謝ってくれた。でも、信じられなくなった日。#9
私が欲しかったのは、「正しさ」じゃなかった。
妊娠してから、夫と話し合いをした。
きっかけは、本当に些細なことだった。
つわりで一日中体調が悪く、家事もままならなかった日。
夫は洗い物をしてくれた。
それ自体は、とてもありがたく、お礼を言った。
でも、寝る前に寝室へ来た夫が最初に渡してきたのは、
「体調は大丈夫?」
の言葉でも、
「重いから用意して欲しいと言われた物、頼んでおいたよ」
の言葉でもなかった。
少し前、開封済みの麦茶を夫が捨てたことがあった。
そのことについて、AIで調べた「開封後の麦茶を常温保存しないほうがいい理由」のスクリーンショットだった。
その瞬間、私は何とも言えない寂しさを感じた。
私が求めていたのは、正しさの証明じゃなかった。
「今日は大丈夫?」
その一言が、どうしても欲しかった。
私は、正しさの証明よりも、ただ寄り添ってほしかったのだ。
実家で考えたこと
翌日、私は実家へ帰った。
気持ちが整理できず、私はLINEを送った。
「これからのことについて、後日話し合う時間をください。」
責めたかったわけじゃない。
これから親になる二人だからこそ、今のうちに向き合いたかった。
話し合いは、私から始まった
週末、自宅へ戻ると、夫は何事もなかったように資格の勉強を始めた。
私は少し休んでいた。
でも、待っても待っても、話を切り出してくれない。
結局、私から声をかけた。
「先日伝えたこと、忘れちゃった?」
責めたいわけじゃなかった。
私は、私の不安を知ってほしかった。
妊娠している今、夫にも「当事者」でいてほしかった。
小さな思いやりが、どれだけ心を支えてくれるかを伝えたかった。
感謝していることも伝えた。
そのうえで、「お願い」として話した。
家族になりたいから。
「伝わった」と思えた日
翌日、また小さな出来事があった。
夫は使いかけの肉や魚を、そのまま冷凍庫へ入れることがある。
その時も冷凍肉がそのまま入れられていて、
そのにおいが保冷剤に移り、頭痛で冷やそうとした私は吐き気がするほどつらかった。
そのことを伝えたら、夫は返信をくれた。
「辛い思いをさせてごめんね。」
「ジップロックは明日対応します。」
私は、その言葉が嬉しかった。
伝わったんだ。
そう思えたから。
謝ってくれたことより、「理解しようとしてくれた」と感じられたことが嬉しかった。
少しだけ、安心した。
信じた翌日に、崩れた
でも、その安心は一日しか続かなかった。
朝、自宅に帰ると、私は母子手帳を受け取ってきたことを夫に話した。
朝から家にいた夫は、どこか上の空で私の話を聞いているように感じた。
そして、私の顔を見ても、
「体調はどう?」
という一言はなかった。
その後、夫は大きな音を立てながらパソコンに向かい始めた。
私は妊娠してから、「ほとんど眠れていない」と何度も話していた。
その日もほとんど眠れていなかった。
それでも、響くパソコンの音がストレスになり、心臓が痛むような感覚がして、眠気も遠のいていった。
夫が家を出たあと、私は冷凍庫を確認した。
すると、使いかけのお肉はそのままだった。
私が「食べられる」と伝えていた、数少ない食材もなかった。
お米を量るための計量カップも見当たらない。
食べられるものは、ほとんど何もなかった。
その日、私は初めて思った。
言葉だけでは、もう信じられない。
謝ってくれたことは嬉しかった。
でも、本当に私が欲しかったのは、「ごめんね」ではなく、その次の行動だった。
私は完璧な夫を求めているわけじゃない。
失敗しない人でいてほしいわけでもない。
ただ、私と赤ちゃんのことを、自分のこととして考えてほしい。
それだけだった。
妊娠すると、お腹の中で命が育つ。
でも同時に、夫婦の関係も試される。
愛情は、言葉だけでは育たない。
小さな気遣い。
小さな行動。
その積み重ねが、「一緒に歩いていける」という安心につながるのだと、私はこの日、痛いほど知った。
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