図書館を、無担保・無保証で建てました。これは私の知る限り、日本で初めて公共施設を本当の意味で証券化した事業の話であります。
先週のnoteで、私はオガールプラザ株式会社の社長を退任したこと、そしてSPCという器を人に依存させないように設計してきたことを書きました。今回は、その器の話を、金融の側面から、もう一段深く掘り下げてみたいと思います。
なぜなら、オガールプラザという事業は、金融の事例として画期的なものだったと、私は考えているからであります。私の知る限り、オガールプラザは、日本で初めて、公共施設を本当の意味で証券化した不動産開発でありました。
証券化などと言うと、金融の専門家だけの難しい話に聞こえるかもしれません。ですが、その本質はきわめて単純であります。ある事業が生み出すお金の流れそのものを、信用の主体に据える。土地や建物を担保に取るのでも、経営者個人の連帯保証を取るのでもなく、事業のキャッシュフローそのものに融資する。これが証券化の核心であり、プロジェクトファイナンスの思想であります。
そして私は、その融資を、無担保・無保証で獲得したのであります。
PFIの多くは、「にわか証券化」に過ぎません
ここで一つ、はっきりと申し上げておかなければならないことがあります。
「公共施設を証券化した事例など、PFIでいくらでもあるではないか」という反論が、必ず出てくるはずだからであります。確かに、日本にはPFIという制度があり、BOT方式やBTO方式といった手法で、民間が公共施設を建て、運営してきた事例は数多くあります。紫波町の役場庁舎そのものが、木造としては国内最大級のPFI事業(BTO方式)で建てられたものであります。
ですが、PFIの多くは、金融の視点から見れば「にわか証券化」に過ぎないと、私は考えております。なぜか。それらの事業の返済原資が、結局のところ、行政からのサービス対価の支払いだからであります。
行政が毎年、決められた額を民間に支払う。その支払いを裏付けにして、銀行は安心して融資する。これは、返済原資が税金であることに、何の変わりもありません。信用の源泉が、自治体の財政力そのものに寄りかかっているのであります。事業が稼ごうが稼ぐまいが、行政が払ってくれる。それを担保にした融資は、本当の意味で事業のキャッシュフローに賭けた融資とは言えないのであります。
オガールプラザが挑んだのは、そこではありませんでした。
商業テナントという100%民間リスクと、図書館を同居させる
オガールプラザは、一つの建物の中に、紫波町図書館という完全な公共施設と、産直施設・クリニック・飲食店・学習塾といった、100%民間リスクの商業テナントを、同居させた不動産であります。
これが、どれほど異例のことか。
公共施設は、行政が税で支える世界であります。商業テナントは、稼げなければ即座に撤退する、剥き出しの市場の世界であります。この水と油のような二つを、同じ屋根の下で、同じ一棟の不動産として組成し、その全体を一つのSPC──オガールプラザ株式会社──に持たせた。行政の安全網に守られた公共施設ではなく、市場のただ中に立つ商業テナントの賃料を、事業の背骨に据えたのであります。
私たちは、公共部分の負担を最小化するために、情報交流館(図書館と子育て支援センター)の床は完成後に町が買い取る仕組みにし、そこには、まちづくり交付金2億7700万円が充てられました。ですが、商業部分については、補助金を一円も入れておりません。あえて、入れなかったのであります。
補助金を入れれば、事業の見積もりは必ず甘くなります。誰も本気で採算を問わなくなる。全国の第三セクターが辿った失敗の道は、ほとんどがここから始まっているのであります。だからこそ私たちは、商業部分を補助金ゼロで、民間金融の厳しい審査に晒すことを選びました。銀行が「これは貸せる」と判断できる事業でなければ、そもそも作らない。この覚悟こそが、オガールプラザの信用の出発点でありました。
民間都市開発推進機構の優先株が、銀行の背中を押した
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