制度の前に「人を信じる」という究極の覚悟。紫波町・藤原孝元町長が教えてくれた、公民連携の真髄
世の中の多くの自治体では、「法律で決まっているから」「制度上、前例がないから」という言葉が、新しい挑戦を阻む絶対的な壁として立ちはだかっています。
しかし、私たちが社会を豊かにするために作り上げたはずの法や制度が、いつの間にか目的そのものにすり替わり、人々のより良い暮らしを縛り付けているのだとしたら、それは完全な本末転倒ではないでしょうか。
「法や制度の為に人が有る、のではなく、人の為に法や制度が有る」
この本質を、会議室の空虚な議論としてではなく、自らの背中と重い決断で如実に示してくれたのが、紫波町の藤原孝元町長でした。
今回は、行政の仕組み以上に大切な「人を信じる」という哲学について、私の仕事や思想の原点とも言えるエピソードを交えて、じっくりと綴ってみたいと思います。
異常な光景を生み出した、本質を見失わない決断
地方行政の常識や、公共施設の不動産開発における法制度に少しでも詳しい方であれば、紫波町におけるプロジェクトの光景が、いかに「あり得ない」ものであるかをご理解いただけるはずです。
例えば、公共施設である図書館のすぐ目の前に、民間資本のホテルが開業しているという事実。
あるいは、静寂と公平性が厳格に求められるはずの図書館という空間に、民間の商業テナントがシームレスに融合しているという事実。
これらは、「公と民の財産は厳格に切り離し、明確な境界線を設けるべし」という、旧態依然とした行政の強固なルールや慣例からすれば、まさに規格外であり、通常であれば企画書を通すことすら不可能な案件です。
さらに困難を極めたのが、景観の形成と法規制の両立です。
建物を建てる以上、消防法や建築基準法という、人命に関わる極めて厳格な法規制の網の目をクリアしなければなりません。
行政の安全牌としては、「法律を確実に遵守し、監査で指摘されないために、デザインや美しい景観はある程度妥協して無難な箱モノを造る」というのが一般的な思考回路です。
しかし、藤原元町長は違いました。
「町民にとって真に豊かで、誇りに思える空間とは何か」という究極の目的を決して見失わず、厳格な法に完全に準拠する傍らで、一切の妥協なく素晴らしい景観を創り上げるという、最も困難で、最も労力のかかる道をあえて選び取ってくれたのです。
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