見出し画像

小栗忠順の子孫が、ジャンプギャグ漫画家になったワケ⑬『今では考えられない⁉︎ヤバ過ぎるアニメ化裏話と衝撃のあのコッチン主題歌』


ジャンプでの連載が1年を過ぎ、人気も安定してきた頃。ついにテンテンくんにも「アニメ化」の話が来ました。
「自分の漫画がTVアニメになるなんて、めちゃくちゃ嬉しい…!」
多くの漫画家たちの夢でもあるアニメ化。僕は期待に胸を躍らせていましたーー。

◾️最高の布陣

ただ、いきなりアニメ化すると言われても、漫画家がやる事は特に何もありません(笑)
そもそも、どこまで漫画家がアニメに関わる事が出来るのかすら、アニメ化ド素人の僕にはわかりませんでした。

毎週の漫画の締め切りに追われながら、僕はただボンヤリと「もしかしたらアニメ化したら、人気が爆発するんじゃ…そしてめちゃくちゃお金も儲かるんじゃ…アニメ放送のギャラっていくらかな? ウヘヘヘ……」と邪な妄想を膨らませる日々。

そんな時、制作するアニメ会社や放送局、放送時間が知らされます。

それを聞いてビックリ。

アニメの制作会社は、『世界名作劇場』や『ちびまる子ちゃん』で有名な「日本アニメーション」。
放送局は、当時民放局視聴率トップクラスの「フジテレビ」。
そして放送時間枠は、『幽☆遊☆白書』や『みどりのマキバオー』がやっていた「土曜日の18:30〜19:00」。

「ヤ…ヤバイ! こ…これは
最高の布陣じゃないかぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!
期待はピークに達しました。

でも、高過ぎる期待というのは、ある意味その後「失望した時の落差」も大きいもの。まだ23歳のケツの青いガキンチョだった僕は、ここから『業界の大人達の理論』に戸惑う事になるのです。

ジャンプのアニメ化の告知記事


◾️衝撃を受けた『大人の一言』

僕はアニメの打ち合わせをするために、担当のMさんと二人でお台場のフジテレビに行きました。
大きな会議室に通されると、そこにはスーツの大人が7〜8人。渡された名刺には、フジテレビや日本アニメーションの偉い役職の肩書きばかりが並んでいます。
(漫画家側は僕と担当Mさんの二人か…。な…何となくアウェーな感じだな…)
そう緊張して座っていると、資料やアニメ第一話の脚本が渡されました。

(ア…アレ……?)

その第一話の脚本を読むと、漫画の第一話とだいぶ内容が変わっている事に気づきました。

テンテンくんの漫画の第一話は、神様が天の国で「地上に生まれる前の子供の形の魂達」にサイダネを渡しているシーンから始まります。このシーンから始まる事で、テンテンくんという漫画の世界観が一発でわかり、「何が行われてるんだろう?」という興味で読者を引きつける狙いがありました。
そしてテンテンくんが現れ、吐き出した梅干しのタネがサイダネに紛れ込み、その梅干しのタネを渡された桜ヒデユキくんが10年後、何も才能がないダメダメ少年として苦労している。そこで偶然テンテンくんに出会うーーという流れです。

ここからテンテンくんは始まりました


対してアニメの第一話は、いきなり学校での桜ヒデユキくんの「ダメダメな日常の描写」から始まります。そこに突然テンテンくんが空から落ちてきて、ヒデユキくんと衝突して出会う。天の国での説明はその後でした。テンポが良く、ものすごくシンプルです。

(テレビだから、きっとわかりやすくしてるんだな。漫画とは作り方が全然違うなぁ…)

そう思いながら読み進めていくと、第一話の盛り上がり所である「強面のドクダミくん一味が現れて、因縁をつけてきて、野球対決する事になる」シーンに差し掛かりました。
そこで僕は戸惑います。

(ん? どういう事……?)

なんと、対決の内容が「野球」ではなく「サッカー」に変わっていたのです。
漫画でのドクダミくんの才能は『野球』です。
この漫画は『才能』が一つのテーマでもあるため、どんな才能を持っているのかもキャラを表す大事な要素になります。そもそも、すでにサッカーの才能は菊崎くんというキャラが持っている事になっているので、これだと思いっきりカブってしまいます。

(この脚本だと、ドクダミくんとの野球対決の場面もかなり変わるぞ。漫画だと、ドクダミくんがズルをしてバットで打てないゴロゴロ球を投げる。それをテンテンくんのとっさの機転で『ゴルフの才能』を咲かせ、ゴルフスイングで打ち返すというギミック。それが面白さとカタルシスを生むシーンとして描いたんだけど…)


ドクダミくんのゴロゴロ球をゴルフスイングで打ち返すシーン


僕は頭が混乱しながらも、(で…でも、もしかしたら何か変更した『大事な理由』があるのかもしれない)と、そこにいた一番偉い感じの人に、意を決して質問しました。

「あ…あの〜、一つ質問が…」

「はい、なんですか?」

「この1話目のドクダミくんとの野球対決のシーンが、脚本だと野球からサッカーに変わってるのは、何か理由があるのでしょうか……?」

すると、その人は少し笑って言いました。

「いやまぁ、やっぱり、今は野球よりサッカーでしょ!

