医師の説明がわからない、をAIが解決してくれた話
「お父さんの具合が悪いの。旅行はキャンセルになると思う」
春先に、母から突然LINEで連絡があった。
LINEをもらった時点では、状況がよくわからなからず、あとで落ち着いて通話すると、胸が苦しいと言って父は自宅の玄関で動けなくなり、そのまま救急車で病院に運ばれたということだった。どうやら、心臓に水が溜まってしまったことによる心不全の一種らしい。
あぁ、父ももうそんな歳なのか。倒れたり、病院にお世話になったりするのだな、と意外とあまりショックは受けなかった。すでに無事がわかっていたせいもあるかもしれない。でも心配であることには変わりなく、最新の情報をできるだけタイムリーに共有してくれるように、母にお願いした。
しかし、病気に関する情報共有はとてつもなく大変なことだった。
救急車で運ばれた日には「心臓に水が溜まってしまった」と聞いていたのだけど、どうやら後日の検査の結果、見つかったのは肺の疾患だという。え、あれ、心臓じゃなかったの? 肺なの?と混乱する。肺の疾患なので、どうして心臓に水が溜まったのか原因がわからないらしい。
1週間ほど経って、脳にも影がある、という話が出てきた。しかも歩くときにふらついてしまうという。肺の疾患だったら、どうしてふらつくのだろう?新しく見つかった脳の影の影響なのか?
情報は増える一方で、とっ散らかっていく。
母が「わからないのよ」と言う。
母にLINEで「結局、不調の原因はなんなの?」と聞いても、「それが、わからないのよ」と返事が来る。
母の言う「わからない」が、医師による判断の原因不明であるという「わからない」なのか、医師の説明を聞いた母が理解できないという意味の「わからない」なのか……?わたしにもわからなかった。
母のLINEをいくら読み返しても「結局どういうことなの?」と、わたしの頭にはてなが浮かんでいる。でもこの霧を晴らすための適切な質問も、どう聞いたらいいかさえわからない。
京都に住むわたしが、埼玉の病院で治療を受けている父の病状説明を、毎回直接聞きに行くわけにもいかない。一度、たまたまタイミングがあった海外在住の弟が、LINEのスピーカー通話で医師から話を聞けたが、毎回そんな同期的なコミュニケーションが取れるとも限らない。
もやもやを抱えながら、得られた断片的な情報をインターネットで検索してみるものの、あふれる情報の洪水で、なにが正しいのかますますわからない。不確かな情報をもとに、膨大な情報を目で追い続けて、ぐったり疲れてしまった。
できるだけ、多くの情報をわかりたい。母ががんばって伝えてくれているのは重々承知しているからこそ、母がボトルネックかもしれないと思うことが心苦しかった。できるだけ一次情報がほしいので、病院で書類をもらったら、写真を撮って送ってもらうよう母に頼んだ。
どこで引っかかっているかわからない「伝言ゲーム」からくる情報不足と不安感は、父の病状への心配に重ねて、わたしの心にさっと影を落とした。ただでさえ、お父さんのことが心配なのに。お母さんだってがんばっているのに。
そんなある時、ふとひらめいた。
父の病状への心配と、情報が錯綜することへの不安。二重の苦しさに心が押しつぶされそうになっていたその時、あるアイデアが頭をよぎった。
いつもライターの仕事で使っているAIによる文字起こしと要約を医師の説明にも使ってみればいいのでは? というアイデア。
そこでさらに、趣味のボードゲーム界隈で話題になっていたNotebookLMのことを思い出した。ほかのAIツールはインターネット上の情報など、さまざまなソースを拾ってくるのに比べ、NotebookLMは自分で読み込ませた情報のみを元に回答を生成するため、誤った回答になりにくい。その特徴がボードゲームのルールブックを読み解く上で役に立つというような話だった。
ボードゲームのルールブックを読み解くのに役立つなら、診断書や治療の方針書も読み込ませてみれば、理解に役立つのでは!
NotebookLMに頼ろうと思った2つの理由
NotebookLMについて調べてみると、まさに今回の目的にぴったりの特徴が2つあった。
まず、なにより信頼できるのは、生成する回答の根拠を、読み込ませた資料の中から引用して示してくれること。インターネットの不確かな情報に惑わされることなく、医師の説明や診断書という「一次情報」だけを元に理解を深められる。
そしてもう一つ、アップロードしたデータがAIの学習に使われないという点も決め手だった。病気というプライベートな情報を、安心して任せられると感じた。
うむ、これは頼りになりそうだ。
そこで、2ヶ月ほどのもやもやした時間を経て、揃った父の病気についての下記の資料(どれも専門的で難しい)を読み込ませてみた。
細胞診断の報告書
治療方針についての説明書
手術についての事前説明音声(録音の際に医師の了承済み)
すると、またたく間にこんな画面が表示された。

読み込ませた3つの資料をもとに、情報を要約してくれている。
そして、チャット形式で、読み込ませた資料をもとに質問に答えてくれる。
わたしは「病状について、中学生にもわかるように説明して」と頼んでみた。
結果は期待以上。わかりやすく病気について解説してくれた。(回答画像の掲載は控えるが)父の身体のどこに何が起きているのか、ふらつきの原因はなんだったのか、クリアになった。
さらに、「中学生でもわかるように噛み砕いて、今後の治療方針を説明して」とお願いしてみた。

すると、病巣の大きさに合わせて、3つの治療法を組み合わせていくことをわかりやすく説明してくれたのだ。
それぞれの治療法について取り組むことはバラバラに聞いていたけれど、わたしのなかでうまくつながっていなかった。総合しての理解まで及んでおらず、ここでやっと「病巣のサイズごとに」「3つの治療法」を組み合わせるという骨子がつかめた。
わかる!わかるぞ!
今までもやもやしていたことがわかって、すっきり整理されて、父の治療について家族としてかなり、かなり前向きになれた。わからない、ということがこんなに気持ちを重くしていたのかと気づく。
しかもNotebookLMは、こんな医師の言葉をハイライトして伝えてくれた。
医療はすごく進歩しており、成績も上がっています。
厳しい状況、がっくりしてしまうかもしれない状況ではある、と前置きしつつも「医療はすごく進歩しており、成績も上がっています」と、お医者さんの力強い言葉。該当箇所を辿って音声を聴くこともできた。母もこの部分の音声を再生しては、心強く感じたそうだ。

AI要約といえば、もっと淡白に、データを整理して伝えてくれるものだと思っていた。けれど、NotebookLMがつけてくれた、このハイライトの言葉がお守りのように思える。
母も、録音と、私への録音データ送付の手順を覚え、これできちんと家族へ共有ができること、繰り返し後から確認できることに安心したようだった。わからないときも、わからないことをそのまま共有できるというのは大事だ。
父の闘病は続く。でも、家族の情報共有の方法は見つかって、父の周りの家族たちの霧のような不安はかなり軽減された。AIの力を借りながら、前向きに進んでいければな、と思う。
本文中には、医療に関する情報や経験を含んでいますが、あくまで一個人の記録にすぎません。近年はAIでもさまざまな情報を得られる時代ですが、大切な判断は、必ず医療の専門家と相談のうえでなさってください。
このnoteは、コンテスト「#AIとやってみた」で入賞をいただきました!
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。もしよかったら、スキやフォロー、シェアなどをしていただけましたらあなたの反応が見えてうれしいです。 
