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【随筆】七分の一の月②



いつだっただろうか。
夕月を見上げていて、ふと思った。

月には、たくさんの名前がある。
三日月、上弦、立待月、居待月。

待つ、という言葉がいくつも並んでいる。

けれど月は、
待たれていることなど知らない。

ただ、欠けて
ただ、満ちて
ただ、そこにある。

月の名に、意味があるのではない。
意味を置いた人がいただけだ。

潮の満ち引きや、生き物の産卵、
人のからだの周期や、種を蒔く時期。
月のリズムと重ねて暮らしてきた人たちもいる。
今でも、月を読み、
その変化を生業としている人たちがいることも知っている。

それを否定したいわけではない。
ただ、今夜ここで立ち止まっている僕の視線は、
そこまで届いていないだけだ。

そんな少し冷めた気持ちのまま、
七分の一ほどの光を見ていた。

それなのに、
なぜ僕は立ち止まっているのだろう。

なぜ、わざわざ
「七分の一」と数えたのだろう。

意味をつくっているのは、
いつもこちら側だ。

それでも、
意味をつくらずにはいられないのも、
またこちら側なのだ。

けれど今夜の僕は、
月に何も預けない。

願いも、期待も、
慰めも。

ただ、欠けた光として
そこにあるものを、そのまま見ていたい。

意味を重ねれば、
きっと少し楽になる。

でも楽になる代わりに、
自分の足が、少しだけ軽くなりすぎる気がする。

月はただ、月でいい。

七分の一の月は、
ほとんど闇だ。

それでも、
その闇の下で、僕は僕の足で立っている。

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