小栗忠順の子孫がジャンプギャグ漫画家になったワケ⑯ 『テンテンくんがジャンプで2位を取った日、それでも休載はもらえなかった…&尾田栄一郎先生・岸本斉史先生らとの忘年会』
自律神経の不調と慢性的な寝不足で、どんどん体調が悪くなっていく日々。
そんな中、「もっと人気が上がれば、休みがもらえるかもしれない…」と僕は頑張りました。その結果、テンテンくんはついにジャンプの人気アンケートで2位を取ったのです──。
◾️2位を取った戦略
テンテンくんアニメ化の直後に始めた長編『黄泉の国大冒険』のシリーズは、人気的には正直に言って成功とはいえませんでした。
僕は「しばらくはシリーズ物はやらず、一話完結形式のギャグでいこう」と決め、それが功を奏し人気も回復していきました。
アニメのテンテンくんも第二期に入り、オープニング主題歌の『クラスで一番スゴイやつ』の歌詞が、1番から2番に変わりました。
ちなみに1番のサビは、「コッチン コッチン」で「チ◯コ」を絶叫していましたが、2番では「コーウン コーウン」で「ウ◯コ」でした。
一家団欒の土曜日の18時半に、「ウ◯コ」を絶叫…。
これはある意味テロだと思いました(笑)。
常に体調が悪かったこの頃、僕は左目のまぶたがよく痙攣をする様になっていました。これも目の前が真っ白になる症状と同じで、強いストレスと疲労と寝不足から出る症状だったみたいです。
「そろそろ一回休みたいです…」
僕は担当のMさんに相談しましたが、休載は許されませんでした。
「テンテンくんよりも後から連載した『ONE PIECE』や『たけし!』は休んでる…。もしかしたら人気を取れば休めるかな?」
僕はどうしたらテンテンくんが更に人気を取れるか、必死で考えました。
そこで思いついたのが、
「そういえば、テンテンくんの両親はまだ登場していない。あと、天の国の天使の住む家もまだ描いてない。きっと読者は気になるはず…。ここに、インパクトのある『引き』のある終わり方をしたら、アンケートを入れてくれるかもしれない…!」
こうして誕生したのが、テンテンくんが天の国に里帰りして、そこに悪い天使達『堕天使』が襲って来るシリーズ、『天使VS堕天使編』です。
さらにタイミングが良く、この時丁度連載2周年の表紙&巻頭カラーが回ってきたのです。
僕は「この回、上手くいけばめっちゃ人気が取れるかもしれないぞ…!」と気合いを入れました。
この回の内容は、ある日テンテンくんの元に天の国から手紙が届き、そこには「チチキトク スグカエレ」の文字。ヒデユキくんと一緒に天の国の実家に里帰りしたテンテンくん。しかし故郷に着くと、そこは何者かによって壊滅させられていた…‼︎ ーというもの。いつものテンテンくんの雰囲気とは違う、インパクトのある、続きが気になる『引き』です。
タイトルは「テンテンくん帰郷するの巻」。
この回の人気アンケート結果で、僕は初めて
ジャンプで2位を取れたのです‼︎

よく見るとテンテンくんTシャツの広告も載ってます
「やった〜!あの天下のジャンプで2位の人気が取れた‼︎」
僕は天にも昇る嬉しさでした。
先に言ってしまうと、テンテンくんが2位を取れたのは、連載約3年半でこの一度だけです。この号では大人気漫画の『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博先生)が休載していて、まさに様々な要因がプラスに働いて取れた、奇跡の2位でした。
ちなみにその回の1位は、当然ジャンプの大看板漫画である、尾田栄一郎先生の『ONE PIECE』。
「やっぱり、僕はずっと天才 月火水木金土(尾田先生の最初のペンネーム)には勝てないんだな…」と改めて思いました。※エッセイ第2回参照
この時のジャンプのラインナップを改めて見ると、マガジンに部数を抜かれた暗黒期から完全に脱出し、次の隆盛時代に突入しています。↓画像の目次コメントページ参照


さらにこの年には、もう一人の同世代の天才漫画家が連載をスタートします。
それは岸本斉史先生の『NARUTO-ナルト-』です。
◾️突然現れた同世代の天才
岸本斉史先生は僕と同じ1974年生まれで、1996年に『カラクリ』が「第132回 2月期ホップ☆ステップ賞」にて佳作を受賞。続く1997年にジャンプの新人増刊『赤マルジャンプ』で読切作『NARUTO-ナルト-』を掲載。
1998年にジャンプ本誌で『カラクリ』を読切で掲載された後に、1999年『NARUTO -ナルト-』の連載を開始しました。
僕と同世代の漫画家の多くは、早くから新人増刊に何度か読切を載せていて、伝統的な新人漫画家の登竜門、手塚赤塚賞も受賞している人が多いです。(僕も赤塚賞を受賞しています。※エッセイ第3回参照)
しかし、岸本先生は手塚赤塚賞は取らず、ジャンプ本誌では『NARUTO』の読切を試さずに、いきなり連載でした。こういうパターンは、当時の新人漫画家では珍しかった様に思います。
新人漫画家の集まりでも、手塚赤塚賞パーティでも会った事がない、謎の同世代漫画家による新連載。
僕は『NARUTO-ナルト-』の第一話目を読んで、その構図の斬新さ、ストーリー構成の上手さに驚きました。
「こ…こんなに凄い人が、まだ同世代にいたのか…‼︎」

