デザイナー・小嶋 健志郎|新築ビルに「古民家の記憶」を。時間が積み重なる空間のつくり方
六本木・港区といった都心の激戦区で飲食店を開業する際、多くのオーナーが直面するジレンマがあります。
「SNSで映える、派手な内装にしなければ埋もれてしまうのではないか?」
「最新のトレンドを詰め込まなければ、選ばれないのではないか?」
しかし、一過性の流行は、一過性の集客しか生みません。
10年、20年と愛され続け、時間が経つほどに価値が増していく店。
そんな「強い空間」を作るには、全く別の視点が必要です。
今回は、六本木にオープンした飲食店「坐離宮 六本木店」のプロジェクトを例に、ODGのデザイナー・小嶋 健志郎がどのようにして「新築のハコに、歴史という魂を宿したのか」。
その設計思想を徹底的に深掘りします。
◇ 「古民家」vs「新築RCビル」という、矛盾するテーマへの挑戦
「坐離宮」の本店は福岡にあり、古民家を改装したノスタルジックな空間でファンを魅了し続けている名店です。
2号店となる六本木店に求められたのは、その「本店が持つ独特の空気感」の継承でした。
しかし、現場は真逆の条件。
「新築RC造ビルの無機質な一室」です。 歴史という時間の積み重ねがある古民家の空気を、全く新しい建材だけでつくりあげる。
小嶋はこの矛盾したテーマを「古さを、新しさでつくる」という極めて高度なミッションとして捉えました。
◇ 表層的なアンティークを拒絶する。木躯体の「構造」から再構築する
アンティーク調の内装を検討する際、多くの施工会社は「古材風のシートを貼る」「照明を暗くする」といった表層的なアプローチを提案します。
しかし、それでは「どこか嘘っぽい、テーマパークのような空間」になってしまいます。
小嶋が重視したのは、見た目を真似ることではなく、古民家が持つ「構造の力強さ」そのものを再現することでした。
古民家の木躯体の組み方を参考に、梁や柱の配置をミリ単位で設計。
新しい木材を使いながらも、その組み方に「歴史のロジック」を持たせることで、空間全体に本物だけが持つ「重心の低さ」と「安定感」を与えました。
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◇ 5年後、10年後の「劣化」を「熟成」に変える素材の選定基準
飲食店経営において、内装費用は「経費」ではなく「投資」です。だからこそ、完成した瞬間がピークの内装は、投資対効果が低いと言わざるを得ません。
小嶋の素材選びの基準は一貫しています。「5年後、10年後にどう見えるか」。
左官仕上げ: 汚れを嫌うのではなく、使い込まれて生まれる表情(ムラ)を味にする。
真鍮や鉄の金物: 手が触れるたびに酸化し、独特の鈍い輝きを放つ。
無垢の木材: 湿気や乾燥で呼吸し、色が深く沈んでいく。
これらを年代物のアンティーク調度品と混ぜ合わせることで、オープン初日から「ずっとそこにあったかのような」落ち着きを演出し、さらに10年後にはさらに価値が高まる設計を施しています。
▼ 都会の真ん中に生まれた「時間の静止」を体感する 六本木にいることを忘れさせる、坐離宮の空気感。写真では伝えきれないディテールの積み重ねは、Instagramで詳しく解説しています。 ODG公式Instagram:最新の施工ポートフォリオへ
◇ 照明の設計は「明るさ」ではなく、心地よい「暗がり」をデザインすること
坐離宮の空間において、照明は「照らすため」のものではありません。「影をデザインするため」のものです。
六本木という街は、夜でも明るく、常に刺激に溢れています。だからこそ、店内に一歩足を踏み入れた瞬間に、視線を自然に落ち着かせる「暗がりのグラデーション」が必要でした。
あえて光を絞り、影の余白をつくることで、お客様の意識は「空間全体」から「目の前の料理」や「同伴者との会話」へと集中していきます。
この心理的な切り替えこそが、接待や大切な記念日に「またここを選びたい」と思わせるリピートの種となります。
◇ 建具はすべて造作。なぜ既製品では「坐離宮」になれなかったのか
坐離宮 六本木店では、建具に既製品を一切使わず、すべてオリジナルで製作しています。 これはコストや工期だけを見れば、決して効率的な選択ではありません。しかし、空間全体の「密度」を揃えるためには不可欠でした。
既製品のドアや枠は、どうしても「現代の規格」で作られているため、歴史を再現しようとする空間の中では「浮いて」しまいます。1mmの隙間、1cmの厚みの違和感が、せっかく作り上げたアンティークの質感を壊してしまう。小嶋はその微差を許さず、すべてのディテールをコントロールしました。
◇ まとめ:内装を「消耗品」ではなく「経営資産」にするということ
内装を「単なる箱づくり」として、安さや流行だけで判断してしまうと、それはいつか価値を失う「消耗品」になります。 しかし、小嶋 健志郎が体現したように、「その場所独自の歴史をどう紡ぐか」という問いから逆算して作られた空間は、時間とともに深みを増す「経営資産」となります。
誰に、どんな時間を、どれだけの期間過ごしてもらいたいのか。 その本質的な問いをデザイナーにぶつけてください。ODGは、あなたの理想を、5年後も10年後も輝き続ける形へと昇華させます。
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