休日の朝、パパと小1娘の2キロ登校で発見した“ちいさな贅沢”
前日の夜。
子どもたちが寝静まった頃に、
私は仕事から帰宅した。
玄関で靴を脱ぐと、妻が小声で言った。
「明日の朝ね、さき(小1の娘)が
『パパと学校行きたい』って言ってたよ」
疲れた体に、
ふっとあたたかい風が吹いたような気がした。
——そんなこと言ってくれるのか。
明日が休みでよかった。
翌朝。
まだ眠い目をこすりながらも、
私は娘と一緒に家を出た。
家から学校までは2キロほど。
秋の風が気持ちよく、道にはどんぐりや落ち葉。
ときどき犬のフンを横目に「やだね〜」と笑い合いながら進む。
ランドセルには交通安全カバー。
横顔を見ると、ほんの少し背が伸びていて、
入学式の頃よりもずっと頼もしく見えた。
「大きくなったなぁ」と、心の中でつぶやく。
やがて学校近くの大きな坂に差しかかる。
妻からは
「いつも坂の下まで送っている」と聞いていた。
だから私も、そこで見送るつもりでいた。
ところが娘は、にっこり笑って言った。
「パパ、坂の上まで一緒に行こうよ」
その一言に、心がふわっとした。
まだパパを必要としてくれているんだな。
もちろん答えは「いいよ」。
小学生の列に混じる中年のおじさんは、
ちょっと場違いな感じ。
でも、娘が友達と「おはよう!」と笑顔で挨拶する姿を見て、
ほんの少し距離が遠くなった気もした。
それがまた成長なんだと思う。
娘と別れてからの帰り道は、ひとり。
すれ違う人との距離感を、やけに意識してしまう。
顔を上げて軽く会釈してみたり、
気まずくて通知のないスマホを眺めてみたり。
知っているパパやママだったら、
ちゃんと対応しなきゃいけない。
逆にこちらだけが相手を知っているパターンや、
向こうは私を知っているパターンもある。
——地味に難しい、
この「登下校ロードの人間関係マナー」。
とにかく私は、「明るく挨拶」を心掛けた。
心の中では
「誰か気づいて、でも深く詮索はしないで…」と祈りながら。
喉が渇いたので、
途中のコンビニでアイスコーヒーを買った。
氷がカランと鳴り、ひと口。
「はぁ〜、幸せ」
同じ道なのに、感じる景色はまるで違っていた。
行きは娘と並んで歩いたからか、
涼しい朝の空気が心地よかったのに、
帰り道は時間が少し経っただけで、
陽ざしがぐっと強くなり、残暑らしいじりじり感が肌にまとわりついてくる。
信号待ちでふと横を見ると、
車の中には出勤中と思しき大人たち。
「お仕事お疲れさまです。今日は私、お休みなんです」と、
心の中でつぶやいてみる。
普段なら同じように急いでいる側なのに、今は娘と過ごした余韻を抱えながら、のんびり歩いている。
時間が少しだけゆっくり流れているようで、
特別なひとときだと感じていた。
家に帰ると、
キッチンには妻が用意してくれたサンドイッチが置いてあった。
冷めてしまったかと思いきや、
ちょうどよく味が馴染んでいて、
思わず「さすが……!」と小さくひとりで感心する。
アイスコーヒーをもう一口、片手に持ち、
テレビをつける。
画面には録画しておいた、
毎年楽しみにしている「有吉の夏休み2025」を流す。
今日の私は、娘と歩いた2キロの余韻を抱えつつ、
サンドイッチとアイスコーヒーを片手に、誰にも邪魔されないひとりだけの平和な時間を。
有吉ファミリーとハワイ気分を味わいながら、
おじさんの休日が始まる。
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