ISO運用が“審査依存症”になる理由と脱却のステップ
審査メインの「外部依存」からの脱却
――審査員は「高額な外注リソース」、
不適合は「改善の武器」と考えよう!
前回では、
ISOマネジメントシステム運用の
柔軟な取り組み方について
述べさせていただきました。
今回は、
ISOの定期的なイベントである
サーベランス審査と更新審査
について考えてみましょう。
1.審査員への「おもてなし」をやめるところから始めよう
審査が近づくと、
社内が妙な緊張に包まれる企業は
少なくありません。
内部監査は帳尻合わせの儀式と化し、
不備が見つかれば慌てて記録を整える。
審査当日は、
審査員の機嫌を損ねないように
模範解答を並べ、
過剰な“おもてなし”
で乗り切ろうとする。
しかし、
これは担当者の怠慢ではなく、
「審査に合わせる文化」を
組織が長年かけて作ってしまった
構造的な問題です。
この外部審査を
「合格をもらう儀式」と捉える限り、
ISOはその組織にとって
永遠に“通行手形”のままで終始します。
外部審査機関は、
あなたが費用を払って契約している
重要な外注パートナーであり、
決して神様でも
お客様でもありません。

まずこの捉え方を徹底して
組織の隅々まで
共有しましょう。
2.思考転換①:審査員は「最高のベンチマーク資料」である
審査員は年間を通じて、
同業他社から異業種まで、
数十〜数百の現場を審査し、
観察しています。
自社にこもっていては
絶対に得られない
「市場の常識」、「他社の失敗」
「改善の潮流」を知っている、
極めて貴重な存在なのです。
にもかかわらず、
多くの企業は
審査員の質問を“受ける側”に徹し、
それらの生きた情報を
取りに行こうとしません。
これは大きな損失です。
審査費用を
「投資」に変えるには、
こちらから積極的に問いを
投げる必要があります。
「この工程、他社ではもっとスマートに
やっている例はありますか?」「このリスク対策、最近の傾向から
見て甘くありませんか?」
この二つの質問だけでも、
審査の質と
その後の組織のシステム
は劇的に変わります。
審査員の知見を“絞り出す”姿勢こそが、
外部依存からの脱却の第一歩です。
もちろん、審査員の口は堅いですよ。
そうでしょ?
守秘義務はあるのですから。
だからと言って接待しろ、
と言うのではありません。
また「コンサルはしません」
と審査員は言います。
これ、当然ですが
審査員が守るべき業務上の鉄則
だからです。
でもヒントは出してくれるはずです。
それも真摯に全部門、全従業員が
仕事をしていると思えば、
「こうすると、良いかも」
と話してくれるはずです。

ただ、審査員のヒントを
丸ごと鵜呑みは危険です。
あくまでもヒント、です。
それをどう調理するか、が大事なのです。
でも、時折
とんでもない審査員もいることは
事実です。
そこでひるんではいけません。
堂々と審査員に主張しましょう。
3.思考転換②:不適合は「改善の武器」である
不適合や観察事項を
「恥」と捉える企業は多いものです。
不適合を一つでも出そうものなら、
経営者が怒りまくる。
昔はそのような体面と面子だけを重んじる
企業が多かったのも事実です。
だから不都合なことやモノを隠し、
嘘をつき、システムを硬直させる。
従業員から見れば、この時点で
ISO自体が
無意味、無駄、無益の新3M
になるのです。
だからこそ、
経営品質と品質文化を
本気で高めたいなら、
発想を180度
転換する必要があります。
不適合は、むしろ歓迎すべき“改善の武器”になります。
外部からの「不適合」
というお墨付きは、
社内の古い慣習や、
現場を苦しめている無駄なルールを
変えるための
最強の大義名分になります。
「審査で指摘されたので、
この二重管理は廃止します。」「規格不適合なので、
この検査基準を更新します。」
こうした改革は、
内部だけでは動かせなかった
“重い岩”を動かす力になります。
ただし、
誤解してほしくないのは、
形式的な不適合を
量産することが目的ではない
という点です。
狙いは、現場の痛みや矛盾を可視化し、
改善のエンジンに変えることにあります。
別の見方をすれば、
何一つ不適合や改善の機会点を出せない
審査能力欠如の
審査員では困るのです。
探索技量の低い審査機関に
金と時間と手間を浪費すること、
麻痺してはいませんか?
4.結び:主役はいつでも受審側
時代は変わりました。
審査員に合わせるための
業務システム作りは、
もう終わりにしましょう。
やめましょう。
外部審査は
「合格の儀式」や「認証の更新」の
恒例のセレモニーではなく、
自社の健康診断であり、
経営改善の機会なのです。
審査員が帰った後に
残るべきものは、
一枚の維持認証ではなく、
現場が
「これで仕事がやりやすくなった」
と実感できるようになるための
改善のネタです。
次回の審査では、
まず一つだけでいいので、
こちらから質問を
投げてみてください。
喜ぶはずです、
いつもの審査員の表情が変わります。
そして、出てしまった不適合を
“改善の種”として
皆で歓迎してみてください。
特に「重大な不適合」は大歓迎です。
え~~?
認証はく奪になっちゃうよ~~!
これは大事件、大不祥事です。
でも法律を犯すような事実であれば
そうなる可能性はありますが、
普通は、そこまで行きません。
お分かりでしょうが、
重大な不適合の場合、
その根本原因究明と
その原因除去のための
是正処置が
全組織で取り組むべき
大事な課題になります。
その瞬間から、
ISOは「外部に振り回される制度」から
全社一丸の「組織を強くする道具」
へと姿を変え始めます。
ただし事前に
そのような事態になった場合の
具体的な対応と、
その後に行う変革に対し、
十分な模擬訓練を含めた
内外の環境整備を行わなくてはなりません。
外部審査の意義と捉え方の
パラダイム・シフト(大転換)
の必要性を組織内に十分に伝えましょう。
これまでの悪癖であった
審査直前の記録作りと見直し、
審査のための内部監査、
経営層の審査問答などなど。
このような無意味な行為は
一切しないことを
年度初めの全体会議で宣言し、
毎日がISO活動なんだと
組織内に周知してから
取り掛かりましょう。
古いしきたり、慣習には
それまでの根強い思い込みと反発が
いろいろな認知バイアスのモンスター化を招きます。
代表的な「現状維持バイアス」を中心に、
サンクコスト効果
同調バイアス
権威バイアス
正常性バイアス
などの
名だたるバイアス・モンスター
が絡み合った
“複合バイアス・モンスター”で
襲い掛かり、
仕組みの改善や構造改革を
邪魔するでしょう。

でも、「ものは考えよう」と古人曰く。
あるいは
「思い立ったが吉日」とも言います。
未来の新たな組織経営と
運用の姿を思い描いて
大いなる英断を下し、
偉大な一歩を踏み出しましょう。
皆さんの組織では
外部審査に合わせるような
業務はありませんか?
ご意見、コメントがあれば大歓迎。どしどしください。
またフォローや「スキ」をいただければ励みになります。
よろしくお願いします。
本稿に出てくる
認知バイアスのモンスターは
わたしのブログにある
「認知の世界」で
いろいろ解説されています。
よろしければお立ち寄りください。
どの記事も単発でお読みいただけます。
文中の「バイモス・モンスター」は以下のの書籍でどうぞ!

ISOの立て直しを真剣にお考えなら、このシリーズが最適!

ISO内部監査システムの再構築には