「………………へ?」

僕はその答えに呆然として、(そ…それだけの理由か〜〜〜い!!)と心の中でツッコミました。
「きっとMさんも、この脚本には違和感があるはず…」
そう思って隣のMさんを見ると、Mさんはヘラヘラと愛想笑いをして、偉い人達に同調しています。
「ええ、確かに今、Jリーグ大人気ですからね〜」
(え…Mさん……)

結局、僕はその打ち合わせで自分の意見をほとんど言えませんでした。
そして帰りのタクシーの中で、Mさんに更なる追い打ちをかけられたのです。

「小栗くん、言っておくけど『漫画とアニメは全くの別物』だからね。以前、とある有名漫画家さんが自分の漫画のアニメ化にこだわり過ぎて、キャラデザインを勝手に作って細かく指定して、アニメのスタジオにもしょっちゅう来てダメ出ししたんだ。そのせいでアニメスタッフさん達が物凄く迷惑したんだって。一応聞くけど、
小栗くんはそういう『自分のキャラ大好きタイプ』じゃないよね…?

「………!」

実は僕は内心、さっき見た資料のキャラデザインを、後で日本アニメーションさんに「もっと原作よりに変更してほしい」と要望を出すつもりでいました。
しかし、Mさんのその圧力の強さに僕は、
「ま…まあ、そうですね。やっぱりアニメはアニメのプロに任せた方が良いですよね〜
と、苦笑いで同調する他ありませんでした。

◾️この当時のアニメ化のスタンス

最近は漫画家の立場も変化していたり、SNS等でユーザーの意見が届きやすくなった事もあり、漫画をアニメ化する際は「より原作に近く」「より原作ファンが納得する様に」というのが、基本的なスタンスです。
でも、1998年当時は、まだまだそういった風潮ではありませんでした。特に子供向けのアニメは、あまりコストをかける作り方をしていませんでした。
正直『作品』を作るというより、テレビ局は『番組』として作るという意識が強く、あくまで原作漫画は「キャラや設定を借りる」ぐらいの感覚だった様に思います。

実はこの第一話の脚本で、もう一つ驚いた事があります。それは、ドクダミくんの口調が「標準語」だった事。
漫画のテンテンくん読者なら、おそらくほとんどの人が「ドクダミくん=関西弁」のイメージが強いはずです。でも、脚本家の人も、プロデューサーも特に気にしていない。
そのくらい原作漫画について、ある意味「おおらか」に捉えている時代でした。

◾️あの主題歌を聴いた時

しばらくすると、アニメの声優さんのオーディションテープが送られてきました。そのテープでは、テンテンくんとヒデユキくんの声をそれぞれ二人ずつ、声優さんが演じています。
アニメの主役の声を決める際は原作者の意見も聞く、というのが当時も今も一般的な様です(この時、他のキャラの声は特に聞かされませんでした)。

僕はテープから流れたゆきじさんと、摩味さんの声を聞いて「まさにイメージ通りのテンテンくんとヒデユキくんだ!」と感動し、テンションが上がったのを覚えています。
僕はそのお二人を選び、結果的に僕の意見が通ったのかはわかりませんが、そのままお二人に決まりました。

そして別の日に、またテープが送られて来ました。
今度は「主題歌」です。
主題歌はアニメの『顔』なので、当然めちゃくちゃ大事です。
ですが、実は前もってMさんからある情報を聞いていました。
「アニメの主題歌、かなりインパクトあるよ…」と。

とりあえずテープのラベルを見ます。そこには歌のタイトルと歌手名がありました。
「『クラスで一番スゴイやつブラブラブラボーズ…? こんな名前のバンド聞いた事ないな…」
(※ちなみにブラブラブラボーズの正体は、最後まで謎でした。何となく聞いた話では、この時のためだけに結成した、ミュージシャンのユニットだったとの事です)
不思議に思いながら、カセットをオーディオにセットして、ドキドキしながら再生ボタンを押します。…カチッ

ドゥルドゥルドゥルドゥルズドズドズドズド……テレテンテンテレ、テンテンテレテン♪
最初に軽快な前奏が流れてきました。
続けてーー
「ブラブラブラボ〜、クラスで一番の〜
何する時でもドンケツのボクは、ダメダメダメ星人〜〜♪」

「始まった! おっ、出だし、なかなかノリ良いじゃん」

そして、テンポ良いメロディと歌詞が続き、そのままサビに来ました。

すると、耳を疑う歌詞が聴こえてきたのです。

「ゆ〜こときかな〜い、勇気がたりな〜い、
コッチン コッチン コッチン コッチン汗かき棒立ち金縛り〜♪
ゆうこときかな〜い、勇気がたりな〜い、
コッチン コッチン コッチン コッチン
コッチン コッチン コッチン コッチンコ〜
チンコ〜!

