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選評*阿呆となるための紅引き阿波踊
阿呆となるための紅引き阿波踊 岡田 耕
「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ、踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」と、笛、三味線、鉦、太鼓の軽快な音と掛け声に合わせて大勢で踊る阿波踊。躍動的で時には滑稽に踊る男踊りと、色鮮やかな浴衣に真っ赤な蹴出しを覗かせて艶っぽい女踊りと、阿波踊は唄の文句の通り見ているだけでも心浮き立ち虜になる。ましてや踊るその楽しさはいかばかりか。恍惚となり時も我も忘れてしまう程なのだろう。その我を忘れる程の踊りに加わる事を「阿呆となるため」と簡潔に、しかもその意気込みを「紅(を)引き」と詠った。
編笠を深く被った女踊りはその顔立ちや表情は見えない。かろうじて見えるのは口より下で、その口元をより印象的に、艶っぽく見せるための口紅。男踊りなら「鉢巻をきりり」とでも言う所だろうが、「編笠を深々と」でも「下駄の緒をきつく」でもなく、「紅を引き」と言うのが、いかにも阿波踊りにふさわしく、その意気込みがよく伝わる。
(岡田 耕)
