祭りを3週間早めたら、売上が1.85倍になりました。ウォーカブル政策に足りないのは、日陰という一言です。
オガール祭りは、長いあいだ8月の恒例行事でした。それを、7月の初旬に動かしました。
理由はひとつです。8月の紫波が、暑すぎるからであります。
日程を動かすというのは、地方の現場では相当に怖い決断です。恒例行事には恒例行事の理由があり、出店者にはそれぞれの都合があり、「なぜ今年から変えるのか」という声も当然あがります。お盆前の人の流れを捨てるという判断でもありました。来場者が減れば、出店してくださった方々に申し訳が立ちません。正直なところ、震えながら決めたというのが本当の話です。
結果として、全体の売上が1.85倍になりました。
もちろん、日程だけが要因ではないでしょう。天候にも運があり、コンテンツの積み上げもあります。それでも、現場に立っていた人間として、これだけは言えます。人は、暑くなければ来るのです。歩ける気温であれば、ちゃんと外に出てきてくださるのであります。
「マチがイエに負けている」のではなく、ヤネに負けているのであります
2026年7月21日、国土交通省が「これからの都市交通施策の方向性」という中間とりまとめを公表しました。都市を「拠点」と「軸」で捉え直し、公共交通を需要対応型から需要創出型へ転換していくという内容です。
この資料の中に、私が思わず唸った一文があります。近年、外出率が下がり続けているという現実を指して、「マチがイエに負けている」と書いてあるのです。
行政の資料でここまで率直に負けを認めた表現は、なかなかありません。ただ、ひとつだけ皮肉を申し上げるならば、マチが負けた相手は、たぶんイエではありません。
だってそうでしょう。人はちゃんと出かけているのです。夏の休日、ショッピングモールの駐車場は満車で、地下街は人で溢れ、駅ビルのフードコートは席が空いていません。みんな家にいるどころか、けっこうな距離を移動して、けっこうな時間を歩いています。
ただし、屋根の下しか歩いていない。
マチがイエに負けているのではなく、マチがヤネに負けているのであります。そしてヤネの下には、必ず空調があります。つまり負けた相手を正確に言えば、屋外が空調に負けたのです。
診断を一文字だけ書き換えると、処方が変わります。イエに負けたのなら、外出の動機づけの話になります。ヤネに負けたのなら、屋外の熱環境の話になるのであります。
69,000字を検索して、「暑さ」はたった1回でした
気になったので、公表された本編PDFの全文を機械的に検索してみました。およそ69,000字あります。
「暑さ」の出現は、1回だけでした。
その1回は、回遊性の向上を論じた箇条書きの中の、こういう従属節です。「この際、暑さや降雪など、地域特性に応じた気候への配慮も必要」。暑さが、雪と並んで、地域特性の棚に置かれている。
そして「熱中症」「ヒートアイランド」「気候変動」「街路樹」「緑陰」「木陰」「日陰」「シェード」は、すべてゼロでした。「緑」という字は2回出てきますが、どちらも「公園緑地・景観課」という部署名です。
雪は、たしかに地域特性です。紫波には降り、那覇には降りません。けれども2026年の日本で、暑さは地域特性でしょうか。北海道でも猛暑日が出る国で、暑さは一部地域の事情ではなく、全国共通の前提条件になっているはずです。
念のため申し上げますが、これは政策批判ではありません。むしろ逆です。中身は良いのに、売り方で損をしているのではないか、という話をしたいのであります。都市交通政策という言葉も、ウォーカブルという言葉も、本当に歩いている方が提言をまとめられているのかなぁと感じてしまいました。
住民が欲しいのは広い歩道や交通手段ではなく、日陰じゃないの?
マーケティングの世界に、顧客はドリルが欲しいのではなく穴が欲しい、という有名な命題があります。売り手は自分の商品を語りたくなりますが、買い手が欲しいのは結果だけだ、という話です。
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