140文字小説短編集|指先から溢れる恋
恋には重さがある
何万文字も費やして語る愛もあれば
たった一言で世界を塗り替えてしまう恋もある
スマホの画面越しに感じる虚しさ
雨の日の密やかな期待
洗濯機の中から見つかる生活の断片
どこにでもある日常の景色が
誰かを想うだけで
これほどまでに鮮やかな物語へと変わる
一瞬で読み終わるけれど
読み終えたあとに
あなたの心の中に小さな波紋が広がる
そんな「一瞬の永遠」を5つ集めました。
あなたの隣にいる人
あるいは
もう二度と会えないあの人を思い出しながら
ゆっくりと指先を滑らせてください
画面越しの指紋
「おやすみ」ビデオ通話を切った後、暗くなった画面に跡が残っている。さっきまで君に触れていたはずの場所。冷たいガラスの感触が二人の距離を残酷に突きつける。でも拭き取れない。この痕跡が君と繋がっていた唯一の証拠だから。恋はいつも少しだけ不衛生だ。
直径一メートルの世界
「傘、一本しかないね」軒下で君が嬉しそうに呟く。僕の左肩が濡れるのも構わず君を右側に入れた。狭い傘の中、触れそうで触れない距離。「ねえ、わざと置いてきたのバレてる?」君の悪戯な視線。左肩の冷たさと右側の熱さが混ざり合い、僕らの世界はこの直径一メートルに凝縮された。
柔らかな鎖
洗濯機から見慣れないヘアゴムが出てきた。 君が置いていった日常の断片。 手首にはめてみると少しだけ締め付けが苦しい。「あ、忘れてた」一週間ぶりの電話。 返すのを口実にまた会う約束を取り付ける。小さな黒い輪っかが、僕らを引き止める 世界で一番柔らかな鎖になった。
未来の正解
分厚い参考書の隅っこ。「ここ、出るよ」君が貼ってくれた黄色い付箋。試験当日、めくると裏側に小さな文字。『頑張れ。終わったら話したいことがあるの』解答用紙を埋める手が震える。合格の二文字よりもその一言の方が、今の僕には何倍も価値のある未来の正解だった。
特等席の横顔
花火大会。夜空を彩る大輪の華。歓声に紛れてこっそりと隣の君を盗み見る。「綺麗だね」君が見つめるのは一瞬で消える火の粉。僕が見つめるのは、その光に照らされた君の横顔。一生に一度の絶景は空じゃなく僕の隣にあった。「何?」「何でもない」火花が散る音に僕の鼓動は隠された。
読み終えたあと、あなたの指先に残った熱が、どうか明日への優しい光になりますように。
いいなと思ったら応援しよう!
私の作った画像を少しでも「いいな」と思っていただけたら、「スキ」や「フォロー」いただけると嬉しいです。チップは応援したいな、と思った際にお気持ちだけいただければ十分です。これからも気に入ってもらえる画像を作っていけるよう頑張っていきます。