[考察]iPhoneはユーザーの会話を盗聴しておすすめを表示している?‥のカラクリ
2026年2月25日の『これ余談なんですけど…』の番組内で、お笑いコンビ「かまいたち」の山内健司氏が、「スマホは会話を盗聴しているのではないか」という疑いを語った記事がありました。
都市伝説は、
身近な出来事の真偽が曖昧で「もしかすると本当かもしれない」と思わせるところに魅力があります。特にその対象が巨大企業だと なおさら「本当のことは隠されているのではないか」という心理が働いて、事実のように感じられます。
せっかく盛り上がっているところ、水をさすようで恐縮ですが、
今回はこの題材について、IT分野の視点から考察したいと思って原稿を書きました。
気を悪くされましたら申し訳がありません‥。いや、不安が払拭されれば幸いです‥と表現した方がきれいですね。
画面のキャプチャー画像の使用について、
よしもと様が運営する『OmO (オモ) 』様に
ご連絡をさせていただいております。話題に出てきたシチュエーションをまとめると‥
ブラックマヨネーズ吉田氏の例
●楽屋でボートレースの話をしたら、ボートレースをやらない小杉氏のスマホにレースのニュースが表示された。
●海外旅行の話で、その国のあいさつが「アパ」だった。帰国後、アパホテルの広告が表示されるようになった。
かまいたち山内氏の例
●打ち合わせで「刈り上げの浅野温子氏」の話をした。その直後にInstagramのおすすめに、その「刈り上げの浅野温子氏」の画像が表示された。しかも過去にまったく検索したことがない。
これについては過去のYouTubeでも語られています。
かまいたちチャンネル
【緊急!都市伝説】かまいたち山内があのiPhone都市伝説を裏付ける事件発生!〜会話した直後にオススメ表示〜 2024/09/16
こちらの話が元になっているようです。
わかりやすいトークで被害を訴えておられます。白熱している山内氏に対して、冷静な濱家氏の対比が面白いつくりになっています。
ここではITの視点から読み解いてみたいと思います。
まず前提として、
Google、Meta、Appleなどの各企業は、スマートフォンのマイクを広告のために利用している事実はないとしています。
Appleにおいて、音声アシスタントが誤作動して録音されていたことが問題になった事例はありますが、これはおすすめの提案目的の盗聴とは別の問題です。
Siriを起動する言葉「Hey Siri」等の誤検知で、意図せずいつのまにか録音された音声の一部が品質改善のデータに混ざって使われて、集団訴訟が起きたという話で、今回のおすすめに利用される話とはまったく無関係となります。
あたりは厳格に整理をしておきたい情報です。
マイクから音声を拾う仕組みが動作していたら
iOSやAndroidでは、マイクの使用などには権限が必要となります。そして利用時にはユーザーの許可が必要です。また音声データを送信するためのコストとして、バッテリー消費と通信量が多くなり、一般的ではありません。
また会話を盗聴して広告に使うなら、数億ユーザーの音声や常時音声解析、文脈理解をする受け皿となるシステムも必要となります。こちらも相当なコストをかけることになりますが、そのようなシステムを保有しているという報道はありません。
盗聴の正体は「行動予測」
ここではInstagram、FacebookでおなじみのMeta社について説明していきます。同社が正確な広告を出せるのは、音声からの取得ではなく、以下のデータを収集しているためです。
検索履歴
位置情報
類似ユーザーの行動
アプリ利用状況
いいね!
このようなデータが他のアプリやWebサイトからも収集されているため、たいへん精度が高いユーザーの興味関心を推測できるのです。
つまりこれらのデータで十分な成果が出ているため、あえてプライバシーを侵害するようなマイクを使うことはないものと考えられます。
ただし高度な行動ログの解析により「盗聴されているような感覚」がありユーザーが不安になるのは事実で、Meta社はユーザーのプライベートな健康データや行動ログを広範囲に自動収集しており、そのデータ利用の在り方が「盗聴に近い」として法的問題になっているのが現状です。
Googleなどの各社も方式は異なりますが、同類の仕組みを利用しています。
Appleはプライバシーを重視しているため、他社よりも控えめな範囲でユーザーの情報収集を行っています。
なぜ話している内容が おすすめなどで表示されるように見えるのか、
ITの分野から考えてみました。
[理由]環境が近いユーザー同士がグルーピングされる
複数のユーザーが
同じ場所にいる
同じWi-Fiルータ(Wi-Fiアクセスポイント)に接続している
同じ位置情報
同じ時間帯のアクセス
という状況にある場合、「近くの人が興味を持っている話題」を推定して判断されることがあります。
会議室にいる誰かが該当するキーワードで検索をしたり、いいね をすると、近くにいるユーザーも同類グループとして扱われるため、おすすめに出てきます。
※上記で「位置情報」とありますが、これはGPSとは異なります。
インターネット接続に使っている回線(プロバイダ)から、おおよその地域が分かるため、一般に広告ではこれを利用しています。
おすすめが表示される際のイメージ
同一ネットワーク内で
(上)ゲームのコンテンツを見ているユーザーが多い
(下)レコメンドシステムが「ゲームに関心があるユーザーかぜ多い」と判断
その結果、
まったく興味がないユーザーにもゲームが提案されることがある。

(実際にはもう少し規模が大きな話となるが省略)
