No.1998 幸せな男
子どもたちが幼かった頃のお年玉は、まさに硬貨のお年玉でした。
1年の間に溜まった1円・5円・10円・50円・100円・500円玉がズッシリと入った布袋を前に、実家に帰ってきた三家族の子供たち6人が小さい順に並んで待ちます。チャンスは1回きり。片手だけで握っても良いし、掬っても良く、その方法は、自分で考えさせます。後ろで並ぶ子の、真剣に前の子の様子を見守る表情がたまりません!
1歳の赤ん坊が握れたのは、数十円ほどでしたが、小学校3年生で2000円近く荒稼ぎした者もおり、「一喜一憂」の四字熟語を身をもって体験する実家での正月の風物詩でした。
そのうちの一人の甥っ子が、前日の大晦日の晩に、母親(私の妹)に尋ねたそうです。
「母ちゃん、俺ん手、去年より大きゅうなったかなぁ?」
正月恒例の「お年玉手づかみ大会」をにらんでの発言だったのですが、妹にしてみれば、
「あん子が、そんなことを考えちょったのかと、可笑しいやら、えらしい(「かわいい」)やら‥。」
と笑って話してくれました。
その甥っ子(長男)は、とても面白い、いや、ユニーク、いや、抜け目のない男(大分弁なら「さじい子!」)でした。小学校の3年生の時でしたが、親から叱られたり、小言を言われたりしたら、
「分かりました。隊長!」
と言って、すかさず、敬礼のポーズをとります。また、親に頼みごとをするときには、
父親には「殿!」
母親には「姫!」
と声を掛けてから甘えるといった、心ニクイ作戦を実行します。
私の場合、幸か不幸か、父親が厳格(何せ、父の戒名は「直道玄哲居士」ですもん。)で、「殿!」なんて言おうものなら、頭に「たん瘤」を作ることは必至だったでしょう。言葉を選ぶのも、子ども心に気を遣いました。
想えば、平成の7、8年の頃のことですが、ことの良し悪しよりも、明るく楽しく生きようとしているその姿が、なんとも微笑ましく感じられました。大きい親心で育てている妹夫婦の姿にも惚れ惚れしました。私の子育ては、限りなく父寄りでしたから。
その小学校3年生だった甥っ子は、いつの間にやら40代です。娘3人をいただいて、今や、父権も「風前の灯」状態ではあるまいかと推察しますが、部活動で頑張る娘たちの応援に、県内外のあちらこちらに出かけては、「一喜一憂」しています。
それも又、楽し!何とも幸せな男です。
※画像は、クリエイター・勧善寺藍さんの「弓道部で部活中の女子高生」の1葉をかたじけなくしました。明るい表情が、的を前に凛として引き締まるのですね。お礼を申し上げます。
