No.1885 きづき
「以心伝心」のようなお話を一つ、聞いてやってください。
もう四半世紀も前のお話です。なにしろ、第1次小泉純一郎内閣(2001年4月~)が発足して1か月後のことです。皆さんは、何をしておられましたか?
ある日の朝、校門の近くで高校生男子が通学靴(革靴)のかかとを踏み込んでいたので、
「踵を踏み込まないで、きちんと履きなさい!」
と声を掛けました。革靴をスリッパみたいに履くのは、お勧めできません。制服に似合うように選ばれた靴であり、革靴は、履きこなしてこそ真価を発揮するものでしょう。
その数日後の朝、本当に偶然、全く同じところで、同じ生徒を見かけました。後ろから見ると、やはり踵を踏み込んでいます。あらま!又しても!
そう思った私は、愛用のバイク・「セバスチャン」(あれ?キャロラインだったかな?)にまたがったまま、ゆっくりと彼に近づいて行きました。あと10mほどかと思ったところで、生徒は、急に思い出したように靴をきちんと履き直しました。そのタイミングの良さは、「おみごと!」というしかなく、「以心伝心」の四字熟語が脳裏に浮かび、ちょっと、笑ってしまいました。
ご本人はバス通学なのか徒歩でしたが、ヘッドホンを耳に当て、お気に入りの曲でも聴きながらの登校です。バイクの音が聴こえたような態度ではなかったので、彼の第六感の鋭さか?虫の知らせか?一種のトラウマか?天の啓示か?摩訶不思議でした。
ところで、「以心伝心」は、いつ頃生まれた言葉なのでしょうか?一説に、
「以心伝心」の出典:『六祖壇経』行由品
解釈:言葉に出さなくても、心が通じ合うこと。
『六祖壇経』 … 中国禅宗の第六祖慧能の遺録。唐の関耀元年(681)頃の成立。内容は、慧能一代の行実と大梵寺での説法集となっている。
とありました。681年と言えば、日本は天武天皇の9年で、飛鳥時代の末期です。奈良時代よりも少し前に中国で生まれていた言葉のようです。へーボタン!
今度は、
「ヘッドホン登校は、背後からの音が聴こえないので、事故につながるよ!」
と言ってやらなければいけないなと思いました。革靴の踏み込んだかかとのように、一つずつ、自ら気づいて改めてくれることを信じながら…。
その彼は、今は、革靴を磨き、踵を踏み込むことなく社会で活躍中の40代前半の紳士となっていることでしょう。きっと。
「夢を追う君の姿が輝いてかかとつぶした靴はき直す」
第20回「現代学生百人一首」(2006年)入選作品(埼玉県・高校2年・女子)
彼女の詠んだ気づきも、本当に素敵です。
※画像は、クリエイター・まるこめ。さんの「革靴と足のイラストです。はじめの一歩を踏み出すイメージ」の1葉をかたじけなくしました。磨き上げたようなきれいな靴の輝きです。お礼を申し上げます。
