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【忘却度20%】15年後のラブソング

2020年3月8日、サンプルDVD
 
 これも映画誌の連載で原稿書いたんですけど、コロナ休刊で載りませんでした。でも「ペン・アンド・グローリー」は完全ボツでしたけど(入稿前でした)、これは入稿後に休刊になったので、後にネットで掲載してもらいました。
 
 「アバウト・ア・ボーイ」「ハイ・フィディリティ」「17歳の肖像」と原作か脚本作はほぼ好きなニック・ホーンビィの原作。
 以下、自分の原稿から引用。

*****
 
 響く人には響きまくって、でもピンとこない人にはそれほどでもない。そんな映画がたまにあると思うのです。
 
 たとえば、おヒューことヒュー・グラント主演というだけで私は無条件推しですが、「アバウト・ア・ボーイ」。
 40歳近くで親の遺産で適当に暮らし、女を口説きまくりの主人公ウィル(いつものおヒュー……)。シングルマザーなら別れても恨まれないという不埒な目的で、自分もシングルファザーのフリをしてナンパ三昧。しかし、ある少年になつかれてしまい、という話。
 
 たとえば、ジョン・キューザックの「ハイ・フィディリティ」。
 40歳近くの音楽オタクの中古レコード店店主が、自分のうまくいかなかった過去の恋愛を、店員ジャック・ブラックとのマニアックな音楽談義を挟みつつ、振り返るという話。
 
 たとえば、キャリー・マリガンの「17歳の肖像」。
 優等生の少女が、大人の男によって様々な手ほどきをうけて成長していくシンデレラストーリー、のように見えて、その「大人の男」が実はたいしたことない(というかろくでなし)という、大人になると皆わかる一面もしっかり描いた話。
 
 以上、私がこよなく愛する3本ですが、ピンとこない方もきっと多いんじゃないかと思います。そしてこの3本には実は共通点があって、すべてニック・ホーンビィという人の、原作もしくは脚本作なのでした。
 
 今回紹介する「15年後のラブソング」が、まさにそのニック・ホーンビィ原作で、これまた熱狂する人とそうでない人にわかれそうな、もちろん私は大好きな作品なのでした。
 
 自分の人生はこれでよかったのかと惑いつつある、30代半ばのアニー。15年つきあってしまった恋人は、表舞台から姿を消した伝説のロックシンガー、タッカー・クロウの超オタクで、アニーよりも主宰してるクロウのファンサイトでの交流に夢中。ある日、喧嘩ついでにそのサイトにアニーがクロウの悪口を投稿すると、なんとクロウ本人から「君が正しい」と返事がきて……。
 
 女にだらしない男、音楽オタク、幼い男の子との交流、現実への不安と不満、過去の後悔、大人になる自覚、ちょっとした成長と見つけるささやかな幸せ−—と、これまでのニック・ホーンビィ作品らしさをちりばめつつ、本作はそんなアニーの平凡な日常が、クロウと知り合うことで変化していく様を描いていきます。
 
 この元ロックミュージシャンでありながら、あちこちに子供がいて、仕事もせず元嫁のガレージを間借りして息子と暮らしてるダメ中年のタッカー・クロウ。そんな男を誰が演じるかといえば、もうビジュアルを見ただけで納得のイーサン・ホークなのでした。
 
 もうこのイーサン・ホークが良くて良くて。アニー(ローズ・バーン)もめちゃくちゃ可愛らしいのですが、ずっとタッカー・クロウのダメっぷりを見てたくなります。
 
 しかも若くてかっこいいときのタッカー・クロウのポスターは、もちろん若くてかっこいいときのイーサン・ホークでばっちり流用できる強み。
 
 「6才のボクが大人になるまで」などリチャード・リンクレイター作品の常連で、近年ポール・シュレイダー作品や是枝作品にも出演、そして自身も小説を執筆し監督もするのに、いまだにまあまあな頻度で、B級アクションとかB級ホラーとかB級SFに出演してくれるイーサン・ホーク。信頼できます。
 
 30年間、コンスタントにキャリアを重ねてきているそんなイーサン・ホークが、これからの50代がいちばんいいんじゃないかと予感させてくれるのが、この「15年後のラブソング」なのでした。
 
 できればいろんな人が見てくれればと思いつつ、アニーの恋人がタッカー・クロウに言い放つ、「作品は作者のためのものじゃない。あなたにはクソでも、僕には大事だった」という言葉が染みる、音楽(に限らずあらゆる文化)に救われてきた人は見逃さないよう、とりわけお勧めしておきます。

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