チンコ!! チンコ!! チンコ!!

Uh〜!」


「……………えっ? もしかして今、
チ◯コって言った…?」
僕は衝撃を受けました。
「ア…アニメの主題歌で、チ◯コって言っていいんだ…」
そう驚いていると、信じられない第二波が来ました。

「手ばなしHappy〜、手ブラでLucky〜
幸運 コーウン コーウン コーウン…」

ま…まさか……

「コーウン コーウン コーウン コーウン
コーウン コーウン コーウン コーウンコ〜
ウンコ〜!!

ウンコ!! ウンコ!! ウンコ!!

UN〜!」

「やっぱり!!!」

……ここまで来ると、さすがに僕は笑ってしまいました。というか、
笑うしかない……(笑)。
それに、漫画家に完成したアニメ主題歌を却下する様な権利が無い事は、この間の打ち合わせの感じで重々わかっていました。

未だにたまに話題になる伝説の曲
(ちなみにこのCDは現在
プレミアが付いてるみたいです)
歌詞を知りたい方はアップにして見て下さい
ちなみに作曲・編曲をされている山崎利明(現在は山崎燿)さんは後に、AKB48の『ヘビーローテーション』を作曲しました。よく聴くと少し似てるかも
尾田栄一郎先生の貴重な感想です


曲を聴き終わると、僕はMさんに電話を掛けました。
Mさんは電話に出るなり、
「聴いた?(笑) ……どうだった?」

僕は正直に言いました。

「まぁ…、大人の悪ふざけですね…

「ははは、まぁそうだね」

「でも、テレビのプロ、アニメのプロがこの主題歌で行こうというなら、仕方ありません。確かにインパクトはありますし、小学生男子には多分ウケると思います。ただ、品は全くないですけど」

「おおっ、小栗くん大人になったね。
じゃあ、「原作者は気に入ってた」と伝えておくよ」

僕は叫びました。

「いや、断じて気に入ってはない!!!」


こうして、あの世紀の超問題主題歌『クラスで一番スゴイやつ』は誕生したのでした。
ちなみに、ついこの間も僕はカラオケでこの歌を熱唱しました(笑)。
(つづく)
次回、いよいよ第一話放送。その感想は…。
そして、アニメ化のテレビのギャラは一体⁉︎(次回予告で書きましたが、今回は入りませんでした。ごめんなさい)
更に、アニメ化が漫画連載に及ぼした影響とは……⁉︎
乞うご期待!!

今後の連載を見逃さないように、ぜひnoteのフォローをお願いします!
それと、スクロール一番下の『スキ』ボタンを押したり、コメントを頂けると執筆の活力になります!!

一言でも良いので

感想のコメントよろしくお願いします🙏
(この連載は無料記事なので、皆さんの感想が楽しみで書いてます。返事も結構します!)  


告知】これまでSNSで公開した、懐かしい「昭和の子供あるある」や、「ジャンプ連載当時の裏話(世紀末リーダー伝たけし!との幻のコラボ漫画の思い出など)」思い出漫画をnote用にまとめました😄
更に今回、描き下ろしの新作漫画も3本追加で全24本収録。(ありがたい事に、多くの方から高評価頂きました🙏)
無料で数本読めますのでよろしくお願いします👇


僕のデビュー作で、赤塚賞準入選作『トウフノカド』を限定公開中(¥100)ご興味のある方はぜひ。エッセイ連載の応援としても、よろしくお願いします!↓😄
(オマケでエッセイに書かなかった、手塚赤塚受賞パーティの裏話も載せています)


第一話を読み返したい人は是非👇


テンテンくん&デモモTシャツをBASEで販売中!(現在、特典でテンテンくんの幻の続編読切『12年後のテンテンくん』収録の漫画冊子が、Tシャツ一枚購入につき一冊付きます。※特典は無くなり次第終了します。残り数十冊)

いいなと思ったら応援しよう!

小栗かずまた 僕の記事が面白い!これからも、もっと読みたい!と思ってくれた方、チップを執筆のエネルギーに変えて頑張りますので、応援よろしくお願いします‼️