もはや忍者=NARUTOになりました
突然余談ですが、その年の年末にジャンプ若手漫画家で集まって、忘年会を開きました。
僕が幹事でお店も予約したのですが、お店をロクに知らない僕は、上野の超庶民的な居酒屋にしてしまいました…。
そこに、尾田栄一郎先生、岸本斉史先生、島袋光年先生、木多康昭先生という、錚々たるジャンプ漫画家が集まっていたとは、もしもその場にジャンプファンがいたら、卒倒していたと思います(笑)。
忘年会はそれぞれ連れてきていたアシさんも入れて、15人ぐらい。漫画家は日頃、机に齧り付いていて他漫画家と交流も少ないので、色々な話をして盛り上がりました。
尾田先生は、急ぎの仕事があると言って、少し先に帰りました。
いざお会計となり、「誰が支払うか?」となった時に、お店の人から衝撃の一言。
「お代は、先程帰られた方から既に頂いております。」
僕達は思わず
「お…尾田さん、カッコイイ〜〜〜!!」
と叫びました。
その時に初めて会った岸本先生は、まだ連載して間もなく「自分は体も弱いし、連載が続けられるのかなぁ…」と不安そうな様子でした。
二次会にも誘いましたが、帰り際に担当編集さんから電話が来て、岸本先生は二次会には参加せずに「これからネームを数ページ描いて、担当のYさんにFAXするんだ」と言って帰宅しました。
僕は昔から、ネームは全ページ描いてから担当さんに見せていたので、
「数ページずつ見てくれるなんて、担当編集のYさんは優しい…!そして本当に岸本さんを、『NARUTO』を大事に育ててるんだなぁ…」と羨ましく思った事を覚えています。
しかし、まさかその後こんなに世界的大人気漫画家になるとは…‼︎
僕が児童書『グータラ王子』を書いた時は、素敵な帯コメントを書いて頂きました。岸本さん、ありがとうございましたm(_ _)m

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◾️また失敗に終わったシリーズ物
話を戻して。
『天使VS堕天使編』シリーズの一話目で2位を取ったテンテンくんでしたが、その後このシリーズの人気は徐々に下がってしまいました。
シリーズ一話目でとにかくアンケート人気を取る事を考えてネームを作ったまでは良かったのですが、その後の展開までは上手く思いつかなかったのです……。(ヒデユキくんが堕天使に攫われたり、天使達が珍しくバトルしたり、色々試行錯誤しましたが…)
ある意味、マラソンで最初に猛ダッシュしたまでは良いが、その後バテてスピードダウンした、アホな陸上選手です。
黄泉の国編と二回続けてシリーズ物が失敗に終わり、僕はすっかり落ち込みました。
そして当然、休載はもらえず…。
その頃、テンテンくんのアニメの放送終了が決まりました。
この時僕は、「テンテンくんは、ドラえもんの様に長くアニメが続く作品になれなかったのか…」というショックと、「これで、アニメテンテンくんの『下ネタドタバタギャグ』のイメージが、これ以上広まらないで済むんだ…」と少しホッとした様な、二つの複雑な感情がありました。
更に気になった事が一つありました。
それは、「漫画のテンテンくんはまだ、ヒデユキくんの本当のサイダネ探しの途中だけど、アニメでの最終回ではそこをどう解決するんだろう…?」という事。
実は僕はこの時まだ、ヒデユキくんの『本当のサイダネ』が何か、全く考えていませんでした(笑)。(我ながらいい加減)
「自分以外の人が、テンテンくんの最終回をどう描くのか?ヒデユキくんの『本当のサイダネ』は見つかるのか……?気になるなぁ」
ドキドキしながらアニメテンテンくんの最終回を観た時、僕はその内容にぶっ飛んだのです━━。
(つづく)
前回の予告で、「疲れ過ぎて描いた覚えの無いコマがあった」というエピソードを書くと言いましたが、時系列の関係でまだ先にしました。(ゴメンナサイ)
次回、アニメが終わり、人気も下がり始め、体調も更に悪化して、仕事場でもトラブルが…。週刊連載漫画家はマジで辛いです。
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