[理由]協調フィルタリングの作用
協調フィルタリングとは、推薦アルゴリズムの一種で以下のような状況を指します。
誰かがある記事を検索・閲覧した場合、同じ環境にいるユーザーに関連ニュースや広告を表示する。
典型例は以下のようなサイトの提案も同類のものです。
Amazonの「この商品を買った人は…」
Netflixの「あなたへのおすすめ」
Spotifyの「Discover Weekly」など
自分がまったく興味を示さない分野のものでも、属性が近い種類のものを勧められることは体験したことがあると思います。
(例)マンガに興味があるユーザーに、フィギュアが おすすめされる など
協調フィルタリングは、
多くのユーザの嗜好情報を蓄積し、あるユーザーと嗜好の類似した他のユーザーの情報を用いて自動的に推測して広告が提供される仕組みです。
[理由]重大ニュースに関わるものは優先的に表示されやすい
話題が重大ニュースレベルの価値の高い出来事である場合(災害の発生、芸能人の結婚、ギャンブルの特賞など)は、広いユーザーに配信されます。
重大ニュースの例
スポーツニュース
トレンドニュース
地域ニュース
など
[理由]記憶バイアスによるもの
これはITとは無関係の別の要因となりますが、
人は過去の出来事を思い出す際に、感情や先入観によって記憶が歪められたり、特定の情報ばかりが思い出される傾向にあります。
今回の件に当てはめると、
良かったことよりも、都合が悪いことや恐怖を感じた体験を記憶しやすい
という傾向があります。
そのため、
普段は無数の広告やおすすめを目にしていますが、その多くは気に留めずに日常の風景として流してしまいます。
ところが会話の内容と一致した表示が出ると強く印象に残るため、盗聴を疑う感覚が生まれやすくなります。
次に状況を詳しく見ていきましょう。
舞台をわかりやすくしてみる
今回の件は、比較的大きな空間、自宅外で体験したことなので、いろいろな状況がノイズとなってしまうため、範囲を狭めて必要な部分だけに絞って考えてみたいと思います。
1.自宅(家庭内)で考えてみる
家族の誰かが何かを検索した場合、別の家族の誰かの画面に同じ嗜好の広告や、おおすすめが出てきたという話はよく聞きませんか。
(例)母が料理の検索をしたら、
息子のおすすめに料理が表示されるようになった 等
家庭では主にキャリアの回線を使わずWi-Fiルータを使用して通信を行います。
家庭内の複数の端末は、みんな同じネットワークに所属していて、ルータを通って外のインターネットに接続します。そのため家族数や利用端末に関わらず、発信元のグローバルIPアドレスは同じになります。つまり同じネットワークから通信されていると判断されます。このことから同じ広告の配信がなされる可能性が高いとお分かりいただけるものと思います。
またショッピングモールや公共施設などのフリーWi-Fiも同様です。
近くの知らないお客さんの趣味が、自分の端末でおすすめされたりします。
※発信元は同じであっても、各端末にはそれぞれ別の端末IDを持っており、また検索履歴などが異なりますが、それらも強く考慮されるため、結果としては各ユーザーの趣味に合った広告が優先的に配信が行われます。
2.学校で考えてみる
学校‥特に大学では顕著です。
近い年代が多人数いることと、興味関心が特定の分野に集中していることで、検証材料が整っていて、いちばん結果が分かりやすいかもしれません
学校では、以下のような理由で、属性が近いユーザーが集まっています。
同年代が集まっている
同じ趣味(ゲーム・動画など)になる傾向が強い
同じSNSプラットフォームを利用している
同じ話題の共有(学校生活のことやトレンドの話題)
学校はこのような傾向を持つユーザーが多数いるため、同じ広告や、似たようなおすすめが紹介される、という現象が起こるのは ご理解いただけるものと思います。
会話していた内容の広告が出てきた!の正体
ブラックマヨネーズ吉田氏の例の考察
・楽屋でボートレースの話をしたら、ボートレースをやらない小杉氏のスマホにレースのニュースが表示された。
⇒近くにいた誰かがボートレースについて検索したことで、同じ場所にいるユーザーにも関連ニュースが表示されたのでは。
・海外旅行の話で、その国のあいさつが「アパ」だった。帰国後、アパホテルの広告が表示されるようになった。
⇒旅行中に挨拶の言葉として「アパ」を検索、その際に「旅行 宿泊」の属性がついて、帰国後、全国展開しているアパホテルが提案されたのでは。
かまいたち山内氏の例の考察
・打ち合わせで「刈り上げの浅野温子氏」の話をした。その直後にInstagramのおすすめに、その「刈り上げの浅野温子」の画像が表示された。しかも過去にまったく検索したことがない。
⇒周囲のスタッフさんが検索したことで、同じ場所にいるユーザーにもおすすめ表示されたのでは。
以上が、ITの仕組みから考察した結果となります。
おすすめの基本は、各社の独自アルゴリズムによる「推測」によるものです。
信じるか信じないかは ‥(略)。
(ご参考)Meta社の個人情報の扱いについて
直接の盗聴ではないにしても、Meta社は個人情報の扱いについて度々指摘を受けています。ご参考までに。
(2025年末以降)Meta社は、Meta AIと交わしたテキストや音声の対話を、広告に利用し始めている。
(2026年3月上旬の調査)Meta社のAIスマートグラスで撮影された個人的な映像が、委託業者によって検証などの理由で閲覧されていたことが判明しています。
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