あいびき
私は「完璧な餃子」になりたい。
子供の頃からの夢だ。
薄皮を箸で破った瞬間にじゅんわりと溢れ出す肉汁。熱々で、濃厚で、旨味の塊。あれになりたい。あれに、なれる?
理想の餃子は、噛んだ瞬間に肉と私が一体化する感覚。至福の、完全なる融合。
そのためには最高の肉が必要だ。
私は夜な夜な試した。牛と豚の合いびき。鶏と豚。牛と鶏。あらゆる組み合わせで餃子を作り、自分の肉と混ぜ合わせた。
全て、不味かった。
おかしい、私は餃子になりたいのだ。私のせいではない。
決定的な「何か」が欠けている。焼き上がった餃子を口に運ぶ。噛む。肉汁が広がる。だが、違う。これじゃない。私が求めているのはこんな凡庸な味じゃない。もっと特別な、もっと運命的な──。
私は探し始めた。私の肉と完璧に溶け合える、運命の「合いびき肉」を。
合コンは効率がいい。まるでスーパーの精肉コーナーのように、一度に複数の男を品定めできる。筋肉質の男には興味がない。肉付きのよい男性を選び、二次会に誘い出す。
「逢引」という名の下見だ。会話をする。笑顔を作る。「暁子(あきこ)さん」と呼ぶ声で脂肪の付き具合を判断する。この男の肉は、私とどれだけ相性がいいのか。想像しただけで涎が垂れてきそうになる。
相性。それが全てだ。
見極めたら、行動は早い。
ホテルに誘い出し、事を済ませた後の疲れ切った男が狙い目だ。
尻の肉が一番いい。程よい脂肪と赤身のバランス。私はナイフを取り出す。まず自分の尻から削ぐ。痛みは慣れた。次に男の尻を削ぐ。男は叫ぶ。血が流れる。やがて静かになる。
二つの肉を混ぜ合わせる。これが本当の「合いびき肉」だ。
だが、まだ見つからない。完璧な相性の男が。
もう八人試した。いや、八百人かもしれない。数えるのは既にやめた。
私は今夜も合コンに行く。きっと今夜こそ、運命の合いびき肉に出会える。
私は餃子になる。完璧な、究極の、餃子に。
(つづく)
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