。

でも、最後に音楽を聴くのは人間の耳だ。

そして人間の耳が感じる「心地よさ」は、必ずしもスペック表だけでは決まらない。

少し丸い。

少し柔らかい。

少し温かい。


聴いていて気持ちいい

高解像度の音が、

「ここまで聴こえるぞ」

と語りかけてくる音だとすれば、

FISHERの柔らかな音は、

「まあ、ゆっくり聴こうよ」

と語りかけてくる音なのかもしれない。

そして、CDを1枚聴き終えたとき、

「やっぱり、この音もいいな」と。

心がほどける感じ。

それが、古いポータブルCDプレーヤーを今でも手放せない理由なのだ。

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