旅 戸隠神社編
2日目、頭がぼーっとしているが、早く行動しようと8時にチェックアウトした。
この日は戸隠神社の奥社に行きたかった。
勿論昨年行った場所。戸隠森林植物園は鳥のさえずりと、柔らかな緑の木々、初めて見るミズバショウの美しさに魅せられ、とても印象的だった。ここにも旦那を連れて来たかった。
しかし、旦那はずっと熊の心配をしていた。
私はホテルのフロントで確認したが、熊情報はないとのこと。少しでも行きたかった。
最初、私が行きたかった鏡池に寄った。
標高が高いから半袖では寒い位だった。
緑のグラデーションが鮮やかな山々を映す、透き通るような鏡池。
ため息しか出ず、ふたり無言で佇むだけだった。
会話をしたら静寂が破れてしまう。
お互いそう思ったのか、ただじっと景色にみとれていた。
「あの池の真ん中はスケキヨか?」
池の真ん中にぬっと立ち枯れの木が突き出ていた。
どっちが言ったか忘れたが、またアホなことをいいはじめた。こうなったら芸術鑑賞タイムも終了だ。
「あれは色々な写真やYouTubeでもでてくるシンボルだなぁ」
旦那が言った。じゃあスケキヨと言ったのは私かもしれない。
池のほとりを歩くが、寒さに耐えられず、奥社に行こうとなった。
奥社の入り口で意見が割れた。
参道をまっすぐ進みたい旦那と、植物園に行きたい私。
結局旦那が折れた。「熊がでたらどうするんだ!」と言いながら、グイグイ進んだ。
「これ、ミズバショウの葉だよ」
「湿地って来た事ないからいいよね」
旦那はあまり返事をしない。不満そうだ。
多分、熊を心配してるんだろう。
途中、熊情報の看板を見つける、つい最近のものだった。不機嫌だし、万が一を思った。
「参道に戻ろうか?熊でたら怖いし」
「当たり前だ!せっかく来たんだから、参道からちゃんと行くぞ」
なんだか善光寺といい、信仰心厚いなぁ。
改めて参道を歩く。まっすぐ一本道は緑が茂り、木陰で涼しく、清々しい。
「熊にびびってたね」
「当たり前だわ。なんかあったら俺が戦わなきゃいけないだろ。オマエになんかあったら、俺がいてなんで助けられなかったんだと言われるだけだろ!」
あらやだ!体を張って守ってくれる気だったのね。
本当にそうなったら想像し難い怖さだが、ちょっと嬉しい。
参道の脇の植物や杉の並木にしばしみとれ、足を止める。幹がらせん状にねじれた杉を見上げる。
隋神門まで来た。ここも旦那憧れの場所だった。写真を撮り、ため息をついていた。
だんだん登りになる。階段も幅がそろってなく、息が上がり始める。
地元のTV局の取材か?記者が
「なかなか急で大変ですが、みなさん、涼しい顔して登っておられます」
私らのすぐ前で撮影が始まった。
みなさんって…私らしかいないよ。もしかして映ってます?
さもこのくらい屁でもないですって作り顔して登る。ちょっと年齢より若く撮ってね!と思った。
奥社の手前からは階段も急でかなりきつかった。
なのに、高齢の足の悪そうな人らが両手に杖を持ち、足をゆっくりひきずりながら向かっていく。帰ってくる人もいる。大変だ。
そんなに大変なのに、なぜそこを目指すのか?聞いてみたかった。
そして、私も70代になっても、ここに来たいと思った。
神聖な奥社への道は、人生にたとえながら歩いてみたい。
若い時には、神社仏閣の良さがさっぱりわからなかったが、今はすごく行きたくなる。
年を重ねるっていいことだ、と思えた。
心落ち着く、深く静かに考えられる場所をあとにし、私たちは空腹を満たそうと、フォレストヴィレッジに向かった。
ここでまさか…あんな出来事が起こるとは…。
