褒められると、つい調子に乗ってしまう。そんな自分との付き合い方
登場人物
狭間(はざま)
プロジェクトマネージャー。事なかれ主義で、よく板挟みになるが、本人はその理由に気づいていない。
珠洲さん(すずさん)
中途入社。前職はIT系ではない。明るく前向きで向上心は強いが、時折空気を読まずに正論を言ってしまう。
二倉(ふたくら)
経験豊富なプロジェクトマネージャー。冷静で論理的。丁寧な物言いだが、仕事以外の雑談は少なめ。
ある日の夕方、作業がひと段落した頃。
誰かが何気なく言った一言から、ちょっとした話になった。
狭間「さっきさ、部長に“今回の進め方よかった”って言われたんだけどさ」
珠洲さん「いいじゃないですか。褒められるのって嬉しいですよね」
狭間「いや、嬉しいんだけどさ。俺いつも思うんだよ。“謙虚でいよう”って。
でもさ、同時にちょっと調子乗っちゃうんだよな」
珠洲さん「それ、すごく普通じゃないですか?」
狭間「そうなのかな。なんかさ、心の中ではガッツポーズしてるのに、表では“いえいえ…”とか言ってる自分がいて」
二倉「それは、別に矛盾ではないと思います」
狭間「え、そう?」
二倉「はい。人は褒められれば嬉しいものです。問題になるのは“嬉しいこと”ではなく、その後の振る舞いです」
珠洲さん「たしかに。嬉しい気持ちまで我慢する必要はないですよね」
狭間「でもさ、調子に乗ってるって思われたくないんだよな」
二倉「それは多くの人が感じることですね。ですから、感情と行動を分けて考えると良いと思います」
狭間「感情と行動?」
二倉「はい。心の中で喜ぶのは自由です。しかし外に出す言葉や態度は、自分で選べます」
珠洲さん「なるほど。心の中では“やった!”って思っても、外では落ち着いてればいいってことですね」
二倉「その通りです」
狭間「でもさ、それでも調子乗るときあるんだよ。ちょっと気が大きくなるというか」
珠洲さん「それって悪いことですか?」
狭間「え?」
珠洲さん「褒められて自信が出るって、むしろ自然だと思います。
それで次の仕事も頑張ろうって思えるなら、いい流れですよね」
二倉「僕も同意です。
褒められたときの高揚感は、行動のエネルギーになります」
狭間「エネルギーか」
二倉「はい。ただし、扱い方を間違えると“慢心”になります」
珠洲さん「燃料みたいなものですね」
狭間「燃料って、ちょっと怖いな」
二倉「ですが、うまく使えば前に進む力になります」
少しだけ沈黙が流れる。
狭間「なんかさ、俺いつも“調子乗らないように”って抑えようとしてたんだよな」
珠洲さん「でも、それだと嬉しい気持ちまで消えちゃいますよね」
狭間「たしかに」
二倉「むしろ、褒められたときこそ考えると良いと思います」
狭間「何を?」
二倉「“なぜ評価されたのか”です」
珠洲さん「再現性ですね」
狭間「おお、急に仕事っぽくなった」
二倉「理由が分かれば、次も同じことができます。
それが自信になります」
狭間「なるほどなあ」
珠洲さん「調子に乗るっていうより、“次の燃料をもらった”って感じですね」
狭間「燃料って言い方、やっぱりちょっと面白いな」
二倉「褒められたことを“運が良かった”で終わらせるより、“次に活かす”と考えた方が健全です」
狭間「なんかさ…」
珠洲さん「どうしました?」
狭間「今まで“調子に乗る自分”を抑えようとしてたけど、
別にそこまで否定しなくてもいいのかもな」
二倉「ええ。否定する必要はありません」
珠洲さん「嬉しいものは嬉しいでいいと思います」
狭間「ただ、その後ちゃんと仕事すればいいだけか」
二倉「そういうことです」
少し肩の力が抜けた空気になった。
褒められると、つい気持ちが上がる。
それはきっと、誰にでもあることだ。
大事なのは、その気持ちを消すことではなく、
どう使うか。
調子に乗る自分を無理に抑えるより、
そのエネルギーを次の一歩に変えていく。
そんな向き合い方の方が、
少しだけ前に進めるのかもしれない。
