一度挫折した社労士事務所が、電子化に再挑戦できた理由

「システムを使わなくなったのは、性能の問題ではなく、こちら側の事情です」——中島社会保険労務事務所の代表・中島孝一先生はそう語ります。約6〜7年前に一度「オフィスステーション Pro」を導入したものの、当時は多忙で定着せずに離脱。しかし2025年7月、状況が変わり再導入を決断しました。「完璧に移行しなくていい」という考え方で紙と電子を使い分けながら運用を続ける同事務所の事例は、電子化に二の足を踏む多くの社労士事務所にとって現実的なヒントになるはずです。
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導入前の課題・決め手・効果
【導入前の課題】
紙とe-Gov中心の運用で、個人番号を含む手続きの郵送コスト(月2万円程度)がかさんでいた
過去にシステム導入を試みたが、多忙でインプット時間が取れず定着しなかった
リモートワークを進める上で、紙中心の業務フローでは限界があった
【導入の決め手】
役所から顧問先企業への「電子申請導入を」という連絡が繰り返し入り、対応の必要性が高まった
岩田先生が主導する体制が整い、導入後の運用を任せられる見通しが立った
複数サービスを比較した中で、価格面とセキュリティ面のバランスに納得できた
【導入の効果】
個人番号を含む手続きの郵送費削減が見込めるようになった
リモートワーク環境でも処理しやすくなり、働き方の幅が広がった
台帳への情報蓄積が進み、紙管理からデータベース型の運用へ移行しやすくなった
一度は挫折した電子化。それでも再導入に踏み切った理由

大阪を中心に建設業・運送業をメインに支援している中島社会保険労務事務所。業務内訳は1号業務が3割、2号業務が2割、3号業務が5割で、「企業の総合診療科」として経営全体に寄り添うスタンスが特徴です。
「オフィスステーション Pro」を最初に導入したのは6〜7年前のことでした。しかし当時は中島先生がほぼ一人で社労士業務を担っており、システムを覚える時間・設定する時間が取れず、ほとんど使わないまま離脱することに。「システムの性能の問題ではなく、完全にこちら側の事情」と中島先生は明言しています。
再導入の直接的なきっかけは2つありました。
1つ目は、役所から顧問先企業への直接連絡。
特定の年金事務所から、中島先生ではなく顧問先企業に対して「電子申請を導入してほしい」という連絡が繰り返し入るようになりました。当初は中島先生のところに電話を回してもらう形で対応していましたが、顧問先から「そろそろ何とかしてほしい」という声が上がり始め、放置できない状況になったといいます。
2つ目は、役割分担できる体制の整備。
今回の再導入では、東京と大阪を行き来しながら勤務するファイナンシャルプランナー兼スタッフの岩田先生が導入・運用を主導する体制が整いました。前回との最大の違いはここです。「彼に任せられるというのが大きかった」(中島先生)。
紙と電子をどう使い分けるか——「移行の途中段階」という現実的なスタンス
現在の中島社会保険労務事務所では、すべての業務を電子に一本化しているわけではありません。顧問先企業とのやり取りが紙中心の会社は紙で対応し、メールやデータでのやり取りが可能な会社は電子で進める、という使い分けをしています。「今は移行の途中段階」という認識で運用中です。
電子化を特に進めやすい業務:入退社手続き
資格取得・喪失の際には個人番号が必要なため、紙で送る場合は記録付き郵便が前提となりコストがかかります。電子化によってこの郵送コストを削減でき、履歴管理もしやすくなる点が主な活用理由です。
一方で、紙・窓口を優先する場面も
離職票など「今すぐほしい」と言われるケースでは、電子申請だと反映まで数日かかることがあります。ハローワーク梅田が近いという立地を活かし、急ぎの案件は窓口対応を選ぶこともある。コスト削減のために電子を使う場面と、スピードを優先して紙を使う場面を明確に分けているのです。
「本音を言えば一本化した方が管理は楽です。紙で処理したものを後からデータ入力したり、スキャンして保存したりと、二度手間が発生します。ただ、顧問先の事情やスピード感も大事なので、現状ではそうした使い分けが一番現実的だと思っています」
導入定着を支えた2つの要因:役割分担とサポート体制

役割分担の明確化
中島先生が顧問先対応や外部との折衝を担い、登録作業や運用面は岩田先生が担当する体制になっています。前回との最大の違いがここです。「誰がシステムを進めるか」を決めておくことが、定着の前提条件になっています。
電話サポートの存在
岩田先生は「使い始めて半年で何度も電話で問い合わせをしたが、一度も『確認して折り返します』という対応がなかった」と振り返ります。導入初期はチャットよりも電話の方が「聞きたいことを言い換えながら確認できる」という点で助かったとのこと。
また、「最初からすべてを入れ切らなくても、少しずつ情報を積み上げていける」という感覚が、継続運用のハードルを下げた要因にもなっています。
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導入効果と今後の展望
現在は導入から半年ほどで、1年を通じた費用対効果を検証している途中。ただしすでに実感できている変化として、以下が挙げられています。
個人番号を含む書類の郵送費削減(以前は月2万円程度かかっていたレターパック等)
リモートワーク環境下でも処理を進められるようになった
社会保険手続きにおいて、紙より電子の方が早く進むケースが出てきた
今後については、電子化で生まれた余力を営業活動に向けたいという意向も語られています。FAXや電話による個別アプローチから、ホームページ・SNS・Web広告などを活用した効率的な集客へのシフトが目標です。
移行に不安がある事務所へのメッセージ
「最初から完璧にやろうとすると負担が大きいので、できるところから始めるのがよいと思います。紙から電子に変えるのは勇気がいりますが、実際にやってみると、少しずつ慣れていける部分もあります」
「うちも一度は挫折しています。だからこそ言えるのは、システムそのものよりも、誰が進めるか、どう役割分担するかが大事だということです。全部を一気に変えなくてもいいので、紙と電子を使い分けながら、自分たちに合う形を見つけていけばいいと思います」
一度失敗しても、体制さえ整えば再挑戦できる。紙と電子の完全一本化より、現場に合った使い分けを優先する。中島社会保険労務事務所の事例は、「完璧な移行」より「続けられる移行」を目指す全国の社労士事務所にとって、等身大のロールモデルになるはずです。
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