顧客の視点を忘れないよう、自分を訓練し続けること
偉くなって、周りから「社長」だの「会長」だのと呼ばれ始めると、人間というのは恐ろしいほど簡単に「自分は何でも分かっている」という勘違いの泥沼に足を取られてしまいます。
会議室のふかふかの椅子に深く腰掛け、部下が持ってきた立派な資料を眺めながら、「うむ、これは筋がいいね」なんて言っている瞬間、私たちの視力は、実は「一人の人間」としての感度を完全に失っていると言っても過言ではありません。
今回は、私が日々の生活の中で、あるいは出張続きの機内や、沖縄の自宅で「飯」を頬張っている時に、自分自身に課している「ある種の修行」について、カッコつけずにお話ししてみたいと思います。
完璧な「設計図」よりも、まずは「客席」に座ること
私が経営に携わっている岩手県紫波町のオガールプロジェクトも、あるいは現在進行中のさまざまなまちづくりも、最初はいつだって「一枚の図面」や「収支計画書」から始まります。設計のプロたちが知恵を絞り、一分の隙もないような完璧なプランを提示してくれる。それ自体は素晴らしいことですし、仕事としては正しい姿です。
しかし、ここで陥りがちな罠が「図面の中だけで完結してしまうこと」です。
図面の上では、動線は完璧で、施設は美しく、多くの人が笑顔で集まっているように見えます。しかし、実際にその建物ができあがり、自分が一人の利用者としてその場に立った時、「あれ、なんだか居心地が悪いな」「このベンチ、ここに座っても全然楽しくない」と感じることが多々あります。
この「違和感」こそが、顧客の視点です。
どれだけ緻密な設計図を書くことよりも、自分が実際に「客席」に座ってみること。これは、実はとても怖いことです。自分が良かれと思って進めてきたプロジェクトが、一人の利用者として接した瞬間に「つまらないもの」だと突きつけられる可能性があるからです。でも、その「怖さ」から逃げて、専門家としてのプライドや理論武装の中に逃げ込んでしまったら、その事業の寿命はそこで尽きてしまいます。
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