食のまちストーリーズ vol.14「まちおこしから誕生した、いちき串木野市でしか食べることができないオンリーワンの“まぐろラーメン”」
鹿児島県のいちき串木野市で取り組んでいる「食のまちづくり」に関連する情報を紹介します。「食」を通じて、いろんなことを楽しむ、いろんなことをやってみる。人がいきいきと輝き、まちが元気になる。それが「いちき串木野市 食のまちづくり宣言」です。いちき串木野市は、海の味、山の味、こだわりの珈琲から蔵元の焼酎まで、心がほっとするおいしいものが身近にある、豊かな食文化を誇るまちです。この食文化をおいしく、楽しく味わいながら、人がいきいきと輝くまちをみんなで育てていきましょう。
まちおこしから誕生した、いちき串木野市でしか食べることができないオンリーワンの“まぐろラーメン”
「いちき串木野市といえば“まぐろラーメン”だよね。」
そのようにイメージする人は鹿児島県内外問わず多いと思います。僕もその一人です。いちき串木野市へ遊びに行けば、ランチは“まぐろラーメン”を提供するお店へ。それが今もルーティンになっています。あっさりとした味は子どもから高齢者まで世代関係なく食べやすく、友人や家族にも胸を張ってオススメしています。
そんなまぐろラーメンが誕生したのは今から23年前(2001年)のこと。きっかけは旧串木野市の観光協会より料飲業組合への相談だったといいます。九州新幹線の開業や南九州自動車道の開通が迫り、まちとして観光の目玉不足や過疎化に対する強い危機感が大きな背景だったそうです。
旧串木野市は、当時まぐろ漁船船籍数が日本一。かつては、まぐろの町として大いに栄えていたのだとか。しかし、漁船の大型化や輸送コストの問題もあり、まちでの水揚げが減少していったのです。
そこで、まぐろのまちとして賑わいを取り戻すためにまぐろの名物を作り、消費を起こすことで地元の港にまぐろ船の水揚げを呼び戻そうという“まちおこし”をテーマに“まぐろラーメン”開発のプロジェクトがスタートしました。

飲食業組合の有志4人を中心に『まぐろラーメン共栄会』を立ち上げ、まちを盛り上げる仲間として手を取り合い、試行錯誤の日々が続きます。
どこにも無い味で健康志向、世代を問わず愛される味、串木野でしか食べることのできないオンリーワンのラーメン。それらを追求した結果、今の“まぐろラーメン”の原点の辿り着くのです。
見た目の美しさにこだわり、5原色の色彩を意識した素材を使い、それまであまりなかった立体感の盛り付け。味は塩をベースに、風味付けに醤油を使うことで上品な味に。さらに、魚臭さの問題を解決するために「頭を焼く」手法にすることで絶品なスープに仕上がったといいます。
そのレシピを公開することにより、“まぐろラーメン”を提供するお店のQSC(※)のレベルアップや意識の高まりにも繋がったそうです。他にも、メディアにアプローチすることにより、認知度アップや県内外イベント出店にも繋がり、ブランドとして確立していきました。現在はいちき串木野市内では7店舗(まぐろラーメン共栄会に所属)において“まぐろラーメン”が提供されているそうです。
※飲食店の基本と言われるQuality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(清潔さ)の頭文字をとったもの。

以下では、いちき串木野で“まぐろラーメン”提供店のうち2店舗紹介したいと思います。
横の繋がりを大事に、手を取り合いながら次の世代へ受け繋ぐ
<酔匠の里 花もん・﨑野正邦さん>

・まぐろの頭を焼き、野菜の旨味が溶け出した澄んだ黄金スープであること
・まぐろの旨味とコクのある和風スープによく絡む中太のちぢれ麵を使用すること
・トッピングには漬けまぐろを
しかし、花もんでは上記を受け継いだ「まぐろ塩」加え、味噌を加えた「まぐろ味噌」や豚骨スープとの「あいのり」をラインアップに加えることで他の店舗と差別化を図っています。そうすることで、間口を広げ、“まぐろラーメン”を食べにまちへ訪れる機会を増やすことに繋がったそうです。
そんな花もんを切り盛りする﨑野さんはまぐろラーメン共栄会の現会長。提供店の中では一番の若手なのだとか。提供店の高齢化が進む中で「今の自分にできることは何か?」と模索する日々だといいます。
「“まぐろラーメン”が提供され始めて23年経ち、リピートしてくださるお客様が多いのは嬉しいことです。花もんではランチ時間の他にも、夜の居酒屋の時間でも提供しています。」
「一つの飲食店ではできることに限りがあります。飲食店同士や異業種、行政など横の繋がりで連携し、今まで以上に多くの人に“まぐろラーメン”を愛し続けてもらえるように、まちの名物料理を次の世代へ受け継げるように新しい取組にも挑戦していきたいです。」
地域に支えられてきたからこそ、みんなを幸せにする味を
<有限会社みその 代表取締役会長・勘場明さん 代表取締役社長・勘場洋平さん>

いちき串木野市の“まぐろラーメン”は『味工房みその』(以下:みその)で誕生しました。いちき串木野市内だけでなく、鹿児島県内外多くの人が何度も訪れるお店になっています。
2代目の明さんは若くしてまぐろ漁船に乗り、28歳で陸に上がり食の世界へ進んだそうです。その経験を活かし、多くの人の手を借りながら、地域に根ざすラーメンにまで確立させました。現在、3代目・洋平さんが引き継ぎ、伝統の味を未来へ繋げるため、日々挑戦を続けています。
そんな”みその”では麵を食べ終わったら、スープに白飯を投入。茶漬け風にして、黄金スープを最後の一滴まで味わい尽くすのが通な食べ方だといいます。
「“どげんかせんといかん!”といった気持ちを地域の事業者の皆さんや関係機関が持ち合わせていたからこそ、今の“まぐろラーメンがあると思います。」(明さん)
「地道な活動が功を奏し、数年ぶりにまぐろの水揚げがされたのを聞いた時は嬉しい気持ちになりました。“みその”の歴史や味は多くの人の厚意に支えられてきています。だからこそ、最高の仕事をしてみんなを幸せにしたいです。」(洋平さん)
text & photo : Yasutoshi Kami
