【かっこいい油絵】司馬江漢と亜欧堂田善
府中市美術館で開催されている「かっこいい油絵」展は、
観客(観客という言い方でいいのか)
を奇妙かつ魅力的な絵画の世界へと引き込む展示だった。
亜欧堂田善の作品を前にすると、
遠近法やパースがどこか曖昧で、
一見すると「これがかっこいいのか?」というような、
奇妙な絵画だ。
しかし、その疑問こそがこの展覧会の仕掛けなのかもしれない。
司馬江漢の作品では、
蝶や鳥の緻密な描写が目を奪う一方で、
手前の猫は驚くほど平淡に描かれている。
この一枚の中での表現の落差が、
観る者を不思議な興奮へと誘う。
展示の解説はさらにユニークな独自性を放ち、
「技巧を用いない簡素で平淡な表現」と
「技巧を尽くした絢爛な表現」の両方を称賛しつつ、
最終的に、
「意が大事。生き生きしていることが何より重要」と結んでいる。
つまり、技巧の有無を超えて、作品が持つ生命力こそが核心だと訴えるのだ。
この視点は潔く、
観客の心をドキドキさせることこそがアートの本質だと納得させられる。
そして、牛島憲之の作品は圧倒的な存在感を放つ。
ゴリゴリの多摩川周辺のリアリズムをインプットしつつ、
アウトプットでは抽象度の上げ下げ、
色彩の淡さを自由に操るその高い技術は、
見る者を唸らせる。
まるで映画の名カメラマンのような視点が感じられるのだ。
画角やアングル、レンズ選び、ライティングといった要素はもちろん重要だが、
それ以上に、目の前で展開するシナリオや演出、芝居といった「現実」を、
どう切り取り、どの距離感でフィクションとして観客に届けるか、
絵と観客を直結させてパッションを伝導させる、
基本を再認識させてくれた。
この催しは、
こうした「基本のキ」を突きつけ、
観る者にアートの本質を再考させる力もあった。
図録も素晴らしい、
こうかん・でんぜん探検隊という、
学童向けのクイズ形式のパンフのような案内書、
それをプロデュースする、
府中市美術館のスタッフのみなさんの、
知力、気力、センスが結集したこの展示は、
観客に鮮烈な印象を残す仕掛けに満ちていた。
5月11日までの開催。
